社会人として臨んだ最初の仕事は、焼失した実家を、ディスカウントストア経営のため8階建てのビルに建て直すことでした。24歳の時のことです。
普通なら内装やショーケース類はデザイナーと業者さんに依頼するのですが、父が信頼する建築士の先生は、「内装はあなたが考えてつくってください」と私を指名してきたのです。驚いたものの好奇心が湧き、いろいろ調べつつ先生に相談しながらやってみると、通常の3分の1ほどの金額で全館の内装が出来上がりました。
学生の頃から実家の商売を手伝ってきましたが、私が専門家に指導を受けたのはこの時が初めてで、プロの教えを受けながらやると、素人でもここまでの事ができるのかと、非常に感動しました。それと同時に他店舗の内装に興味を覚え、その後のコンサルタントの仕事にも大きくプラスになりました。
2軒目の店を出す時、自分でやることは簡単でしたが、勉強になる経験であるばかりか店への愛着も増すので、店長になるAさんにやってもらうことにしました。Aさんはそろばんと社交ダンスが師範級と、私とは全く異なる長所の持ち主。「おそらくこの経験は、彼にとっても会社にとっても得るところが大きい」と考えたのです。