ベトナムの2025年の国内総生産(GDP)が前年比8・02%増となり、5140億ドルに達してフィリピンを抜き、タイに接近した。2年後にはシンガポールを超え、東南アジア諸国連合(ASEAN)でインドネシアに次ぐ経済大国になる可能性が高い。1人当たりGDPも5000ドルを突破し、インドネシアと肩を並べたもようだ。
高成長の要因は明らかに、「脱中国」の製造業の受け皿になったことがある。米中対立、トランプ関税によって中国から米国への輸出が困難になった外資製造業が選んだ移転先は、労働力と人件費の面で優位性があり、世界第7位のICT製品輸出国として産業基盤も急速に整いつつあるベトナムだった。輸出を維持したい中国製造業も、地理的に近いベトナムに工場進出を加速させている。
ベトナム戦争終結後、10年まで恒常的な貿易赤字国だったベトナムは今や年々、貿易黒字を伸ばし、対米貿易黒字(25年)は1339億ドルと中国、メキシコに次ぐ第3位で、第6位の日本を大きく上回る。毎年、経済指標が予想以上に伸びるのは途上国が高成長する際の特徴だが、良いことばかりではない。
ハノイ、ホーチミンの幹線道路でこの数年、見かける機会が増えたのはメルセデス・ベンツ、BMWやポルシェ。途上国でこうした車種が増えるのは汚職がまん延する時期だ。中国でも04年ごろに官僚や軍人の家族、親族が高級外車を乗り回すようになった。共産党のトー・ラム書記長はベトナム版「反腐敗闘争」を展開しているが、汚職のスピードが上回っている。
同時に起きているのは早すぎる不動産バブル。ホーチミンなど大都市には庶民とは無縁の高級コンドミニアムが林立している。急増する富裕層や、外国人駐在員を狙っているというが、供給が需要を大きく上回っている。売れているとすれば値上がり期待の投機しかないだろう。中国経済に重くのしかかる不動産バブルも供給過剰から始まったが、少子高齢化による需要減退も要因の一つに加わった。
「ベトナムの人口ボーナスは2036年に終わる」。25年末、統計局はこう断言した。ベトナムの人口は23年に1億人を突破したものの、少子化によってあと10年で人口増による成長要因は消える。その後は中国同様の成長鈍化に苦しむとみておくべきだ。日本から見れば若々しいベトナムにも、少子高齢化が迫っていることを認識すべきだろう。アジアの変化は待ってはくれない。

