ニュースで「生成AI(人工知能)」という単語を聞かない日はなくなった。生成AIの開発競争や、AIが雇用や生活に与える影響などが活発に論じられている。ただ、大半はブームに火を付けた「ChatGPT」を生み出した米国の視点で、「アジアとAI」というアングルの議論は少ない。だが、世界の人口の過半を占めるアジアにとって、省人化、無人化の目的を内在する生成AIがもたらす影響は甚大だ。
AIのビジネスへの適用では、定型的な文書やリポートの作成、プレゼン資料づくりなどへの利用が語られている。ほかの分野ではイメージ図や動画、音楽などの生成にも効果を発揮することが分かってきている。
だが、アジアにとっての生成AIは、まずは工場での利用が進むだろう。生産ラインにおける温度、圧力、湿度などの条件管理、製品の外観検査などすでにセンサーを使って自動化、遠隔管理されている分野もAIによって、より微細な感知、トラブル予測など予防の面で進化が期待できる。作業者の教育、訓練についても熟練作業者のモーション分析をAIで行い、AIが作業指示をすることで、習熟をより早くすることが可能になるだろう。「熟練の技」「匠」は生成AIが伝承することになるのかもしれない。そうなれば、従来、ライン作業者を監督、指導していた班長(スーパーバイザー)はAIに取って代わられる可能性がある。
最新号を紙面で読める!