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こうしてヒット商品は生まれた! ガタンゴー

レールの継ぎ目にタイヤが乗ると、ガッタンゴットンと振動音が鳴り響き、大人もつい童心に帰ってしまう。「まちなかコース」は1日8便、「渓谷コース」は6便、4~11月まで運行中。乗車料金は1車両3000円〜

岐阜県の北端に位置する飛騨市神岡町は、飛騨山脈やその支脈に囲まれ、神通川水系の高原川などに沿って集落が点在する渓谷型のまちである。その地に2006年まで走っていた神岡鉄道の廃線を利活用したレールマウンテンバイク「ガッタンゴー」が、営業開始から12年目を迎えた現在、年間利用者数4万人を超える人気アクティビティーに成長している。

廃線となった神岡鉄道のレールを残したい

ガッタンゴットンと懐かしい音を響かせながら、線路の上を自転車で走る。2007年に飛騨市神岡町で誕生した、レールマウンテンバイク「ガッタンゴー」だ。ガイドローラー付きメタルフレームに、2台の電動アシスト付きマウンテンバイクを固定。後輪が直接レールに接地していて、ペダルをこぐと前進するしくみだ。2人乗りのほか、観覧シートを加えた3人乗り、タンデム自転車を組み合わせた4人乗り、後方に2階建てシートを設けた4~5人乗り、サイドカー付きなど車種も豊富で、子どもからお年寄り、カップルや家族連れなど、さまざまな組み合わせのお客に対応することができる。

このアクティビティーの魅力は何といっても、普通なら通ることのできないトンネルや鉄橋などを走れる醍醐味(だいごみ)と、季節ごとに表情が変わる雄大なパノラマだ。それを求めて、今や年間利用者は4万人を超え、累計利用者数は23万人を数える。中には30回もリピートしている強者もいるそうだ。

この事業のきっかけは、第三セクターが運営していた神岡鉄道の廃線だ。同鉄道は、鉱山のまち・神岡と富山市を結ぶ約20㎞の路線で、貨物と一般旅客の輸送を担ってきた。しかし、06年に廃線が決まり、鉄路を残したいと願う地元の有志が立ち上がった。

「神鉄はまちのシンボルであり、地元住民のルーツ。また、同時に生命線なんです。昭和56(1981)年に北陸・飛騨地方を襲った“五六豪雪”のとき、JR高山線は不通、幹線道路も途絶しましたが、神鉄だけは動いたため、陸の孤島にならずに済みました。そこで、廃線になってもレールさえ残しておけば、将来何かあったときに再び活用できると思ったんです」と同事業を運営するNPO法人神岡・町づくりネットワーク理事長の鈴木進悟さんは経緯を語る。

利用者の増加によりレール撤去の方針を覆す

同法人は、神岡鉄道を活用した「まちづくり構想」を策定し、2002年に活動を開始した。かつて鉱山事業で企業城下町が形成され、ピーク時には人口2万7000人に達するなど栄えていたまちは、鉱山の縮小とともに衰退の一途をたどる。人口も9000人にまで減少し、市街地の活性化は急務だった。そこで、観光に力を入れて交流人口を増やそうと、まちの観光資源の整備・開発に乗り出す。その一つがレールマウンテンバイクだ。

02年当時、リアルな線路の上を自転車で走るアクティビティーは、全国でも前例がなかった。そこで地元の鉄工所が設計図を引き、試行錯誤の末に、老若男女が安全に運転できるレールマウンテンバイクが完成する。廃線と同時に試験走行を開始した。

「当時の市長は、鉄路の存続に前向きだったので、市や観光協会が中心となって、約2・9㎞の『まちなかコース』の体験乗車会を開始しました。特に宣伝をしなかったにもかかわらず、年間1300人が来場してくれました」

ところが、08年に就任した新市長は鉄路を撤去する方針を打ち出す。事業に暗雲が垂れ込めたが、それにあらがうかのようにレールマウンテンバイクは好評を博し、利用者が増えていった。12年には通年営業(冬季を除く)となり、運営が市などから同法人に移管された。

そのころから勢いは加速する。年間利用者は2万人を超え、その取り組みは日本鉄道賞「蘇ったレール」特別賞や地域づくり・総務大臣賞、産業観光まちづくり大賞・金賞などを立て続けに受賞した。それが新聞やテレビなどに取り上げられて知名度が上がり、利用者の口コミも広がって、17年には年間利用者が4万人を突破した。その大半が昼食には地元の飲食店を利用し、6割以上が高山など近隣の観光地に宿泊するなど、まちに大きな経済波及効果をもたらしている。

全国の他団体と連携して廃線利活用を推進していく

今年の春には、新たに約3・3㎞の「渓谷コース」が開業した。川に沿って自然の景観を楽しみながら、二つのトンネル、二つの高架橋、一つの鉄橋を進むスリル満点のコースだ。それだけに毎日のレール点検など万全の安全対策を行っており、「まちなかコース」も含め、これまでに起こった事故やトラブルはゼロだという。

すでに鈴木さんの心は、新コース開業へと向かっている。

「予定しているのは、最も富山寄りの約10㎞です。開業している二つのコースより距離が長いし、高さのある鉄橋も渡るので、かなりダイナミックなコースになると思います。目標の2020年運行は難しいかもしれませんが、早く実現して、全線20㎞をつなぎたい」

事業の成功を受け、鈴木さんが力を入れているのが他団体との連携だ。特に、15団体が加盟している「日本ロストライン協議会」では、廃線利活用事業の草分け的存在として活動をけん引している。今年の10月には、神岡商工会議所や日本商工会議所の協力の下、東京駅に集結して「ガッタンゴー体験試乗会」を開催し、PRを行う予定だ。

「この先何十年も『ガッタンゴー』が続くと思っているわけではありません。いつかまた別の必然が生まれたとき、一から線路を引くよりも、機能が残っていれば開発費用が安く済みます。将来まちの経済を担う子どもたちのためにも、レールを守っていきたい」

鈴木さんは先の先を見据えながら、今日も「ガッタンゴー」を送り出している。

会社データ

社名:NPO法人 神岡・町づくりネットワーク

所在地:岐阜県飛騨市神岡町東雲1327-2

電話:090-7020-5852

HP:https://rail-mtb.com/

設立:平成14年

従業員:23人

※月刊石垣2018年9月号に掲載された記事です。

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