こうしてヒット商品は生まれた! 『あしたのおやつ』シリーズ

おやつやおつまみ、サラダのトッピングにも利用できる。真空フライ製法により、油で揚げているのに手がべとべとせず、サクッと軽い食感が楽しめる。各500円(税別)

昭和51年に運送業で創業後、農業、食品加工業へと事業を拡大してきたオキス。同社が平成28年に発売した野菜やフルーツのヘルシースナック「あしたのおやつ」が、素材の豊かな味わいと、洗練されたパッケージデザインで注目され、常に品薄状態の好調な売れ行きを続けている。同商品が誕生するまでの長い道のりを追う。

運送コスト削減がきっかけで始まった農業事業

「鹿児島県には、鹿児島市のある薩摩半島と、大隅半島という大きな2つの半島があります。当社のある鹿屋(かのや)市は大隅半島のほぼ中央にあり、桜島の噴火活動で堆積した肥沃(ひよく)な黒土のおかげで、サツマイモ、落花生、ゴボウ、ニンジンなどさまざまな農産物が栽培されてきました。そんな食品本来の甘味、苦味、酸味をそのまま味わってもらいたくて、皮付きのままチップスにしたのが『あしたのおやつ』です」と開発の発端を説明するのは、製造元のオキス社長の岡本孝志さん。

同商品は、砂糖や食塩などの調味料を一切使わず、真空フライ製法により素材の旨味をギュッと凝縮したスナック菓子だ。平成28年に発売するや、大手百貨店やJALのファーストクラスなどに販路を獲得していく。さらに、食品パッケージには珍しいシンプルなデザインが、ドイツの権威あるデザイン大賞や日本パッケージデザイン大賞銅賞、鹿児島県特産品協会理事長賞などを次々に受賞し、売れ行きに拍車を掛けている。

同社はもともと運送会社として創業し、鹿児島市を拠点に大隅半島方面へ家電製品の配送を行っていた。しかし、海を渡るにせよ、鹿児島湾に沿って大回りするにせよ、時間と経費の掛かる赤字路線だったため、帰路は周辺農家から野菜を買い、それを積んで鹿児島に戻るようになる。やがてそれを東京の市場に出荷するようになり、18年に農業法人として同社を設立し、農業分野に参入した。

「とはいえ、東京近郊の野菜と比べると、運賃が掛かる分割高になってしまいます。そこで運送コストを減らすために、積み荷を軽くしようと思い付いたのが野菜の乾燥です。野菜の90%は水分だから、乾燥させれば重量が10分の1になり、かさも減って一石二鳥です」

自社商品の強みは「シンプル イズ ベスト」

メリットは軽さだけではない。乾燥すると食品のうま味が凝縮され、独特の風味が生まれる。常温で長期保存ができるから、必要な量だけ使えて便利だ。しかも、捨てる部分がないのでごみも出ない。そこで早速加工工場をつくり、乾燥野菜の製造事業に乗り出した。当初は年間稼働率も悪く、赤字続きだったが、農家を回って売り物にならないタダ同然の野菜を集め、試行錯誤しながら商品開発に取り組んだ。そうしてできたものを広く認知してもらおうと、東京の展示会に出展を試みた。

「会場に行ったら、すぐに帰りたくなりました。他社の商品は、パッケージもネーミングも洗練されているのに比べ、当社のはただ乾燥野菜を袋詰めしただけで、ひどく見劣りして見えました。やはり商品は、見た瞬間のイメージが大事だってことを思い知りました」

しかし、見た目だけで売れるわけではないことも分かってきた。あらためて自社商品の強みを考えてみたとき、浮かんだ答えが「シンプル イズ ベスト」だった。大隅半島の自然の恵みに育まれた、野菜それぞれの風味を引き出すには、変に手を加えないのが一番と思い至る。そこから、主に相手先ブランドによる生産(OEM)の商品としてゴボウ、大根、ニンジン、ゴーヤ、シイタケなどの乾燥野菜やパウダーを開発する一方、自社ブランドとして炊き込みご飯の素、みそ汁の具、煮物の素など、消費者が使いやすいようにセットしたものを次々と商品化していった。その流れを受けて、大隅加工技術研究センターと共同開発したのが「あしたのおやつ」シリーズだ。

自社ブランドとしてあえて高級路線で売る

「新商品を世に出すには、それにまつわるストーリーがあった方がいい。そこでかつてサツマイモの加工工場が立ち並んでいた『でん粉銀座』通りの活気を取り戻すことをコンセプトに、素材の甘味を生かしたサツマイモチップスをつくることにしたんです」

こうしてサツマイモにゴボウパウダーを練り込んだり、紅茶とショウガで風味付けした「さつまいもスティック」が完成した。続いて、真空状態の中で低温の油で揚げる真空フライという技術を使い、軽い食感で食べられる「ベジタブルチップス」、国産フルーツの甘味と酸味を凝縮した「フルーツチップス」などを生み出した。

「当初、とあるコンビニから引き合いが来たんですが、それには売価を200円以下に抑える必要がありました。できれば高級路線で売りたかったので、パッケージをリニューアルして、展示会で売り込みをかけました。すると大手百貨店やJALなどから『500円で売りましょう』と商談が成立したんです」

一般的に食品パッケージには目立つ色彩がよく使われるが、同商品はその逆を行く。地元のデザイナーと相談して、素材に何も加えないという商品イメージに合わせて白地にし、光沢をつけて高級感を演出した。シンプルなデザインがかえって消費者の目を引く効果をもたらし売れ行きに直結した。

「すぐに売り切れてしまうので、今では製造の半分を機械化して増産していますが、むやみに販路を広げずに高級路線で売っていきたいと考えています。この商品のおかげで世間の認知も広がってきましたし、今後さらに地元の食品を活用して、『健康的に間食しましょう』をコンセプトにしたヘルシースナックを開発していきます」

現在では、自社農園とともに協力農家のネットワークを管理して、食品の安定供給体制を構築している同社。次はどんな〝おやつ〟が登場するのか、目が離せない。

会社データ

社名:株式会社オキス

住所:鹿児島県鹿屋市上高隅町1910-3

電話:0994-45-2508

代表者:岡本孝志 代表取締役

設立:平成18年

資本金:1000万円

従業員:22人

※月刊石垣2017年6月号に掲載された記事です。

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