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テーマ別企業事例 社員定着率を上げる経営 従業員が辞めない会社は強い!

事例2 「人間性成長」重視で女性社員80%働きやすい体制づくりで業績伸ばす

大和(石川県小松市)

2019年4月完成の新社屋は1日5万食の製造が可能。製造能力の増強とともに空調や衛生設備も強化し、働きやすさもアップ

シニア向けの個人・施設用のチルド惣菜の製造・販売をしている大和では、女性従業員が8割を占める。結婚、出産、育児、介護にも対応するフレキシブルな勤務形態を導入しており、役職者も半数以上が女性となっている。スピード出世あり、多彩な委員会活動あり、「人間性成長」を重視した経営方針だ。

女性を積極的に採用し〝おふくろの味〟を追求

1982年創業の大和は、石川県小松市を拠点に〝おふくろの味〟を追求した社員食堂の調理、運営をしてきた。だが、リーマンショック後に社員食堂の規模縮小、閉鎖が急増し、新機軸として見いだしたのが、シニア施設および個人を対象にした調理済み食材の製造だ。これが超高齢化社会の加速する社会ニーズと合致し、2007年にはシニア向けの食品市場へ、翌08年には介護食、医療食製品市場への参入を果たす。

このシフトチェンジを支えたのは、女性が大半を占める従業員だ。

「創業当初から変わらずにおふくろの味を追求しています。その味を再現するには女性の力が必須です。元々女性従業員が多い会社でしたが、ここ数年で8割に達し、社員定着率も高まったように思います」

そう説明するのは入社11年目を迎える営業本部部長の村中勇司さんだ。女性が多い職場とはいえ、残業は当たり前だった時代もあったそうで、入社したころは離職率も40%と高かったという。

同社では少量多品種で2000種類以上のレシピから献立を考案、調理し、全メニューを製造から2日で出荷する。1日約3万2000食を手掛け、その工程のほとんどが手づくり。だしは昆布やかつおから取り、調味料も本みりんを使用するなど、おいしさにも妥協がない。保存料を使わない加熱殺菌したチルド惣菜で、常食だけではなく刻み食、ミキサー食、ムース食など多彩な調理法があるのも同社の強みだ。

役職者50人中27人が女性 非正規社員も昇進の道がある

これを維持するには、有力な人財育成と、ベテラン勢が長年働き続けられる体制が求められた。そして、社内改革が始まった。 村中さんが改革の筆頭に挙げたのがあいさつだ。

「製造スタッフは制服を着て、マスクをつけ、髪がはみ出ないように帽子をかぶって作業します。胸に名札をつけていても、パッと見では誰だか分かりません。そこで、5年ほど前から『○○さん、おはようございます』と必ず、名前を呼んでからあいさつするようにしました。最初はなかなか浸透しませんでしたが、毎日朝礼で言い続けて5年、今ではすっかり定着しています。あいさつがきちんとできるのは、いい職場、いい会社の共通点ですからね。あいさつ日本一を目指しています」と笑う。

さらに毎朝15分ほど部署別の朝礼も欠かさない。製造業は作業中に会話することがないため、朝礼はコミュニケーションの場としても、人財育成の場としても重視している。部署別朝礼の前に、リーダー、サブリーダー、チーフ、スーパースタッフという四つの役職者が集う役職者朝礼が15分ある。週1回ペースで製造部会や製造企画会を開催し、月1回は全従業員が集まる全体集会も開いている。役職者が多いのも特徴で、全従業員380人中約50人、そのうち27人が女性で、新卒から3年目でチーフに、派遣社員からリーダーになったケースもあるという。実力を見込まれて「抜擢人事」で昇進する人、部署が変わる人もいて、村中さんもその一人で製造部から営業部へ抜擢された。

こうした昇進や人事異動で社内が活性化し、さらに業務外の委員会活動で社内交流が活発化して職場の環境改善、課題解決にもつながっている。

「女性活躍推進委員会で、アニバーサリー休暇やノー残業デーが提案され、会社が採用しました。ほかに、有給休暇も以前は1週間前には申請しなければなりませんでしたが、昨年から3日前までに短縮されて取りやすくなりました」と村中さん。実力次第で昇進もあり、ボトムアップで職場が改善できるとあって、不平不満がくすぶらない環境になったわけだ。

育児中の短時間勤務も生涯現役で働くことも可能

また、生産性には直接つながらなくても、日々の業務で感謝の気持ちを伝え合う「ありがとうカード」も好評だ。カードをあげる、もらうの最多者を毎月表彰し、表彰された数が最も多い人が、年間最優秀賞「やまと・オブ・ザ・イヤー」に選ばれる。 「勤続年数約30年の総務部の女性が3年連続受賞するなど、利益や生産性には直結しなくても会社に貢献している方を表彰しています」

勤務形態もフレキシブルで、定年退職制度を設けずに70代でも現役で働く人がいれば、2時間だけのパート採用もある。「リファラル採用」という従業員からの紹介で雇用する制度では、夫婦や親子、友人のどちらかが紹介して同社で働くというケースも多い。 「どんな職場かは従業員が一番よく分かっていますし、会社も希望者がどんな人か分かりやすいです。定着率が高い職場にすることが、人財確保にも功を奏しています」と村中さんは語る。

同社の経営理念は、「生涯倖福・生涯現役・生涯顧客」で、それを支える経営思想は「三方(従業員、お客さま、社会)が誇りと思う存在となること」。それに即した取り組みが、結果的に社員の定着率アップにつながっているという。

育児や介護と仕事との両立のしやすい勤務形態はもとより、育児休暇後も同じポジションで復帰できる安心感、そして部署の枠を超えた委員会活動や昇進、表彰など、従業員の〝やる気〟を多角的に下支えしている。その結果、ここ5年で年間売り上げが5倍、従業員の人数も5倍に増え、19年4月に完成した新社屋でさらなる規模拡大が望める。同社の躍進は、今後ますます加速しそうだ。

会社データ

社名:株式会社大和(やまと)

所在地:石川県小松市串町35-17

電話:0761-43-1155

代表者:津田隆太郎 代表取締役社長

従業員:約380人

HP:http://www.food-yamato.co.jp/

※月刊石垣2020年2月号に掲載された記事です。

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