迷ったら、どうするか? 故・舩井幸雄氏は「迷ったらやめろ」というのが基本でした。
ある社員が「実は結婚したい人がいるんです。会っていただけませんか?」と相談したときに、「迷っているなら、やめな!」と言ったというエピソードがあります。どれほどラブラブで結婚したとしても、3~4年もたてば、互いの予想外の部分を知り、後悔の気持ちが芽生えてくるのが普通です。人に何を言われようと私は命をかけて彼女と結婚したいという強い思いがない限り、誰が太鼓判を押しても無駄。ですから、「最初から少しでも迷う心があるのなら、やめなさい」とアドバイスしたわけです。
確かに一理あります。しかし私はそうとばかりは言えないと、この歳になって思うようになりました。年を重ねれば重ねるほど、「何かをやりたい」という気持ちは小さくなります。そんななかでフツフツとやりたいことへの気持ちが湧いてきたとしたら、それは素晴らしい出来事だと思うのです。だから私は、中年以上の人には「迷ったら、すぐにやれ」と言います。「自分の人生で一番若いときは今なのです。もう先はない。悩んでいる間にも年をとるのですから、すぐにやるしかない」というのが私の意見です。
私は3年前に船井総研を辞めました。その後の仕事をやりたかったので、余力を残して退社しようと思案した末、60歳で退社の申し入れをしたのです。そのときは、会長に強く止められ、会社に留まりましたが、65歳を譲れない線として退きました。
当時私は、船井総研の代表者ではなく、私個人を本当に必要としている方のためだけに、コンサルタントとして生きていきたいと思っていました。ただ、船井総研の代表者として、船井の指導先を持っていくようなことだけはしたくありませんでした。だから、指導先に自分から連絡をしないと決め、退職のあいさつの手紙も出さなかったのです。葉書や手紙というのは、「あなたとお付き合いしたい」という誘い水だと思ったからです。
胆(はら)を決めたものの、内心はかなりナーバスになっていました。東北復興支援のボランティアではじめた、コンサルティングだけでも毎月物入りです。上場会社の代表者でなくなった自分を必要としている人が、どれだけいるだろうか……。座右の銘である〝心柱(しんばしら)制振〟を何度も思い返した時期でした。
退社後、私を探して連絡をくださった方が予想以上に多く、講演とコンサルティングで多忙な日々を過ごしています。あのとき、胆を決め、歯を食いしばって自分らしい辞め方をしたことが、今の私の自信となっているのかもしれません。
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