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テーマ別企業事例 社員定着率を上げる経営 従業員が辞めない会社は強い!

事例4 「人の和」を大切にする企業風土で20年間新卒社員離職ゼロを実現

陽和(福岡県北九州市)

フッ素樹脂製品のオンリーワン企業を目指し、素材成形、精密切削、溶着加工などをワンストップで行っている陽和。高い技術力を誇る一方、ワーク・ライフ・バランスや福利厚生、イベントなどにも力を入れ、「人の和」を大切にする企業風土を醸成してきた。そうした経営が、高い社員定着率という形に現れている。

リーマンショック直後の創業55周年記念行事では、各チームがお金を掛けずに従業員の一体感が感じられる企画を出し合った

技術を身に付けると辞めていくことに危機感

北九州市にある陽和は、1999年より新卒社員の離職ゼロを更新している。

「この20年ほどは辞めた者が1人もいません。それだけでなく、全体の3分の1を占めるパート社員の勤続年数も軒並み長いんですよ」と、同社社長の越出理隆さんは口を開いた。

同社はフッ素樹脂製品に特化した専門メーカーで、昨年、創業65周年を迎えた。素材成型、切削、溶着など技術力が求められる加工を自社工場で一貫して行っている強みから、半導体、産業用機械、電気機械、医療機器、食品製造など幅広い分野に製品を提供している。中でも顧客ニーズが高いフッ素樹脂製溶着製品の量産にも成功し、オンリーワン企業への道を歩んできた。それだけに、社員の定着率は経営を左右し、技術の流出というリスクにも関わってくる。

「実はそれ以前は、社員の定着率が悪かったんです。技術を身に付けると辞めていく者が後を絶たず、このままではダメだと危機感を抱きました」

越出さんは同社に入る前、修業の意味で大阪の大手メーカーに勤務し、労務を担当していた。その経験から会社には「人の和」が不可欠だと確信し、社員が辞めない会社づくりに乗り出した。

社員同士の交流の場を増やし風通しがよくなる

25年前、最初に着手したのはハード面の整備だ。トイレや食堂の改装、社員が憩いの場として使えるリフレッシュゾーンを整備した。さらに、賃金レベルを北九州市の平均より高めに設定した。

「しかし、それだけでは会社に愛着は湧きません。『人の和』を生み出すには、社員同士が交流する機会が必要です」

その考えを形にしたのが、職場レクリエーションだ。毎年1回、新卒社員の入社後に親睦を深める意図で行っているもので、部署ごとにチームを組み、それぞれがレク企画を立てて実施する。チーム対抗戦の形式を取っていて、内容の良かったチームを表彰している。開始当初はチームに幹事役が育っていなかったため、単なる飲み会をするケースが多かったが、年を追うごとに企画内容が充実し、日帰り旅行や料理づくり、スポーツなどを繰り広げるようになった。ほかにも、周年記念行事や各種イベントにも力を入れるなど、折に触れて部署を超えた交流の機会を設けたことで、縦や横の風通しがよくなっていった。

10年ほど前からは、有給休暇取得率の向上、人間ドックの受診奨励、メンタルヘルスカウンセラーの導入など、社員満足向上の取り組みを進めている。最近では、健康習慣の定着を目的とした健康イベントをスタートさせた。部署ごとに健康目標を掲げ、体に良い習慣を実践するというもので、職場レク同様、チーム対抗で成果を競う。ちなみに越出さん自身、毎朝1時間の運動と毎日8000歩以上歩くという目標を掲げているという。

「いろいろやってきましたが、どれも継続することを重視してきました。レクやイベントを行うと、確実に社員同士のつながりが密になり、社内の風土も変わってきます。その表れとして、この20年間新卒社員は辞めた者がいないという結果に結びついているのではないかと自負しています」

近年、同社では65歳以上の社員が増えているほか、外国人技能実習生や障がい者雇用も進めており、社員構成も多彩になっている。その一人一人がパフォーマンスを発揮するには、やはり「人の和」が重要と越出さんは言い切る。

どう仕事に取り組むかを自ら考える社員を育成

高い社員定着率を維持し、着実に業績を伸ばしてきた同社は、昨年「100年企業」を目指して新たなプロジェクトを立ち上げた。社員の各年代から代表者を選んでプロジェクトチームをつくり、会社のこれからを考えていこうという取り組みだ。その成否を分けるポイントは“やりがい”だと越出さんは考えている。

「この2年ほど半導体部品の仕事が忙しかったんですが、忙しさが続くと“やらされ感”が出てきてモチベーションが下がります。こんなとき、なぜ忙しいのか、自分はどう仕事に取り組めばいいのかなど自ら考えられるようになれば、モチベーションを維持できます。その原動力がやりがいです」

仕事にやりがいを持つきっかけづくりとして、同社はファイナンシャルプランナーを招いたライフプランニングセミナーを開催した。そこで各自に人生設計をシミュレーションさせ、人生の節目でいくらお金が必要なのか、そのお金を得るには何をすればいいのかをイメージしてもらった。目標が明確になると、社員の仕事に対する意識も変わると感じているという。

「当社はこれまでフッ素樹脂加工に特化し、他社と差別化することで伸びてきました。今後もこの路線を踏襲するのか、新機軸を打ち立てるのか、弱点は何かなど、今は経営陣しか考えていませんが、今後はプロジェクトメンバーとも共有し、社員全員に意識が広がれば、さらにやりがいをもって仕事に取り組めるのではないでしょうか」

これまで社員満足に配慮して離職ゼロの会社をつくり上げてきた同社は、新しいフェーズに移行しつつある。

会社データ

社名:株式会社陽和(ようわ)

所在地:福岡県北九州市小倉南区大字朽網3914-75

電話:093-473-3411

代表者:越出理隆 代表取締役社長

従業員:117人

HP:http://www.yohwa.co.jp/

※月刊石垣2020年2月号に掲載された記事です。

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