ざるでも蒸籠(せいろ)でもなく、黒い瓦の上に盛られた蕎麦(そば)がジューッと音を立てながら目の前に。この衝撃は今でも忘れられない。山口県豊浦町(現・下関市)の川棚(かわたな)温泉で食べた「瓦そば」。県を代表する郷土料理の一つだ。
使用する瓦は本物で、上に茶そば、牛肉や錦糸卵などがのる。薬味として添えてあるのはレモンともみじおろし。これらをつゆにくぐらせて食べるのだが、ほんのり焼き目の付いたあつあつパリパリの“焼き蕎麦”はかなりイケる。酒のつまみにもなる。
瓦そば誕生の背景には、川棚温泉ならではの歴史事情がある。江戸時代、長府藩主毛利侯の湯治場としてにぎわいを見せた川棚温泉は、地元の治安を守るため庶民でも特別に瓦と土塀の使用を許された。瓦の上でさまざまな食材を焼いて食べたのが、瓦そばの始まりといわれる。今では専門店もあり、いろいろな旅館でも食事に出すようになった。下関を中心に郷土の味として、県を挙げて瓦そばを盛り上げている。
「川棚グランドホテルお多福」の瓦そばは、調理長こだわりのソウダガツオがベースの特製だしのつゆが一級品。「日高食品」から自宅で味わえる商品も販売している。瓦の代わりに鉄板でも皿でも十分においしい。
Data
社名 : 株式会社日高食品(ひだかしょくひん)
所在地 : 山口県下関市武久町2丁目8-5
HP : https://hidakahonten.co.jp/
電話 : 083-254-2002
【下関商工会議所】
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