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アジアの風〜ビジネスの先を読む〜 自販機にみるアジアの新潮流

中国で急速に普及する生搾りオレンジジュースの自販機、1杯は15〜20元(230〜330円)だ

街角で自動販売機(自販機)を最もよく見かける国といえば間違いなく日本である。日本自動販売システム機械工業会によると、2017年12月末時点で日本にはペットボトルなど飲料を売る自販機が244万3800台、たばこ自販機が17万1300台、乗車券・食券・入場券など券類販売機が5万5200台あり、自販機全体で298万台が設置されている。台数では米国の300万台、欧州の300万台などと拮抗(きっこう)しているが、人口や国土面積あたりの普及度では世界トップ。同時に自販機の生産や技術でも日本は世界をリードしてきた。

アジアでは自販機の普及は遅れていた。人件費が安い国では自販機より人が手渡しで売った方がコスト安だったからだ。だが、ここ3~4年、中国では自販機が急増した。飲料中心だが、すでに20万台以上設置されている。その多くは日本メーカーの製品だが、中国の独自開発の自販機も台頭しつつある。中にはスマホで撮った写真のプリントができ、飲料やハンバーガーをも売る、日本では思いつかない多機能自販機もある。その中で目を引いたのは北京のショッピングモールの「生搾りオレンジジュース」自販機だ。生のオレンジを装置の中にストックし、購入すると、その場で2~4個を搾って、口をビニールパックしたカップやガラスボトルで販売する。言葉では簡単そうに聞こえるが、果汁と果皮、種子を分離してジュースにするメカニズムや果皮などの残滓を処理する工程、雑菌の繁殖を防ぎ装置内を清潔に保つ手法など技術的には高度で洗練されている。中国では健康志向から生搾りのオレンジジュースがブームで、イタリア製、スペイン製や複数の中国メーカーの自販機が大都市のショッピングモールや空港、病院などに設置され増え続けている。

注目すべきはそうした生搾りのジュース自販機では、欧州製より中国製の方が装置的にはるかに高度という点だ。ある中国メーカーは航空機エンジニアとIT技術者が起業し、自販機内部をモジュール化、故障はモジュールの交換で済ませ、メンテナンスを簡単にするなど新しい発想を取り入れた。中国の自販機は大半がQRコードの電子決済に対応しており、スマホであらかじめ購入したジュースを認証用のQRコードに変えて友人にプレゼントとして贈ることや、企業がプロモーションとして無料で顧客に贈ることもできる。自販機大国・日本だが、自販機の新しい波が中国や東南アジアから生まれていることに注目すべきだろう。

後藤 康浩(ごとう・やすひろ) 亜細亜大学 都市創造学部教授 早稲田大学政経学部卒、豪ボンド大学MBA取得。1984年日本経済新聞社入社、国際部、産業部のほかバーレーン、ロンドン、北京などに駐在。編集委員、論説委員、アジア部長などを歴任した。2016年4月から現職。アジアの産業、マクロ経済やモノづくり、エネルギー問題などが専門

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