事例1 会社を挙げて食生活を改善 わずか1年で高脂血症要注意者が減少
ベルスター・スズキ(静岡県島田市)
精密洗浄機や工作機械、医療用機器など、幅広い分野で用いられる金属部品の製造を手掛けるベルスター・スズキ。以前から、分煙や予防接種などを推進してきたが、2年前より本格的に健康経営に乗り出した。アドバイザーの指導の下、1年で健康診断数値の改善に導いたほか、従業員の健康意識も向上している。
もともと社内の喫煙率の高さを懸念していた
ベルスター・スズキは、製茶機械などの製作で1908年に創業後、ステンレスの溶接加工をメインに多様な金属部品の製造をワンストップで行っている。従業員数41人、平均年齢約40歳、製造部門従事者が多数を占める同社が、健康経営を取り入れたのは2017年11月のことだ。
「きっかけは、島田商工会議所と県中部支援局(現中部地域局)から、事業所の健康づくりを推進する『ホワイト企業』の取り組みに応募しないかと声が掛かったことです。私自身、中部機械工業健康保険組合の理事を長年務めてきて、セミナーなどで健康経営のコンセプトは知っていたので、取り組んでみることにしたんです」と旗振り役の同社会長・鈴木國近さんは説明する。
発端は外部からの働きかけであったが、鈴木さんはかねてから社内の健康環境について気になっていた点があった。従業員の半数近くがたばこを吸っていたことだ。かつては工場内のいたるところに灰皿が置かれ、職人が“作業の合間に一服”するのは当たり前の光景だった。しかし、それでは作業の効率も悪くなるし、何より健康に悪影響を及ぼす。そこで10年ほど前から、休憩時間以外の喫煙を禁止し、喫煙場所を決めて分煙にも乗り出す。その後、喫煙場所を工場外の離れたところに移した。
「わざわざ吸いに出るのが面倒だからか、これは予想以上に効果がありました」
ほかにも、1時間単位の有給休暇取得を可能にして、通院や健康診断の再検査の受診をしやすくしたり、インフルエンザの予防接種の料金を一部会社が負担したりするなど、さまざまな健康対策を講じてきた。そのため、健康経営をスタートすることに戸惑いはなかったという。
専門家の分析をもとに食生活の改善に乗り出す
同社の健康経営のアドバイザーを務めているのは、フジクラ健康社会研究所社長の浅野健一郎さんだ。浅野さんはかつて、電線など通信電子機器材料を扱うフジクラに勤めていた際、社内の健康経営の企画・立案、実践に携わり、成果を上げてきた人物だ。現在、そのノウハウをもとに、企業のヘルスケアの取り組みをサポートしている。
「浅野さんが当社の従業員全員の健康診断データを分析したところ、血圧、コレステロール、尿酸値など、いわゆる生活習慣病のリスクとなる数値が高いことが分かり、まずは高血圧対策として減塩に取り組むことになりました」
そこで早速、食堂に血圧計と体重計を設置し、従業員にこまめに計測するよう促した。また、食堂のテーブルごとに置いていたしょうゆやソースなどの調味料を1カ所に集め、使うときに持って行くルールにした。夏場に熱中症対策で配布していた塩飴の量も減らした。中でも効果てきめんだったのは調味料で、食事中にわざわざ立ち上がって持って来るのが面倒なため、常備のしょうゆやソースがほとんど減らなくなったという。
このほかにも、健康セミナーの開催、各種健康パンフレットの紹介、保健師による健康指導なども随時行った。毎朝のラジオ体操の効果を上げようと、講師を招いて指導もしてもらった。
「これらを1年間続けたところ、血圧にはあまり変化がなかったものの、コレステロール値が全体的に改善され、高脂血症の要注意者が減りました。たった1年で変わるものですね。また、分煙が定着したことで、喫煙者が全体の3割程度まで下がり、1日に吸う本数も明らかに減っています」
こうした一連の取り組みが評価され、同社は2018年に県から「ホワイト事業所」の認定を受けた。その後も引き続き、従業員に減塩を柱とする食生活の改善を促している。
従業員の意識に変化が見られ病欠が減る
短期間で目に見える成果を導いた同社だが、鈴木さんが唯一苦労した点として挙げたのは、従業員がどのくらい健康に関心を持っているか分からなかったことだ。しかし、それは取り越し苦労だったようだ。
会社が明確に「食生活の改善」をテーマに掲げたことで、従業員が昼食の内容を、脂っこいおかずの多い弁当から、野菜がより多く取れる弁当に、自主的に変えるようになったのだ。これも健康診断におけるコレステロール値の低下につながっていると考えられる。
「健康経営を取り入れたことによる経営面でのメリットを数値化するのはまだ難しいですが、ここ2年くらいは確実に病欠が減っていますね。以前、社内でインフルエンザが流行して、従業員の半数くらいが休んでしまったことがありましたが、今では予防接種を積極的に受けてくれるようになりましたし、自分の体を管理するという意識が高まってきたように思います」
本来“健康”は期間限定ではないし、改善したらそれでおしまいというものでもない。 「健康経営は長いスパンで取り組むべきもの。当社も引き続き食生活を柱に、具体的な目標を立てながら、従業員の健康に留意していきたい」と鈴木さんは強い意欲を見せた。
会社データ
社名:株式会社ベルスター・スズキ
所在地:静岡県島田市中河123-14
電話:0547-38-3421
代表者:鈴木雅八 代表取締役
従業員:41人
※月刊石垣2020年4月号に掲載された記事です。