総選挙後、いわゆる「103万円の壁」の扱いが税制協議の焦点になった。課税基準の変更は女性の働き方に影響を及ぼすのは間違いない。一方で、職場における女性の地位向上にどの程度寄与するかは不透明なままだ▼
先進各国と比較して、日本企業では役員や管理職に占める女性の割合が低いと長く指摘されてきた。その背景には企業が女性の昇進に向けた環境整備をしていないだけでなく、女性自身が管理職への登用を敬遠する風潮があるとみられていた。ところが、ニッセイ基礎研究所などが大企業で働く女性を対象に実施したアンケートによると、4人に1人は管理職への昇進意欲があることが分かった。「敬遠する傾向」というのは先入観にすぎなかったのだ▼
「女性が管理職になると、責任者として職場のタイムマネジメントをしやすくなる」と同研究所の坊美生子準主任研究員は指摘する。家庭との両立で忙しくなるから効率的な働き方を追求するわけだ。女性管理職の部署で生産性が向上すれば、他の部署でもまねるようになり、全社的に働き方改革が進むとも期待できる。男性の育児休暇取得をはじめ家庭における夫の協力が欠かせないが、何よりも「女性の管理職を増やす、育成する」という経営陣の決意が必要だ。社内の候補者不足から人材会社を通じて求人に動く会社もあるとされる。まずは、改めて自社の女性スタッフの能力、適性をきちんと把握すべきだろう▼
ただ、坊さんによると、現在の管理職の働き方を見て敬遠する人は少なくないという。女性の登用は「管理職の働き方改革」も促す可能性がある。候補者の女性スタッフらと面談を重ねることで、社内の問題点も浮上するのではないだろうか
(時事総合研究所客員研究員・中村恒夫)
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