地震や水害といった自然災害時には、地域と連携し迅速に支援に動き、さらに雇用確保や困り事解決など地域が求めるサービスを含めたフットワークの良さから“頼りになる”と評判の地域企業がある。地域に根差す企業ならではの取り組みを追った。
地域のニーズに応じたワンストップサービスと人材支援を実践
高知市で事務機器販売とソフトウエア開発を中心に、オフィスに関するさまざまなサービスをワンストップで提供しているオフィスパートナー。「ノーは言わない」をモットーに企業の困り事とや小さな要望に応える一方、地域の雇用と人材定着を促すべく、学生と企業をマッチングする事業にも積極的に取り組んでいる。
地元企業のニーズや要望に「ノーは言わない」
オフィスパートナーは、OA機器や通信機器、オフィス家具などの販売、オリジナルのソフトウエア開発やホームページ制作など、ハードとソフトの両面からサポートを行っている会社だ。社長の田村勝介(かつゆき)さんはかねて起業が念頭にあり、前職の事務機器販売会社で営業を担当しながら経験を積んだ末に独立、2014年に同社を設立した。 「前職で地元の中小企業や小規模事業者を回る中で、さまざまな課題を目の当たりにしました。例えば、当時はOA機器を導入しても、ソフトウエアまでサポートしてくれる会社がこの辺りにはほとんどありませんでした。そこで当社を立ち上げるときは、OA機器を販売するだけでなく、インターネット環境やホームページの整備まで行うことにしたのです」と田村さんは発端を説明する。
地元企業のニーズに「ノーは言わない」姿勢で対応するうちに、扱う商材やサービスが増えていく。特に、販売管理システムやグループウエア、勤怠管理システム、アンケートの登録や集計フォームなど、お客さまの多岐にわたる要望に沿ったソフトウエア開発は事業の柱の一つとなり、オフィスに関するあらゆるものをワンストップで提供できる会社へと成長していった。
学生専用カフェを立ち上げて企業と学生をマッチング
企業のニーズに応え、必要とされる会社を目指した根底には“地域愛”がある。生まれも育ちも高知という田村さんは、進学や就職、起業などの人生を左右する局面で人に恵まれ、良い社会経験ができたとの思いがあり、今度は自分が地域に貢献したいのだという。 「高知が好きですし、次世代を担う子どもや学生たちにも『ここで働きたい』と思えるような活気ある地域にしたい。そのために学生と企業のマッチングに着目しました」
田村さんはかつて高知商工会議所青年部に在籍時、「地元に対する雇用と定着」という研修会で、学生や地元企業、ハローワークを取材する機会があり、高知大学の学生の7割が卒業後に県外へ出ていくことを知った。それならば、大学在籍中の4年間に学生と地元企業をつなぐ機会をつくろうと、18年に「学生空間 One step」を立ち上げた。学生専用カフェで、サークル活動や学習スペースなどに活用できるほか、コピー機やWi-Fi、ドリンクバーなどを無料で提供している。50社ほどの地元企業がスポンサーになって運営され、カフェにはそれらの企業パンフレットが常備されているほか、学生と企業が共同でイベントを行うなど、地元企業を知る機会がお膳立てされている。 「最初の頃は私が企画を考え、あちこちに声掛けしてイベントを行っていましたが、次第に学生有志が集まってOne step編集部ができ、今では彼らが中心になって企業取材やイベント開催をするなど積極的に活動してくれています。実際に、カフェを利用する学生がスポンサー企業に就職した例もあり、本年度から高校生にもカフェを開放しています」
また、One stepから徒歩10分ほどのところに、居酒屋「たむ家」をオープン。学生と企業の交流イベント会場として活用されたり、学生にアルバイトの場を提供したり、もちろん地元客の憩いの場としても人気を博している。
高知が元気になることなら何でも積極的に関わりたい
設立10年を迎えた同社には現在、多様な要望や相談が舞い込む。例えば、昨年開催された「五台山・竹林寺の開創1300年を祝うデジタルアート」もその一つ。四国霊場八十八カ所の一角を成す地元の名刹を会場に、音とプロジェクションマッピングを融合した空間芸術を披露しながら、高知の歴史と文化を再発見してもらおうというイベントだ。 「竹林寺の住職から、お寺のイメージを覆すようなイベントをやりたいという話があったのです。地域活性化につながればと、世界的に活躍する音響空間アーティストやビジュアルデザインスタジオの協力を得て企画しました。質の高いデジタルアートに触れてほしくて、当日は小学生以下の子どもたちを無料招待したのですが、皆大喜びで大盛況のうちに幕を閉じました」
同社の事業内容から少し外れた依頼にも思えるが、今や地域貢献は同社の重要な事業である。どんな声掛けにも「ノー」と言わず、何かにつなげたいと田村さんは言う。 「竹林寺と一緒にイベントをつくり上げる醍醐味を体験して、これを単発で終わらせたくないという思いが強くなり、今、次年度の県のプロポーザルに向けて、いくつかイベント事業の下準備を進めています。どんな形であれ地域に人が増え、元気になることであれば、当社の強みを生かして積極的に関わっていきたい」と目を輝かせた。
会社データ
社 名 : 株式会社オフィスパートナー
所在地 : 高知県高知市鴨部上町2-8
電 話 : 088-856-6997
HP : https://kk-officepartner.com
代表者 : 田村勝介 代表取締役
従業員 : 42人
【高知商工会議所】
※月刊石垣2024年9月号に掲載された記事です。
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