各種自動販売機、コンビニの冷凍・冷蔵ショーケースなどを長年製造してきたサンデン・リテールシステム。物を“冷やす・温める”技術を積み上げてきた同社が、2021年に販売開始した冷凍食品自動販売機「ど冷えもん」が、予想をはるかに超える勢いで設置・活用されている。その背景には同社の着眼と時代の潮流があった。
アイスクリーム以外なかった 冷凍食品自動販売機
ちまたでは多種多様な自動販売機を目にするが、冷凍食品を扱う自販機といえばアイスクリームくらいなものだった。そこへ突如として現れたのが、サンデン・リテールシステムが開発した冷凍食品自動販売機「ど冷えもん」だ。屋外にも設置でき、さまざまな形状・サイズの商品を最大10種類まで販売できる。液晶タッチパネルで操作が簡単な上、オプションでキャッシュレス対応やオンライン遠隔管理もできるという、ありそうでなかった製品だ。 「なかった理由はシンプルです。飲料なら自販機まで常温で運べますが、冷凍食品は冷凍のまま運ばなければなりません。その分物流コストが高くなり、採算が合わないから普及しなかったんです」と同社常務執行役員の大木哲秀さんは説明する。
では、なぜ同社は開発に乗り出したのか―。着想のきっかけは2018年のこと。コンビニエンスストアの販売データを分析していた担当者が、数ある取扱商品の中で、冷凍食品の売り上げが前年比で2桁成長していることに気付いたのだ。ライフスタイルの多様化により個食が増加していたことや、冷凍食品のクオリティーが格段にアップしたことなどが理由として考えられた。 「特に売れていたのがチャーハンやピラフです。一人暮らしの人だけでなく、オフィスでレンジで温めて食べている人が結構いると聞いて、冷凍食品は今後も伸びていくだろうと直感しました」
同社は、冷凍食品専用の自販機を新たなチャネルとして、市場を開拓しようと決めた。
