中国から東南アジア、南アジアまで、衣料品の受託生産は、今まで途上国の経済離陸をけん引する重要な産業となってきた。中国、ベトナム、バングラデシュなどが思い浮かぶが、スリランカもその一角を占める。
早くから英国をはじめ欧州のアパレル企業の委託生産先となり、衣料品製造小売り(SPA)の先駆けとなった英マークス&スペンサー(M&S)は1980年代に香港とスリランカで委託生産を開始した。スリランカのアパレル産業は規模的には小さいが、近年、独自の進化を遂げつつある。
コロンボなどの大規模ショッピングモールで見かけるのは、外国ブランドだけでなく“NOLIMIT”“EKKO”“CoCo”といったスリランカ地場のブランド。言われなければ、欧米か日本、もしかしたら中国のブランドと誤認しかねないセンスと品質、店の雰囲気を持っている。
NOLIMITはスリランカ国内最大手の総合的なファッション・アパレルチェーンで、創業は92年。アクセサリー、インテリア製品なども販売しており、M&Sに近い業態。EKKOは「欧州産リネン(麻)」と地場の綿という天然素材にこだわったエシカル(倫理的)とサステナブル(持続可能性)を前面に打ち出したブランド。NOLIMITはアラブ首長国連邦(UAE)に出店、EKKOは昨年、米フロリダ州に初の海外店舗を開くなど、グローバル展開を開始している。
こうした動きの背景にあるのは、自国の伝統、文化、技術に対する自信だろう。単なる受託製造の工場ではなく、世界に誇れるファッションを生み出せるという自負だ。
中国では2010年過ぎから中国の伝統回帰、独自性を強調する流れがファッションの世界で強まった。龍や鶴などの伝統的シンボルや、漢字、水墨画などを取り入れたファッションで「国潮」と呼ばれた。国産品愛用の「国貨」という動きも現れ、外国ブランドから中国ブランドに乗り換える若者も増えた。スポーツブランドの「李寧(Li─Ning)」「安踏(ANTA)」の急成長の背景には国貨がある。
スリランカのNOLIMITなどだけでなく、アジア各地で地場ブランドが目立ち始めているのは、欧米日のSPAが提供する世界共通のファッションに違和感を持ち、ほかにはない独自性や自らの好みを追求する世代が多数派になりつつあるからだろう。この波を見落とすと、アジアの消費者の心を捉えることはできない。

