事例2 トップ2人の大病をきっかけに小さな健康習慣の積み重ねで意識改革
せんねん(長崎県諫早市)
保険代理店として1974年に創業したせんねん。人々に安心・安全を提供することを業務とする同社は、“ある出来事”をきっかけに本格的な健康経営に乗り出す。職場に小さな健康習慣を取り入れ、それを地道に継続する中で社員の意識にも変化が現れ、2019年から2年連続で健康経営優良法人に認定された。
経営者自身の入院が健康の大切さを教えてくれた
保険代理業を営むせんねんが、健康経営に乗り出したきっかけは鮮烈だ。
「7年前に、当時社長だった父と私が大病を患って、同時期に1カ月ほど入院したんです。会社のトップ2人が不在で社内を混乱させてしまい、私自身日ごろの不摂生と健康のありがたみを思い知らされました。それが直接の理由ですね」と同社社長の林田武之(たけし)さんは、当時を振り返る。
そのころの林田さんは仕事の会合や飲み会が多く、生活も不規則で、お世辞にも健康的な体型とはいえなかった。そのツケともいえる病気を経験後、社長に就任して改めて社内を見回すと、社員の喫煙が目に付いた。
「たばこを吸うために頻繁に外に出る者がいたんです。喫煙は健康に悪いだけでなく、『ちゃんと仕事をしているのか?』と心配になって……。そんな無駄をなくそうと、まずは『たばこをやめよう』というスローガンを立てました」
しかし、禁煙を強く迫るものではなかったため、あまり効果はなかった。社員の健康意識を高めるには、ある程度会社が仕組みをつくり、習慣化する必要がある。そこで林田さんは2018年11月の事務所移転を機に、本格的に健康経営に乗り出した。
「社屋も新しくなり、心機一転ということで、就業時間中の全面禁煙を決めました。もちろん社用車内も同様です。最近ではたばこのにおいを嫌うお客さまが少なくないので、健康だけでなく接客面でもメリットがあると考えました」
社員同士が声掛けをする雰囲気をつくる
まず心掛けたのは“今の状態を知る”ことだ。そもそも体に無頓着では健康管理はできない。そこで男女1人ずつ、社員の体調をチェックする担当を決め、顔色などに気を配らせた。例えば、風邪気味なのに無理を押して出社してきた者がいたら、早退や病院の受診を促す。それが気兼ねなくできるように、一度出社すればその日は出勤扱いにし、会社に届けを出せば就業時間中の受診を可能とする社内ルールも設けた。
「担当者でなくても、社員同士が声を掛け合うように伝えていて、私も気付いたときは声掛けをしています。すると、健康に留意しなくてはいけないという雰囲気が自然に生まれるんですよ」
さらに19年の年明けから、ラジオ体操を導入して体を動かす機会を設けた。毎朝9時の始業とともに社員全員が1階フロアに集まり、有線放送に合わせて体操を行う。万一お客さまが来店しても終わるまで待ってもらう。それにはその様子を見てもらう意図もあるといい、健康に気遣っている会社だとお客さまからも好意的に捉えられているという。
「体を動かす必要を感じたのは、社内イベントで血管年齢測定器をレンタルし、社員全員が3日間測定したことがきっかけ。その数値を分析すると、体調が良いときの血管年齢は年相応か低く出て、体調が悪いと高く出るようなんです。そこで体調維持に役立てようと、ラジオ体操を始めたわけです」
体操後は2階の会議室で朝礼を行っているが、その移動にも階段を使っている。また、車通勤者用の駐車場をあえて会社から500mほど離れた場所に借り、事務所まで歩くようにもしている。こうした工夫により、内勤者でも多いときの歩数は1日5000~6000歩になるという。
特別なことでなくても継続することが重要
「継続できるか最初は不安だった」と林田さんは言う。実際、禁煙を打ち出したときは愛煙家の社員から反発があった。しかし、就業中に限定したため、結果的に本数が大幅に減ったり、禁煙に成功したりするなどの効果が生まれた。また、ラジオ体操や階段の昇降、駐車場との行き来などを日々のルーティンに組み込んだことで、体を動かす習慣が自然と身に付き、きびきびと動くようになった。一つひとつは特別なことではないが、互いに声掛けし合う雰囲気が社内に醸成されたことも、無理なく続けられた秘訣(ひけつ)だろう。今では社員同士が「今日は○○歩歩いた」と自慢するなど、楽しく競い合いながら取り組んでいる。
「私もここ数年、調子がいいんですよ。病気を患って以来、特に食事には気を遣っています。栄養バランスもそうですが、必須ではない会合や飲み会はなるべく断って、遅い時間に飲み食いしないようにしています。そのおかげで80㎏あった体重が、現在は65㎏まで減り、それを維持しています」
小さな健康習慣を地道に積み重ね、社員の意識も大きく変化したことが評価され、19年に続いて今年も健康経営優良法人に認定された。その実績の下、林田さんは今後をこう語る。
「当社は保険代理業であり、健康経営は不可欠なものと考えていますが、業種を問わず企業のイメージアップや人材確保など、多くのメリットがあります。今後は取引のあるお客さまなど社外向けに、健康経営を進めるための情報提供やセミナーなどを行っていけたらと考えているところです」
会社データ
社名:株式会社せんねん
所在地:長崎県諫早市金谷町10-3
電話:0957-21-1000
代表者:林田武之 代表取締役社長
従業員:15人
HP:https://www.hoken-sennen.jp/
※月刊石垣2020年4月号に掲載された記事です。