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こうしてヒット商品は生まれた! 住まいのおたすけ隊

一般家庭の工事に向かう「住まいのおたすけ隊」。行列を組み、片足を挙げて決めポーズをとっているのは、皆同社の社員だ

電気や空調などの設備工事を主事業とする島根電工。長年、公共事業やゼネコンの大型工事をメインに請け負ってきたが、公共事業の減少を受けて、一般家庭の小口工事に着目。コンセント1個の施工から請け負う「住まいのおたすけ隊」を事業化し、売上を順調に伸ばしている。今では同事業のフランチャイズにも取り組み、同業者の活力を取り戻そうと奮闘している。

公共事業中心の建設業から一般家庭相手のサービス業へ

〝助けたい、助けたい、あなたの住まいを助けたい〟そう口ずさみながら、作業着姿の若者たちが一列になって行進する――。これは島根県を中心とするエリアで放映されていた、島根電工「住まいのおたすけ隊」のテレビCMの一コマだ。演じているのは同社の社員。実際に彼らが、電球の交換、コンセントの付け替え、水道蛇口の交換など、住まいの〝困った〟を助ける工事を行っている。

これは同社が平成13年にスタートさせたサービスだ。当初は認知度が低く依頼も少なかったが、18年にCMを流し始めてからは急速に受注を伸ばす。依頼の7割が5万円以下の小口工事にもかかわらず、現在では売上が年間70億円を超え、会社の総売上の45%を占めるまでになっている。

昭和31年に設立した同社は、もともと公共事業やゼネコンの大型工事を中心に請け負ってきた。ところが、21世紀を迎えたころから公共事業が激減する。ダンピングが始まり、工事を受注しても赤字になるケースが出てきた。

「このまま大型工事に依存していたら、当社の将来はないと危機感を覚えました。そこで着目したのが、一般家庭の小口工事です。単価は低くても、間にほかの企業が入らないので、確実に利益が見込めます。また、最初はコンセント1個の取り付けでも、仕事を気に入ってもらえば、『ついでにここもやってほしい』『今度リフォームするときもよろしく』『友だちにも紹介したい』といった具合に、仕事が増えていく可能性があると考えたんです」と同社社長の荒木恭司さんは発案したきっかけを説明する。

しかし、社内の反応は芳しくなかった。同社は大型工事の請負で県下ナンバーワンまで上り詰めた会社だけに、家庭相手の小口工事などやっていられないと考える古株社員が少なからずいたのだ。役員会議では逆風にさらされ、意見は平行線をたどった。

「まさに孤立無援の状況でした。このままでは倒産も時間の問題でしたので、水面下では一般家庭向けの営業部隊をつくり、具体的な活動を開始しました」

認知度の低さから芳しくなかった客の反応

こうして新事業に乗り出した同社だったが、営業先での反応は芳しいものではなかった。「コンセント1個の取り付けから承ります」と説明しても、「お宅は大きなビルとかの工事をやる会社でしょ? そんなところにはとても頼めない」というのだ。そのため1年目の売上は、1億6000万円程度にとどまった。

荒木さんは世間での会社のイメージを変えようと、テレビCMを流すことにした。それが冒頭のものだ。社員によるコミカルで親しみやすいCMの効果で、「島根電工=住まいのおたすけ隊」というイメージが広く定着。次々と依頼が舞い込むようになった。

「依頼が増えるに従い、営業担当者の残業も増えていきました。当社はシステムの関係で、帰社しないと見積もりが出せないんです。それでは社員の負担が大きく、何よりお客さまを待たせることになってしまう。そこで知り合いのIT企業に頼んで、現地で見積もりから請求書の発注までできる積算用の端末をつくってもらい、全員に携帯させることにしたんです」

この現地見積もりツール「サットくん」により、作業が大幅に効率化された。また、在庫管理にも活用し、実に7割の在庫削減にも成功した。

フランチャイズに乗り出し同業者にノウハウを提供

事業化して15年が経過し、今やリピート率90%を誇る「住まいのおたすけ隊」。その陰には、徹底した社員教育の実践がある。どんなに仕組みを整えても、社員が自ら考えて行動する風土をつくらなければ、結果にはつながらない。そのため同社では、新人から役員に至るまでさまざまな研修を実施している。中でも力を入れているのが「感動研修」だ。これは、一流ホテルの接客などを手本に、「どうしたら客を感動させられるか」を学ぶものだ。

「お客さまのニーズに応える仕事をすれば満足はしてもらえますが、それなら他社でもやっています。お客さまでさえ気付いていないニーズに気付き、それが提供できてはじめて感動させることができる。それがリピートにつながります。そこで当社では『期待を超える感動を』をスローガンに掲げ、常にそれが実践できるように、研修を行っているわけです」

近年、こうして築き上げたノウハウを活用し、フランチャイズにも乗り出している。フランチャイズというと、本部にコールセンターがあって、全国から入ってきた仕事の依頼を加盟店に振り分けるという形態が一般的だ。しかし同社の場合、仕事のノウハウの提供やサポートは行うが、加盟した会社とその地域の顧客は今まで通りのやりとりを続けてもらう形をとっている。現在、加盟する会社は全国で40社近くあり、同社のようなサービスを実践して業績を伸ばし始めている。

荒木さんに今後のビジョンについて伺うと、「将来はわからないが、社員を大切にし育てることだけは変わりません」と笑った。

会社データ

社名:島根電工株式会社

所在地:島根県松江市東本町5-63

電話:0852-26-2833

HP:http://www.sumaino-otasuketai.com

代表者:荒木恭司 代表取締役社長

設立:昭和31年

従業員:350人

※月刊石垣2016年9月号に掲載された記事です。

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