地域で世代を超えて受け継がれてきた食文化「100年フード」の中から、日本が誇る食文化を文化庁、有識者がリレー形式で紹介します。
大和、三輪地方を代表する食の一つが三輪そうめんです。三輪山の大神神社の神主大神朝臣狭井久佐の次男穀主が、三輪の里の土壌が小麦の栽培に適していると知って種をまき、その小麦を原料にして三輪そうめんをつくったのが始まりであると伝えられています(『桜井市史』)。
三輪そうめんが広く知られるようになったのは近世以降で、俳諧論書『毛吹草』(1645年)には「三輪索麺」の表記が見えます。また、各地の名産を紹介する『日本山海名物図絵』(1754年)には、「大和三輪索麵 名物なり。細きこと糸のごとく白きこと雪のごとし。ゆでてふとらず、余国より出るそうめんの及ぶ所にあらず。又阿波より出るもの名産なり。三輪そうめんにおとらず。(中略)旅人をとむる旅籠やにも名物なりとてそうめんにてもてなす也」と記されています。三輪と阿波のそうめんが特別おいしかったこと、そして、大神神社に参詣する多くの人で三輪のまちが栄えていて、その人たちが泊まる旅籠屋でもそうめんが出されていたことが分かります。
三輪そうめんは、何とも言えないつるっとした食感とこし、深い味わいが特徴です。冷やしても温めてもおいしく、現代でもとても人気があります。
そうめんは、夏の贈答品にも使われます。また、お盆には先祖の霊にも供えられ、先祖の霊を送る時、キュウリやナスの馬や牛にそうめんを添えることもありました。
そうめんの食べ方にもいろいろ興味深いものがあります。焼き鯖をのせる滋賀県などの例、祭りの時のごちそうに「鯛そうめん」を振る舞う滋賀県日野町の例、また、鯛の煮つけとその煮汁で食べる徳島県出羽島の「島そうめん」など、昔の生活では貴重だった魚と一緒に食される例が各地に伝えられており、いわゆるハレの食事の一つだったことが分かります。
100年フード
文化庁は、①地域の風土や歴史の中で創意工夫し地域に根差したストーリーを持つ②世代を超えて受け継がれてきた③地域の誇りとして100年を超えて継承することを宣言する団体が存在する、食文化を「100年フード」として認定しています。
100年フード公式ウェブサイト ▶ https://foodculture2021.go.jp/jirei/
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