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こうしてヒット商品は生まれた! ばかうけ

定番の「青のりしょうゆ味」は、生地に練り込んだ青のりの配合バランスと、焼いた生地に合う秘伝のしょうゆだれが味の秘密

日本一の米どころ・新潟県に創業した栗山米菓。「たのしい、おいしい、あたらしい」をものづくりの理念に掲げる同社が、平成2年に発売した煎餅「ばかうけ」は、累計販売数60億枚以上というロングヒットを飛ばしている。幅広い世代に支持される味と食感はいかにして生まれ、全国に広がっていったのか、その道のりをたどる。

大手との競合より独自商品へのこだわり

その名前を聞けば、多くの人が「三日月みたいな形の煎餅」と思い浮かべられるほど広く浸透している「ばかうけ」。サクサクした軽い食感が持ち味で、平成2年に発売された定番品の「青のりしょうゆ味」は、累計60億枚を超える堂々のヒット商品となっている。また、発売当初から新しい味の開発にも積極的に取り組み、今までに150種類以上のシリーズ商品を持つ一大ブランドを築いている。

「当時は丸くて堅いしょうゆ煎餅が主流の時代。そうした中で、業界の大手メーカーと同じような商品を出しても勝負にならないので、あまり見たことがないような新しいものをつくろうというのが始まりでした。ちょうどそのころ、社員の一人が『青のりが混ざった煎餅があるらしい』という話をどこからか聞いてきて、生地に素材を練り込む製法は珍しかったので、それをヒントに開発をスタートしました」と栗山米菓経営企画部チーフリーダーの久代秀明さんはきっかけを説明する。

こだわったのは、堅過ぎず柔らか過ぎずの絶妙な食感と風味だ。そのため、主原料となるうるち米の選択、生地に練り込む青のりの配合バランス、焼き加減、味付けなど、試行錯誤を繰り返した。その結果、焼いた生地を薄く油でコーティングしてからしょうゆだれを塗るという独自の製法を見いだす。油の膜で熱が内側にこもり、生地がふっくらするとともに、しょうゆだれが染み込みすぎるのを防ぐため、サクサクに仕上がるのだ。

形は「片手で持って食べるのにちょうどいい」からと、米をモチーフに採用。こうして新感覚の煎餅が完成し、「ばかうけ」の名前で発売された。新潟の方言で「ばか」は「すごい」を意味するほか、人気テレビ番組から生まれた「ばかうけ」「ややうけ」という流行語にもあやかって、「すごく人気が出るように」との願いを込めて名付けたものだという。

テレビCMとコンビニ展開で幅広い層に支持

ところが、発売後の売れ行きは芳しいものではなかった。「何これ?」というのが市場の大方の反応。商品名がそもそも煎餅を連想させるものではない上に、形も従来品と大きく異なっていたため、内容物をイメージしにくかったことがマイナスに働いた。とくに関西圏での売れ行きは悪く、「関西の人は『ばか』という言葉に抵抗感があるのではないか」「青のりはお好み焼きやたこ焼きなどに使うもので、煎餅に使うのは受け入れられないのでは」とさまざまな憶測がなされ、一時は関西圏に出荷する商品の名を「ええやんか」に変えたこともあったのだとか。

結局それでも販売増にはつながらなかったため、商品の認知度を上げることにシフト。営業を強化するとともに、新たな味づくりにも取り組み、発売1年後に『白ごましょうゆ味』を発売する。発売3年後に、当時珍しかったアニメのキャラクターを使った初テレビCMを打つと人気に火がつき、一気に全国区へと躍り出た。

「さらに売上が急増したのは、コンビニ展開がきっかけ。『ばかうけ』には油が使われていて、24時間営業の店舗で四六時中光に晒されると風味が落ちる可能性があったので、パッケージを透明からアルミに変えたんです。中身が見えないという欠点もありますが、パッケージ全面に印刷ができるので目立つという利点があります。また、そのころに発売した『ごま揚げ味』が売れ行き好調だったのと相まって、人気は不動のものとなりました」

10年には、キャラクターを初代の「青海苔千兵衛」から2代目の「バリンとボリン」に引き継ぎ、スナック菓子に近いポップな見た目にリニューアルされ、従来の購買層より下の世代にもファンを増やしていった。

予想を覆す味にも果敢に挑戦する理由

同社が「ばかうけ戦国時代」と名付けるのが13年以降だ。このころから新味の開発を加速させ、季節にちなんだ期間限定品、ご当地の特産品を取り上げた地域限定品、土産品に分けて、新商品を次々と世に送り出した。

期間限定品の例を挙げると、春なら梅やエビ、夏はカレーや焼きとうもろこし、秋は焼きいもやじゃがバター、冬はチーズやクリームシチュー味という具合。人気が高く毎年リピートする味もあれば、不人気で幻の一品になるものもある。ちなみに今まで生み出してきた約150種類の味の中で、人気ベスト3は、わさび味、梅味、きなこ味で、不人気ワースト3は、スイカ味、鶏の水炊きポン酢味、微妙なマロン味だそうだ。

「一番人気のわさび味は今や夏の定番品ですが、もとは米に合わない味という意外性を狙ってつくったもの。ですから、正直こんなに受けるとはうれしい誤算でした。不人気に選ばれた3品は、できるだけ忠実に風味を再現したことが、結果的に煎餅にはなじまなかったようですね(笑)」

常に万人受けを狙うのではなく、あえて予想を覆すような味にも挑戦し、正直に「微妙なマロン味」などという商品名をつけてしまう大胆さに、「おいしいだけでなく、食べて楽しさも感じてもらいたい」(久代さん)という心意気を感じる。今年で発売25周年を迎え、今や世界にも愛される煎餅となった同商品。次は50周年を目指して、さらに独自の「ばかうけ」ワールドを展開してほしいものだ。

会社データ

社名:株式会社栗山米菓

住所:新潟県新潟市北区新崎2661

電話:025-259-2801

代表者:栗山敏昭 代表取締役社長

設立:昭和24年

従業員:700人

※月刊石垣2015年11月号に掲載された記事です。

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