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テーマ別企業事例 社員定着率を上げる経営 従業員が辞めない会社は強い!

事例3 社内コミュニケーションを促して家族的職場づくりに成功

弘木技研(山口県下松市)

新幹線の「出入台ユニット」の生産において、約6割の国内シェアを誇る鉄道車両部品メーカー・弘木(ひろもく)技研。「業務の円滑化には社内コミュニケーションが必要」だと、長年、社員への毎朝の声掛けや家族同伴の社員旅行などを実施してきた。その結果、職場には家族的な雰囲気が醸し出され、社員定着率の高さにも寄与している。

新幹線の客室とデッキを仕切る「妻パネル」。近年ではデザイン性が高くなり、高い技術が求められている

毎朝社内を回って社員一人一人に声掛け

弘木技研社長の弘中善昭さんは、始業とともに各部署を回ることを日課としている。その際、社員一人一人に「おはよう」「どうだ?」「変わりないか?」などの声掛けを欠かさない。

「そうして社内を回っていると、社員の体調の良し悪しや仕事の進み具合など、いろいろなことが分かります。作業中に事故があってもいけないし、毎朝のルーティンにしています」と弘中さんは“ごく当たり前のこと”のように語る。

同社は鉄道車両部品の製造が主事業で、新幹線車両の乗降口に組み込まれる「出入台ユニット」や、デッキと客室を仕切る「妻パネル」などをメインとする。材料の切断から曲げ、溶接組み立て、艤装(ぎそう)組み立てまでを一貫して行っている。特に「出入台ユニット」では国内の約6割を占めるトップシェア企業だ。もとは家具製造販売業で創業したが、その技術を生かして鉄道車両部品メーカーへと転換を図った。国内の大手車両メーカーとの取引を順次開始し、順調に事業を拡大していく中で、社内に足りないものが目に付くようになった。

「おはよう、さようなら、お願いしますなど、あいさつをするような空気がなかったんです。父(創業者)のころは家具屋だったので、社長と社員は親方と弟子のような関係で、職場も和気あいあいとしていました。ところが私の代になって事業内容も変わり、社員も増えて、かつてのような雰囲気はなくなっていました」

業務を円滑に進めるにはコミュニケーションが必要と強く感じた弘中さんは、10数年前から社員への声掛けを始めたほか、社員の間に「お願いします運動」や「あいさつ運動」を促すようになった。

家族同伴の社員旅行で日ごろの仕事の成果を確認

また同時期から、家族同伴の社員旅行も開始した。社員旅行自体は家具製造のころから行っていたが、2010年からは新幹線を利用した家族同伴の旅行という形をとっている。福利厚生の一環だが、自分たちが製造した部品が全国を走る新幹線車両にどう取り付けられているのかを、実際に乗車して確認するという研修の意味合いも兼ねている。同伴した妻や子どもも日ごろのお父さんの仕事を間近に感じることができ、好評を博している。

「社員の家族と接する機会があるのもいいですよ。『この家はかかあ天下だな』とか『小さな子どもがいるんだな』などが分かり、社内での会話のフックにもなりますしね」

弘中さんが社内コミュニケーションにこだわるのは、会社の雰囲気のせいで社員の出入りが激しいようでは、事業の継続が困難との思いもあるからだ。個々の技術力は仕事を通じて培うことができるが、そもそも社員定着率が悪くては日々の業務がうまく回らない。そうした意味での弘中さんの社内コミュニケーションへの気遣いは、社内に家族的な雰囲気をつくり、満足度を高めて「社員がほとんど辞めない」状況を生み出している。

さらに現役世代だけでなく、20年ほど前から高齢者の継続雇用にも積極的に取り組んでいる。現在アルバイトも含めた65歳以上のシルバー人材が10人在籍していて、熟練の技を発揮し、技術の継承にもひと役買っている。

社員の適性を見極めた配置で定着を高める

同社の社員定着率が高いもう一つの要因として、独自の新人教育が挙げられる。入社後に約1年かけて現場の主なセクションをローテーションさせ、適性を見極めた上で配属先を決めるのだ。以前は新人研修を行っていたというが、机上で勉強しても現場で役に立たなかったため、やめたのだという。

「仕事の向き不向きや仕事覚えの良し悪しは個人差が大きく、実際にやってみないことには正確に判断できません。現に数年前、事務職として採用したが向いていなかったので、生産部門に配属したら見事に化けた例があります。一人一人の適性を見極めるのも、私の重要な仕事です」

適性を見ているのは仕事の能力だけではない。例えば、メンタルが弱いと感じた社員には、1年間は叱らず、2年目からしっかり指導するといった対応をしているという。「それで辞めるのなら仕方ないと思っていましたが、その社員は今も勤めていて、大事な戦力に成長しています」

若者から高齢者まで、幅広い年代が自分の適性を生かして仕事に取り組める環境を整えている同社。近年では、ITやIoTを積極的に活用しながら生産業務の効率化を進めている。その先に見据えているのは、モジュールメーカーへの進化だ。現在は出入台ユニットの外側だけをつくっているが、ゆくゆくはその中身も含めたモジュール(かたまり)一式を扱い、車両部品メーカーとしての基盤を確固たるものにしたいと考えている。

「今の状態を維持するだけでは会社は成長しないし、会社が成長しなければ社員も育ちません。今後も収益を上げていき、それを支えてくれている社員たちに還元していきたい」と、弘中さんは明確なビジョンを口にする。

会社データ

社名:株式会社弘木技研(ひろもくぎけん)

所在地:山口県下松市葉山2-904-15

電話:0833-46-3535

代表者:弘中善昭 代表取締役社長

従業員:82人

HP:http://hiromoku-giken.co.jp/

※月刊石垣2020年2月号に掲載された記事です。

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