マレーシアを大ざっぱに定義すると、東南アジア諸国連合(ASEAN)の“中堅国”となるだろう。2024年のデータで見れば、人口は約3410万人、国内総生産(GDP)は4222億ドルとともにASEAN11カ国中の6位で、面積も5位。世界有数の液化天然ガス(LNG)輸出国であり、1人当たりGDPは1万2619ドルとASEANではシンガポール、ブルネイに次ぐ豊かな国ではある。首都クアラルンプールには世界第2位の高層ビル「ムルデカ118」(高さ678・9m)など超高層ビルが立ち並ぶが、地政学リスク満載のグローバル情勢の中では、中堅国の強みは見えにくい。
3月上旬、クアラルンプール市内のマレーシア日本国際工科院(MJIIT)を訪問した。日本政府が協力し、日本式工学教育を実践する目的でマレーシア工科大学(UTM)内に開設され、今年で15年目を迎えた。電子システム、精密機械、化学プロセス、ソフトウエアの4学部と大学院があり、1100人以上の学生が学んでいる。企業との共同研究やラボも多く、 藻類研究を基盤とするバイオ企業、ユーグレナの藻類研究施設が目を引いた。
マレーシアは年間平均気温が28度、年較差2度と気温変動が少なく、低緯度で日照時間も長いため、世界でも最も藻類栽培に適している国だという。ユーグレナは藻類の生産する石油成分を航空機やバスの燃料に利用する開発や、クロレラ・サプリメントで知られるが、MJIITのラボで興味深かったのは藻類を家畜飼料や肥料にする研究。藻類には光合成から生み出された糖類だけでなく、家畜に不可欠なアミノ酸も豊富で、カルシウムなどのミネラルを加えれば家畜飼料に最適となる。
世界で飼料、肥料の需給が逼迫(ひっぱく)、価格も高騰する中で、繁殖力が高い藻類の活用は大きな価値を持つ。マレーシアは研究だけでなく、その大生産地となる可能性を秘めている。知られざる潜在力だろう。
もう一つ注目されるのは、シンガポールと接する南部のジョホール州。投資と人口の急増を受け、シンガポールが国境を越え、ジョホール州に都市域を拡大していることは本連載(2024年9月号)でも紹介した。そこに今、AIデータセンターの建設計画が相次ぎ進んでいる。藻類とAIは一見結びつきにくいが、急激な“繁殖”には共通性があり、ともに長期投資に必要な安定した場所が必要。マレーシアはそうした条件を備えており、新たな成長力を持ち始めつつある。

