社会人として臨んだ最初の仕事は、焼失した実家を、ディスカウントストア経営のため8階建てのビルに建て直すことでした。24歳の時のことです。
普通なら内装やショーケース類はデザイナーと業者さんに依頼するのですが、父が信頼する建築士の先生は、「内装はあなたが考えてつくってください」と私を指名してきたのです。驚いたものの好奇心が湧き、いろいろ調べつつ先生に相談しながらやってみると、通常の3分の1ほどの金額で全館の内装が出来上がりました。
学生の頃から実家の商売を手伝ってきましたが、私が専門家に指導を受けたのはこの時が初めてで、プロの教えを受けながらやると、素人でもここまでの事ができるのかと、非常に感動しました。それと同時に他店舗の内装に興味を覚え、その後のコンサルタントの仕事にも大きくプラスになりました。
2軒目の店を出す時、自分でやることは簡単でしたが、勉強になる経験であるばかりか店への愛着も増すので、店長になるAさんにやってもらうことにしました。Aさんはそろばんと社交ダンスが師範級と、私とは全く異なる長所の持ち主。「おそらくこの経験は、彼にとっても会社にとっても得るところが大きい」と考えたのです。
4年前に私も経験したことに対してAさんは熱心に取り組み、毎日、相談や報告をしてきました。それまでの私は、相手が半分ほど話すと、「あー、こういうことを言いたいんだね」と先回りするのが常で、先を読まれた相手の表情が曇ることを、全く気にも留めませんでした。
しかし、この時ばかりはAさんの真剣な話を聞く日々が続いて、結果、私は人の話を聞くという習慣が身に付きました。その上、2人の間に強固な信頼関係が生まれたのです。
後日、私は悟りました。人は話を最後まで聞いてもらうと、考えの整理がつき、悩みやモヤモヤした気持ちの7割方は解決する。聞く側は内容に共感し、できればメモを取って相談に答える。すぐに答えられない問題には、「考えるから時間をくれる?」と言えば、相談した相手は、ほぼ100%満足する。
上司に相談や報告をすることで、苦労やしんどい思いはある程度、解消します。その時に上司は、労をねぎらい、褒める。ここまでやると、明日の仕事への活力になるのです。
私たちは上司であるというだけで、相手の疲労を和らげ、やる気を引き出せる立場に立っているのですから、言葉や態度は非常に重要なスキルと考えて大切にしたいものです。
明日も部下の報告、相談事がいくつも寄せられることでしょう。その一つひとつを、しっかり聞いてあげてください。
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