厚生労働省は2026年9月1日より、時間外労働に係る労働基準監督署(以下、労基署)による一律の監督指導を見直し、相談・支援の充実化に取り組むこととした。そこで本稿では見直しの内容や、見直しに至るまでの日本商工会議所の取り組みなどを日商産業政策第二部より解説する。
現行の労働基準法では、1日8時間、週40時間勤務が原則だが、36協定を締結することで、月45時間までの時間外労働が可能となる。さらに特別条項付の36協定を締結することで、年間720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間以内、月45時間超の時間外労働は年6カ月までといった、通常の36協定を上回る時間外労働を行うことができる。 時間外労働の上限規制については、「中小企業の事業運営に支障をきたす」「地域経済全体に大きな影響を与える」など、見直しを求める意見が多く寄せられていた。
日商の「中小企業の働き方改革に関する調査」(2026年5月公表)では、正社員1人当たりの平均的な時間外労働時間は「20時間未満」と回答した企業が約8割となり、従業員全体を平均すると上限規制の範囲内で対応できている企業が多い。他方で、業務の完遂、スキル習得などの理由から、「より長い労働時間を希望または承知する従業員が自社には一定数いる」と回答した企業が約4割に上った。
上限規制の範囲内で、より長く働く意思がある従業員がいるにもかかわらず、時間外労働の上限規制に厳しさを感じる背景には、時間外労働に係る現在の制度が十分に活用されていない状況もあるとうかがえる。
その原因の一つに、労基署の指導方針がある。これまで、労基署は特別条項が結ばれ上限規制の対象内であっても、時間外労働時間を一律に45時間以内に抑える指導を行っていた。日商は政府会議などを通じ、「労基署の過度な指導は企業活動の萎縮につながる」と訴え、今回の見直しに至った。
9月1日より、労基署は先に述べた一律の指導を見直し、36協定で定めた健康確保措置の実施状況を重点的に確認し必要に応じた指導を行う方向に方針転換する。これに合わせて、全国の働き方改革推進支援センターに「専門相談窓口」が新設され、36協定の作成や柔軟な労働時間制度の活用に向けた支援が強化されるとともに、よろず支援拠点などとの連携により労務相談のみならず経営相談にも応じられる体制を構築する。
人手不足の中小企業に対し、より柔軟な労働時間制度を実現することは重要であり、日商としても引き続き政府に訴えていく。まずは、今回の見直しを受け、時間外労働に関する現行法制度の枠組みの中で、適正に時間外労働が行える環境が整備されることを期待する。
時間外労働などに係る相談・支援および監督指導の見直しについては、2次元コード(厚労省ホームページ)を参照いただきたい。
(日本商工会議所産業政策第二部)
