3月31日に、2026年度税制改正関連法が可決・成立した。企業関連の法人税の減税措置については、大胆な投資促進税制が創設され、研究開発税制(中小企業技術基盤強化税制を含む)の拡充・延長がなされた。他方、賃上げ促進税制は、中小企業向け措置は存続したが、中堅企業向け措置は縮小し、大企業向け措置は25年度末で終了することとなった。減税措置の選択と集中が図られた形である。
法人税の減税措置は、中小法人などに対して所得金額が年800万円以下の部分に、本則の税率19%よりも低い軽減税率15%が適用されていることを指す「法人税率の特例」、税額控除、特別償却、準備金などがある。これらの減税措置は、法人税法ではなく、租税特別措置法という別の法律で定められていることから、租税特別措置とも呼ばれる。
租税特別措置透明化法に基づく「適用額明細書」の提出義務化は、11年4月1日以後に終了する事業年度の法人税の確定申告から始まっている。各企業は租税特別措置透明化法に基づく適用額明細書を法人税の確定申告時に提出している。ただ、それを集計した報告書を財務省が国会に提出して国民に公開する際には、個社の情報がまずは判明しない形で公開している。
近年では、法人税関連の租税特別措置については、EBPM(エビデンス・ベースド・ポリシー・メイキング:根拠に基づく政策形成)が強調されるようになっている。措置を講じたことで、政策目的がよりよく達成されているかを事後検証して、それを次なる制度改正に役立てようとするものである。EBPMには、学術的にも意義があるとされているが、身もふたもない話でいえば、政策目的が達成されたというエビデンスがなければ減税措置は廃止縮小する、ということである。
そんなことを言っても、今までなら、多くの企業がその恩恵を受けて税負担が軽くなったということなら、政治家にお願いして減税措置を残してもらえる、といったところだっただろう。しかし、EBPMは今や閣議決定の文書にも登場するご時世である。設備投資や研究開発を促す目的で措置が設けられたものの、企業にとってその措置があった方が税負担が減ってありがたいというだけだと、その減税措置が政策目的をよりよく達成できているとは言えず、最悪の場合廃止という事態もあり得るという話である。
だから、減税措置はないよりあるに越したことはない、という程度ならば、今後は事後検証を通じて必要性が乏しいとして、その措置の存続が危ぶまれることになる。
逆に肯定的に言えば、税制改正要望で強く求めた減税措置を、業界を挙げて積極的に活用して、減税の恩恵を受けるとともに、政策目的の実現にも個社がそれぞれに貢献する状況が実現すれば、その減税措置は効果があったとして、存続や拡充が認められるという展開が期待される。
企業にとって、税負担が軽い方がよいに決まっている。ただ、租税特別措置を含む政策減税は、賃上げや設備投資などの行動を活発にする企業を対象に、法人税を減税するという狙いがある。こうした企業行動が不活発な企業にまで減税するという話にはなっていない。だから、企業行動がどうであれ、利益を上げた企業には一律的に減税するという法人税率そのものの引き下げという税制改正にはなっていない。
このように展望すると、わが国の法人税の税制改正は、足元では、積極的な企業行動を促す減税措置は、選択と集中で残されたり拡充されたりするが、事後検証が求められる情勢であると言える。ただ、どのような形であれ税負担が軽くなるならそれでよい、というわけにはいかないのが、今後の税制改正の動きとなろう。その方向性からすれば、減税の恩恵を受ける企業側からも設備投資や賃上げなど積極的な行動変容が求められる。
確かに、税制が複雑でその適用が難しいという根本問題があって、企画される税制は簡素であるべきだ。それを前提に、活発な企業行動を促す税制改正が今後とも必要だろう。(4月6日執筆)

