政府は2026年夏に取りまとめる予定の「日本成長戦略」において、「新技術立国」を目指すことを打ち出そうとしている。
「新技術立国」という言葉は、高市内閣が発足した直後の25年11月4日に開催された日本成長戦略本部の会合で、成長戦略の検討体制の中、初めて登場した。「新技術立国」が何を目指そうとしているのか。これまで、高市内閣の下で開催された政府の会議での議論を総合すると、次のようなことが言える。
日本に強みがある技術の社会実装や、勝ち筋となる産業分野の育成を促進して、新しい形で「技術立国」として国際的に地位を確立していこうということである。
かつて日本は、高度成長期に官民こぞって科学技術を育んできて、国際的にも群を抜いた存在となって、文字通り「技術立国」となった。しかし、バブル崩壊後に日本企業の業績が低迷するのに伴って、研究開発も停滞して、技術水準も多くの分野で世界最高水準とは言い難い状況になっている。AI(人工知能)やロボットなどでも、米国や中国に後れをとっている。
日本が、かつて「技術立国」と言われながら、長続きできなかった原因の一つとして、「技術で勝ってビジネスで負ける」がある。つまり日本企業は技術では優れていて、他国の企業より勝っているが、その技術を使って利益を稼ぐことが上手でなく、技術の優位性を維持できなかった、と言われている。そのため、「新技術立国」の実現に関する政府の議論の中では、「技術で勝ってビジネスでも勝つ」が一つのうたい文句になっている。
「新技術立国」の実現に向けた具体的な取り組みとして、次のようなことが挙げられている。理化学研究所、JAXA(宇宙航空研究開発機構)、産業技術総合研究所など、国が設立した研究開発法人が中心となって、AIやロボット、量子コンピューターや宇宙関連技術などを対象に、重点的に研究開発を進めていく。生み出された新技術は、民間企業も巻き込んで社会に普及を進めていくことである。
もちろん、民間で自発的に開発して、それを民間で協力して普及させていくことは、それはそれで進められてよいだろう。しかし、日本で開発された、新しい技術が搭載された製品やサービスは、新しすぎて民間企業では購入にちゅうちょする場合がある。そうした段階から、官公庁が積極的に購入して、新技術の普及が進むように関与することも検討されている。そうすることで、新しい技術開発で利益を上げやすくするとともに、新技術の開発意欲を高めることを図ろうとしている。
また、日本が強みを誇る、高い信頼性・安全性を備えた製品・サービスについては、規格や認証などを日本主導で定めていく。これを国際標準化につなげて、日本企業が開発した新技術が国際的にも認められて、グローバルに稼げるようにしていこうとしている。
例えば、高性能のAIやロボットの規格として、最低限の品質を保証する規格を、日本が率先して決めて、それを国際的な規格として認めてもらえたとする。そうすると、定めた規格より悪い性能の製品を外国企業がつくろうとしても、基準を満たしていないため販売ができず、それだけ日本企業の高性能の製品を海外で売り込みやすくなる。これが新たな需要の創出、拡大につながる。
「新技術立国」の実現のために最も大事なことは、民間企業が後戻りしない形で深く関与することである。「技術で勝ってビジネスでも勝つ」というわけだから、ビジネスで稼げなければ目的は達せられない。政府が力を入れるのも大事だけれども、ビジネスは民間企業が営むのであって、政府が営むものではない。
だから、真に「新技術立国」を実現させるためには、民間企業のコミットメントが欠かせない。政府が号令をかけただけだと、かけ声倒れに終わる。政府が民間企業に深く関与してもらえるよう、いかにうまく官民が連携していくかが鍵となる。(5月14日執筆)

