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第128回通常会員総会 三村会頭あいさつ

全国から会頭・副会頭ら約1400人が出席

本日は、日本商工会議所第128回通常会員総会を、世耕経済産業大臣、西村内閣官房副長官をはじめ各政党のご来賓の皆さま、また、全国各地の商工会議所から、多数の皆さまにご出席いただき、盛大に開催することができ、誠にありがとうございます。

まずは、このたびの北海道における地震をはじめ、全国各地において、地震、台風、豪雨などの災害が頻発しております。お亡くなりになられた方のご冥福をお祈りするとともに、被災された地域の住民、事業者の皆さまに心からお見舞い申し上げます。一日も早く、生活の再建と事業の再開が進みますことを祈念しております。 世界経済は、反グローバリズムなどの政治不安はあるものの、拡大傾向を続けており、IMFによれば、2018年、2019年ともに成長率は3・9%と堅調に推移する見通しであります。

わが国についても、4~6月期GDPの2次速報値では、年率換算で実質3・0%となるなど、景気は総じて緩やかに回復しています。個人消費の動きには依然、力強さを欠くほか、原油価格の上昇や原材料価格の高止まりはあるものの、世界経済の改善を受けて、デフレではない状況に達しているといえます。

このように、国内外ともに経済は比較的順調ですが、先行きについては、決して油断できない状況にあると考えます。

その要因の一つが、反グローバリズムの動きであります。米中両国の貿易戦争の激化は収拾の見通しが立たず、また、米国の金利上昇による新興国からの資金流出、英国のEU離脱交渉の行方などから、世界経済の先行きは、楽観できない状況です。

わが国は、グローバリズムの恩恵を最大限に活用する以外に、国を発展させる道はありません。

貴重な世界の共通資産である自由貿易体制を維持・発展させるため、同じ考えを持つ国と協調しながら、粘り強く指導的な役割を果たしていくべきであります。その観点から、TPP11や日EU・EPAの交渉妥結に日本が主導的な役割を果たし、署名に至ったことは、高く評価されるべきであり、引き続きRCEPの成立にも注力いただきたいと思います。

深刻化する人手不足

国内に目を転じると、足元の良さと、先行きに対する不安が同居している状況です。不安の主なものを2点だけ、指摘したいと思います。

第一は、人手不足の深刻化です。7月に日本商工会議所で開催した夏季政策懇談会における議論では、人手不足の深刻度は確実に増していると感じています。また、日本商工会議所の調査でも、「人手不足」を訴える中小企業はここ数年、年を追うごとに着実に増加し、足元では65%に達しています。

特に人手不足は、大企業に先行して中小企業において深刻な問題として顕在化しています。労働需給ひっ迫の結果として、毎年賃金が上昇する中で、中小企業の労働分配率は75%程度に達している上、賃上げした企業のうち、生産性が上がらなくても賃上げせざるを得ないという「防衛的賃上げ」は6割に及んでいます。人手不足という、日本経済全体の制約要因を克服するために、社会全体での生産性向上に力点を置いたサプライサイド政策を加速していくことが必要であります。

第二は、人口動態の指し示す、縮小する日本に対する不安、および日本の財政や社会保障制度の持続性に対する不安です。すなわち、人生100年時代に突入する中で、若者も高齢者も「自分の将来は大丈夫なのか、誰が支えてくれるのか」という不安です。

将来不安の解消には、政策の軸足を「足元の安心」から「将来の安心」確保へ移し、たとえ痛みが伴う改革であっても、取り組んでいかなければなりません。医療や介護、年金などの社会保障制度改革は不可避であり、来年10月の消費税率引き上げも確実に行うことが必要です。こうした取り組みが、将来不安を解消することにより、家計においては貯蓄性向を下げ、消費を増やし、企業にとっては将来に希望を持ち、積極的に投資する環境をつくり上げることにつながると確信しています。

それでは、こうした中で、これから私たちは、何に取り組んでいかなければならないのでしょうか。

先ほど人手不足のところでも申し上げましたが、わが国が直面している構造的な課題が最も早く、かつ深刻な形で現れるのが、中小企業であります。従って、中小企業が直面する課題を解決することが、日本全体の課題を一歩早く解決することにつながりますし、私は、さまざまな関係者が連携して取り組めば、それは必ずできると考えています。

そのためには、まず、中小企業自身が自助解決能力を発揮して、努力することが必要です。一般的には、中小企業は大企業と比べて経営資源が脆弱(ぜいじゃく)であるといわれますが、中小企業の中には、自らの力で大企業を上回る生産性を達成している企業も多数あり、また、多くの中小企業は、変化に対する柔軟でスピーディーな対処能力を備えています。経営者自身が、課題に対して、工夫次第で何とか対処可能だと自信を持ち、前向きに考えて取り組んでいくことが不可欠であると考えます。

次に、政府など公的機関の役割も重要です。人口減少の中で、国を発展させる最重要の対策は、生産性の向上です。女性や高齢者の労働市場への参画により、就業者は増加し、近年、日本の潜在成長率を1・1%まで高めた要因になりました。働き方改革関連法も成立し、これから一層、障がい者も含め、多様な人材の活用に取り組んでいかなければなりません。加えて、一定の専門性や技能を有する外国人材の受け入れ拡大に向けた検討も進んでおり、今後の展開に期待しています。

