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まちの視点 顧客の信頼が繁盛の源泉 

全国にファンを持つ杉山フルーツの生ゼリーには、旬の確かな果物が惜しげもなく使われている

全国から来店する生フルーツゼリー

かつては栄えていた商店街が衰退し、まちにあった大型店が撤退。そこにとどまる店と商人はどのように生き残るのか。今や、日本全国どの地方でも直面するこの問題を、自らの信念とアイデアで解決し、全国から来店客が絶えない果物店がある。

静岡県富士市にある吉原商店街はかつて宿場町として栄えたが、現在は他の地方商店街同様、多くの店にシャッターが下りている。そんな中にあって、県外ナンバーの自動車での来店客が引きも切らないのが「杉山フルーツ」である。

その理由は、店主の杉山清さんが開発した高級フルーツを使った「生ゼリー」にある。そのおいしさから多くのテレビや雑誌で取り上げられ、来店客が長い行列をつくるが、地方発送やネット販売はなく、この店と全国の百貨店などでの出張販売でしか購入できない。

創業は1950年。茨城県出身の杉山さんは東京のホテルでコックをしていたが、82年に妻の実家である同店の3代目店主となった。当時は商店街もにぎわって店は順調だった。しかし、94年に商店街にあった大型店が撤退し、人通りが激減した。

それを機に杉山さんはラッピングの技術を身に付け、商品をギフトフルーツに特化。2005年には、独自の商品として「生ゼリー」を開発した。その理由を「静岡は産地としてはフルーツ王国ですが、フルーツを料理や加工に使う〝フルーツ文化〟がなかったから」と杉山さん。自身が元々料理人だったことも功を奏した。

無色透明なゼリーの中に生のカットフルーツが浮かぶ「生ゼリー」はカラフルで、見た目のインパクトがあるのが大きな特長だ。素材は時期によって変化し、それによって単価も違い、300円から1000円。一番の売れ筋はイチゴやメロン、キウイなどが入ったミックスだ。

「見てよし、食べてよし」という生ゼリーの発売以来、杉山さんは自らを「フルーツアーティスト」と名乗っている。生ゼリーは開発から15年が経った今も、さらに売れ続けている。

出張販売は「ライブ販売」

対面販売を大事にする杉山さんは、全国の百貨店での出張販売を約30会場、年間100日も行っている。東京などの百貨店では、生ゼリー目当てに早朝から長い行列ができ、限定の350~500個があっという間に売れる。

生ゼリーそのものだけではなく、杉山さんに会うことを楽しみにしているお客も多い。「私がどんな思いで商品をつくっているか、それを伝えて初めて商品の本当の価値を理解していただけます」と杉山さん。だからこそ、杉山さんは現場主義を貫いている。こうした考えがあるからこそ、出張販売を「ライブ販売」と言い、自らをアーティストと名乗っている。

シャッターが目立つ商店街という厳しい立地にあり、企業規模もけっして大きくはない杉山フルーツだが、だからこそ、そこに強みがあると杉山さんは言う。

「商いに対する評価は、規模の大小や立地の良しあしで決まるものではありません。何より、お客さまから頼られ、信じられていることです。それが対価となって利潤になる。勤勉・正直・感謝を継続していると、必ず良いことがあります。スケールメリットよりもスモールメリット、これが私の商いです」と語る杉山さんは、今日も自店や全国の百貨店で、お客と向き合っている。

(商業界・笹井清範)

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