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まちの視点 理想の顧客を明らかに

イシカワラボでは、お客に寄り添って仕事やプライベートに自信が持てる装いを提案

ファッションのカジュアル化、インターネット通販の一般化など変化を続ける市場にあって、全国各地のファッション専門店の業績低下が著しい。とりわけ経営者の世代交代を機に従来の顧客が離れていく一方で、新規顧客の獲得に苦しむ店は少なくない。

しかし、例外もある。

東京から新幹線で約1時間、静岡県三島市にあるセレクトショップ「イシカワラボ」を営む石川英章さんは、婦人服店3代目だ。低迷する業績を打開するため、まず取り組んだのが、全国にある好調といわれている個店、セレクトショップおよそ20店舗を訪れ、話を聞きに行くことだった。 そこから三つの共通項が見えてきた。それは、「良いお客さまとお付き合いしている」「器(店の内装・器具など)にお金をかけている」「ブランド数が豊富」の三つだった。

繁盛店に共通する三つの共通項

第1の共通項「良いお客さま」を受け、自店にとっての〝理想の顧客〟を明確にした。約11万の三島市民のうち約5~6%を占める30~40代を基準に、一定の年収がある層をターゲットと設定。特に市内では欲しいものが買えず、横浜や東京まで買い物に行くような地元在住の経営者やその配偶者に向けて、コーディネートの楽しみを実感してもらえる品ぞろえへと変更した。

そのためにブランド数も増やした。現在は国内や海外で仕入れてきたものも含めて、約50ブランドを扱う。海外へ買い付けに行ったときは、現地での買い付けの様子などをSNSで発信して、お客のワクワク感を引き出す工夫も行っている。

内装は2014年に改装、その際に店舗名も現店名へと変更した。

「お年を召した先代時代のお客さまが気兼ねなく買い物できるようにしました。フィッティングスペースを店の中央に設けることで、間仕切りする壁をつくり、買い物をしている様子が外からあまり見えないようになっています」と石川さん。新しい風を入れながらも、今までのお客も大切にしている。

こうした取り組みの結果、想定した〝理想の顧客〟が集まる店になった。現在の客層は30~50代で、地元の経営者層の奥さまや静岡県内で会社経営をしている女性が中心だ。

県内はもちろん、東京やその他の地方からも店のうわさを聞きつけ来店するという。中心顧客は100人程度で、そのほとんどが年間で30万~50万円くらい購入されるという。

ギブ・ギブ・ギブの精神

顧客の多くは妻・ひとみさんの強みであるコーディネート力を信頼して来ている。

「とにかく『コーディネートが分からない』という方が多いですね。体型も変わってきて、若い頃のようなブランドひとそろえのコーディネートも恥ずかしい、そこでブランドに頼らず、そのお客さまの好みや要望に合う提案をしています」

ある地方在住の女性医師が店のうわさを聞きつけ来店し、ひとみさんに接客・コーディネート提案されると、とても気に入った様子で大満足で帰られたという。たとえ地方であっても、いや地方だからこそ、一流の店をつくれば一流のお客たちが集まってくる。それは地元客だけでなく、全国から集まってくるということだ。

「ターゲットの存在が分かったのであれば、あとは行動あるのみ。まずはお客さまの役に立てることをギブ・ギブ・ギブの精神で実行しました。数字はバロメーターなので、後から表れてくるものなのです」

先代は8割が委託で、利益を重視した売れ筋を品ぞろえしていたそうだが、石川さんはお客が欲しいと思うものを、しかも買い取りで仕入れた。役に立ちたいという思いと、自信と覚悟を持って仕入れてきただけあって、商品のプロパー消化率は80%を超える。シーズン消化率はほぼ100%という驚異的な数値を叩き出している。

自店の顧客は誰か?その顧客はどのようなニーズを持っているのか? こうした商売の基本を徹底すれば、そこに活路がある。

(商業界・笹井清範)

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