他方、これら多様な人材の活用には限りがあり、近い将来、各企業は人手不足と賃金上昇の中で、生産性向上に生き残りをかけて取り組まなければなりません。その柱の一つはITの活用であります。 情報通信技術の急速な進展により、安価で便利なクラウドサービスが利用しやすくなっており、中小企業にとって大きな活用メリットが期待されます。中小企業のIT活用を、IT人材面から支援することが極めて重要であります。政府は、第4次産業革命や未来投資戦略などの旗印の下で、中小企業のIT化支援を加速する姿勢を力強く示しています。政府の施策を充分に活用し、ITの活用と合わせた業務プロセスの見直しなど、生産性向上の取り組みを、自社の経営の中に取り込んでいくことが不可欠であります。

また、経営者の高齢化が進む中で、事業承継も重要な課題です。抜本拡充された事業承継税制の活用などを通じ、円滑な承継に取り組んでいかなければなりません。

大企業との共存関係を

このように、生産性向上に関しては、中小企業自らの積極的な取り組みに加えて、政府などの公的機関からの支援も不可欠でありますが、同時に、私は、大企業の役割にも注目しています。

アベノミクスによって、日本企業の収益力は向上しましたが、実は大企業と中小企業では大きな収益力格差があり、その格差は拡大する傾向にあります。具体的には、アベノミクス前には、売上高経常利益率(ROS)で大企業4・7%対中小企業3・1%と1・6%の格差だったものが、足元では8・6%対4・2%と4%以上に拡大しています。

この理由は、先ほどの人手不足の影響に加え、為替レートの変動や、海外展開のレベルも一つの要因になっています。大企業の多くは、リーマン・ショック後の超円高の環境下で海外展開を加速させた結果、その後のグローバル経済の成長の果実を得るとともに、円安に転じた為替レートによって円換算での受取配当金が増加するなど、アベノミクスのプラス面を充分享受することができました。中小企業も、海外の活力を積極的に取り入れる活動を強化すべきであります。

他方、多くの中小企業は、超円高の環境下でユーザーからのコストダウン要請に協力しましたが、その後の円安による原材料のコストアップや電力料金アップを、適正に取引価格に反映できていません。日本商工会議所の調査によれば、BtoCでは75・8%、BtoBでも76・2%の中小企業が仕入れコストを販売価格に転嫁できておらず、結果として、大企業と中小企業の収益力格差をもたらしています。

大企業と中小企業は、サプライチェーンの一員として、共同してコストダウンと品質向上を図る関係であるべきであり、コストアップについてはともに負担し、取引価格に適正に反映されるべきであります。 さらに、中小企業のIT化のネックは、IT人材の不足であり、この点についても、大企業の積極的な支援を期待しています。

中小企業のIT活用が進まなければ、大企業にとっても自らのサプライチェーン全体を高度化することはできず、また、下請け企業の深刻な人手不足は、大企業自身の事業遂行を困難にさせます。

このように、人手不足、供給能力不足の時代となったわが国では、大企業と中小企業が課題をともに解決していく、共存関係へと変わっていくことが必要であり、そうした動きが広がっていくことを強く期待しています。

新たな経営課題に対応

最後に、商工会議所自身が果たすべき役割について申し述べます。

これまで、全国の商工会議所では、金融支援をはじめ、創業や販路開拓、事業承継など、中小・小規模事業者の経営支援に尽力されてきました。近年では、消費税軽減税率や働き方改革、ITの活用など、新たな経営課題にも適切に対応していかなければなりません。

そのためには、限られた経営資源で最大の成果を発揮できるよう、商工会議所自身の機能強化が不可欠です。各地商工会議所におかれては、経営支援において、地方自治体との協働を強力に推し進めるとともに、経営支援を担う人材の育成に注力していくことが重要です。日本商工会議所では、オンラインを活用した研修機会の提供などにより、各地商工会議所における人材育成を後押ししてまいります。

また、人口減少や大都市部への人口流出の中で、今後、地域外の需要獲得に向けた活動を一層強化していかなければなりません。電子決済サービスの導入などによりキャッシュレス化に対応し、インバウンド需要を取り込むとともに、農林水産業との連携や地域資源を活用した新商品開発、観光振興などに引き続き積極的に取り組んでいくことが必要です。

さらには、災害からの復旧・復興支援も、継続して取り組むべき課題です。商工会議所は、これまで、事業の早期再開、経済活動の回復に大きな役割を担ってきましたが、冒頭でも申し上げた通り、近年、各地で災害が頻発しておりますので、今後は、BCP(事業継続計画)の策定にも取り組んでいかなければなりません。

東日本大震災に関しては、「復興五輪」が開催される2020年が、政府が定める復興・創生期間の最終年となります。日本商工会議所では、東北の復興を世界にアピールできるよう、必要なインフラの整備、原発事故の収束に向けた取り組みの加速を引き続き強力に訴えてまいります。

以上、所信の一端を申し述べました。

今から140年前、明治11年に渋沢栄一翁が創設して始まった商工会議所は、各地域の先人が、商工業の振興や地域社会の発展のため、資金や人材を持ち寄り設立した、自主自立の民間団体です。明治以降の近代日本の発展に大きく寄与し、度重なる時代変化にも、その都度対応してきました。反グローバリズム、国内では人口減少など、今、大きな変化の時代を迎えていますが、われわれの、「民間の力こそが国を発展させる、私益と公益は両立するのだ」という活動理念が変わることはありません。

今後、地域の課題が多様化、複雑化、広域化し、商工会議所の役割は一層大きくなってまいります。日本商工会議所は、各地商工会議所の地域に根差した積極的な活動を、これからも全力で後押ししてまいります。皆さま方の引き続きのご支援、ご協力をお願いして、私のあいさつとします。 (9月20日)