ハッカズークは、企業が自社のアルムナイ・ネットワークを構築するためのサービスを提供している。2017年に創業し、企業とアルムナイをつなぐクラウド型システム「オフィシャル・アルムナイ・ドットコム」と、アルムナイに関する最新情報やノウハウなどを発信する「アルムナビ」を展開。アルムナイという言葉が日本ではまだ一般的ではなかった頃から、アルムナイ・ネットワークの有用性をアピールし続けている。
会社の内外を知る退職者は貴重な存在アルムナイ・ネットワークの有効活用を
ハッカズークは、企業が自社のアルムナイ・ネットワークを構築するためのサービスを提供している。2017年に創業し、企業とアルムナイをつなぐクラウド型システム「オフィシャル・アルムナイ・ドットコム」と、アルムナイに関する最新情報やノウハウなどを発信する「アルムナビ」を展開。アルムナイという言葉が日本ではまだ一般的ではなかった頃から、アルムナイ・ネットワークの有用性をアピールし続けている。
企業とアルムナイたちがつながる形を日本にも
「前職でシンガポールに7年ほどいた際、外資系企業は当たり前のようにアルムナイとつながっていて、ビジネスで連携していたんです。日本の会社員は社外のことをあまり知らないことも多いですが、シンガポールでは多くの人がアルムナイを通じて市場全体を見て、そこから新たなビジネスや協業につながっていて、すごくいいなと思いました。その形を日本でもつくれないかと思ったのが、創業のきっかけです」と、ハッカズーク代表取締役CEOの鈴木仁志さんは言う。
帰国して1年後の2017年に会社を立ち上げたものの、日本ではまだアルムナイという概念すら浸透しておらず、最初の数年はほとんど注目されなかった。 「誰も話を聞いてくれないし、人材業界の知り合いでさえ、話は聞いてくれても、日本では絶対うまくいかないよと言う意見が大半でした。18年5月と6月に初めて大手メディアに取り上げられたのですが、その後のSNSでの反応も、こんなのうまくいくわけがないとか、辞めた会社とつながるなんて気持ち悪いみたいな意見ばかり。まだまだという感じでした」
その流れが大きく変わったのは、コロナ禍となってからだった。働く人の仕事内容や働き方がこれまでと大きく変わり、自分のキャリアや会社との関わりを見直す人が増えたのがきっかけとなった。 「当社は企業へのサービスが中心なのですが、個人の方からのお問い合わせが増えてきました。退職しても会社とはつながり続けたいのだけれど、どうしたらいいかと。当時はまだ仕事が忙しくなかったので、会社にこのようにアプローチしたらどうですかといったアドバイスをしたり、ときには会社に直接連絡して退職者とつないだりしたこともありました」
中長期的にお互いのメリットになるような関係をつくる
それに合わせて、企業との契約件数も増えていった。20年1月と比べると、現在の月次の売り上げは20倍以上にもなっている。企業のアルムナイに対する意識に、どのような変化があったのか。 「アルムナイの人は、社内のことも社外のことも知っているので、再雇用や協業した際のキャッチアップが早いという理解が進んだことが一つ。もう一つは、市場でのESG投資(環境・社会・ガバナンスの三つの非財務情報を考慮する投資)の判断要素の一つに人的資本がある中、退職した人たちもアルムナイとしてつながることで自社の人的資本の一部と考えるようになったというのもあります」
では、実際に大企業はアルムナイ・ネットワークをどのように活用しているのか。 「会社は社員が辞めるまでの間、その人に投資していますし、社員も会社に対して時間的な投資をしています。そのため、退職によって完全に縁を切るのではなく、中長期的にお互いのメリットになるような関係をつくるというのがメインです。そして、その中で再雇用や情報交換、ビジネス連携をしていこうという考えです」
従って、社員の方も退職について肯定的な考え方になり、安心して退職することができる。となると、中途退職する社員が増えてしまうのではないだろうか。 「ところが実際は、意外と辞めなくなるんです。もしも会社側が辞めた社員とは縁を切るという態度だったら、それは社員をただの駒としてしか見ていないことになる。ところが、辞めても関係を続けましょうという会社には、社員は心理的なつながりが高まるんです」
つながり続ける前提であれば人材に投資をする価値はある
大企業に比べると中小企業は一般的に離職率が高く、社員の流動性も高いとされている。そういった中、中小企業はアルムナイ・ネットワークをどのように活用できるのだろうか。 「どうせ辞めてしまうのだからと、人材に投資をしていかなければ、優秀な人は入ってきてくれません。ですが、たとえ辞めてしまってもその人とつながり続けるという前提であれば、人材に投資をする価値はあります。働く人にとっても、会社を辞めたらキャリアがゼロにリセットされてしまうのではなく、辞めても関係を持ち続けることで、また仕事をもらえる可能性がある会社の方が魅力的です。中小企業はアルムナイ・ネットワークの活用を絶対にやるべきだと思います。ただし、辞めた人にまた戻りたいと思ってもらえる会社にならなければダメだということも忘れないでください」
では、実際に再入社したアルムナイたちの、社内での仕事ぶりはどうなのだろうか。 「私たちがヒアリングしたところでは、基本的にポジティブな結果が多いです。まず、社内のことを分かっているので仕事の立ち上がりが早い。また、もう一度自分を受け入れてくれたことに対する会社への感謝の気持ちがあり、次は成果を残すぞという覚悟を持っているので、仕事に対するコミットメントが高いです」
会社を辞めた人を裏切り者としてではなく、会社の中も外も知っている貴重な存在と考えれば、その人たちとの関係を持ち続けない手はない。人手不足が叫ばれる中、将来的な人材確保のためにも、アルムナイ・ネットワークが有効な手段の一つとなるのは間違いない。
会社データ
社 名 : 株式会社ハッカズーク
所在地 : 東京都新宿区西新宿6-21-1 アイタウンプラザ205
代表者 : 鈴木仁志 代表取締役CEO
従業員 : 40人(フィリピン支社含む)
【東京商工会議所】
※月刊石垣2023年11月号に掲載された記事です。
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