政府は3日、「第31回未来投資会議」を首相官邸で開催した。会議では、企業内部の経営資源に関する新たな分野への投資促進策などについて議論した。会議に出席した日本商工会議所の三村明夫会頭は、大企業と中小企業の協力関係について、「サプライチェーン全体の競争力強化においても、ベンチャー企業との協働においても、大企業が資金、人材、ノウハウなどを提供しつつけん引してほしいし、政策もそれを支援するものであってほしい」とコメントした。
会議で政府から提出された資料は、日本企業の現状について、環境変化が激しく、デジタル技術が進化し、業界の枠を超えた競争が進む中、大半の大企業はリスクテイクをちゅうちょし、現預金が積み上がっていると分析している。これについて三村会頭は、「現象的には確かにこの通りと思う。しかし私は、大企業の経営者の多くがそのようなマインドに陥っているとは思っていない。政府には、現象の指摘だけでなく、その共通の原因を探り当てる努力を続けていただきたい」と要望した。 一方で三村会頭は、「戦略的にリスクを取り、成果を上げている企業の取り組みを広く知らしめ、大企業に行動変容を促すという方向性には賛同する。その際、大企業に望みたいことは、中小企業を含む日本経済全体の付加価値向上をリードする気概である」と述べ、大企業と中小企業の協力関係強化に期待を寄せた。
また、三村会頭は、「ニッチトップの技術を生み出すのは、ベンチャーやスタートアップに限らず、分厚い中小企業層であることも強調しておきたい」と指摘。東京商工会議所が行っている、高い理想を掲げ、果敢に挑戦し成果を上げている中小企業を表彰する「勇気ある経営大賞」に触れ、「社長のイニシアチブにより変革と優れた技術でビジネスを開花させている中小企業は各地に多数存在する。このような中小企業の能力や潜在力に対しても、大企業が公正な取引条件に基づいてそれを積極的に生かすような取り組みや、マッチングなどの政策的仕組みづくりを、ぜひともお願いしたい」と述べた。
安倍首相は、「やる気のある既存企業がスタートアップ企業をM&Aする場合や、共同研究を行いやすくするため、支援策やルールづくりなど環境整備を図る」との考えを表明。取引関係の適正化についても、「中小企業については、大企業との取引構造のさらなる分析を深め、共に成長できる取引ルールの在り方を示したい」とコメントした。
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