天守が国宝指定されている史跡松江城がそびえ立つ松江市は、宍道湖と中海をつなぐ大橋川は市街地の中心部を南北に分けて流れている。松江城下に広がる堀川は、市民の生活に溶け込んでおり、先人が継承してきた伝統ある観光資源、堀川遊覧船から眺められる「水の都」松江のまち並みは、四季折々の姿を見せてくれるなど、多くの人に愛され続けている。創立から45年を数える松江YEGにも、そんな先人たちの意志を継承する姿を垣間見ることができた。
戦前から脈々と続く風物詩
1928年から開催され、夏の風物詩として伝えられる「松江水郷祭」は、湖上で花火を打ち上げるという全国的にも珍しい事業であり、2日間で2万発もの花火を打ち上げる大花火大会である。かつては宍道湖上で灯篭を浮かべ句会を楽しむという趣旨で開催されていたが、歴史を重ねる中で今日の姿として発展してきた。
現在では市内各所でさまざまなイベントが同時に開催され、交流人口の増加と経済効果にも貢献している。しかし、近年はエネルギー問題や物価高騰などの課題がある。先人たちから受け継いだ意志を絶やさないために、どんな取り組みをしているのか。松江YEG会長の藤井浩太郎さんに伺った。
YEGと水郷祭の二人三脚
水郷祭は「松江水郷祭推進会議」という行政や商工会議所、観光協会、企業などで構成される団体で運営している。松江YEGも創立当初より地域を担う青年経済団体として、商工会議所を中心に、各団体と連携を図りながら、水郷祭だけでなく地域全体の盛り上がりのために主体的な活動を続けている。 「われわれの使命はにぎわいの創出です。みんなで祭りを盛り上げようという郷土への思いはメンバー同士の絆を深めることにもつながっており、地域全体の石垣を築き上げる礎にもなっています」と、明るい人柄と軽妙なトークが印象的な藤井さんは力強く語ってくれた。
当日は「松江だんだん祭り」と称した飲食ブースや縁日ブース、さらにはライブイベントなども開催。にぎわい創出に一役買い、人手が足りないほど盛況のため近隣のYEGにも協力を呼び掛け、みんなで祭りを盛り上げた。打ち上げ花火との二人三脚が相乗効果を生み出していることがよく伝わってくる。
地域の持続可能性を追求
松江YEGは水郷祭のほかにも、松江城周辺を幻想的にライトアップする「松江水燈路」という事業を展開している。全ては地域の持続可能性を追求していくことにつながっている。
「水郷祭」に「水燈路」、主体となって事業に関わり続ける中で、持続性を保つために市民参加型へと変革させ、継承しながら自らは「裏方」に徹し、見守り続ける側の主役となる。これこそが事業の究極進化系としての姿そのものであり、今日まで継続してきたことが何よりの証拠となる。 「『松江ブランディング』、このキーワードこそが地域との連携と強固な関係づくりを実現させていくことのできる、松江YEGの在り方なのです」
未来の担い手育成へ 「仕事体験」イベント開催
単独事業として今年3月には、市内の子どもたちを対象としたイベント「わくわくお仕事体験フェス」を開催している。若者の地方離れは松江市も例外ではなく、地元で活躍する企業や産業、そして職人技術などへの理解を深め、体験を通じ、地域の未来の担い手として成長してほしいという思いから、このイベントを企画した。参加した市民からは、事業の継続を求める声が多く寄せられた。「10年後の子どもたちの姿を見据え、地域社会の新たな石垣としての礎が築かれることに期待せずにはいられない」と語った藤井さんの確信めいた笑顔が忘れられない。
最後に藤井さんに今後の思いを伺った。 「YEGの組織は単年度制なので、年度ごとに大きな一つの柱をつくり、一致団結して挑戦していくことが重要です。数年後には中国ブロックの主管YEGとしてブロック大会を担います。これからの松江YEGは地域や行政とさまざまな機会を通じて強固な関係性を構築し、みんなから期待されるYEGとなれるよう、さらなるブランディングを図っていきます」
今後ますますリーダー、そして裏方として、地域をけん引できる活動に取り組む松江YEGの挑戦は続く。
【松江商工会議所青年部】
会 長 : 藤井浩太郎
設 立 : 1978年
会員数 : 92人
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