地域企業と連携した子育てと仕事の両立支援
特定非営利活動法人 どんぐりの会 理事長 木﨑 芙美
なぜ?どうして?から始める
当社の事業は、飛び出し注意喚起看板の設置・維持管理(➀)と広域対応型学童保育(➁)です。➀はまちで見かけた飛び出し注意喚起看板が破損しており、なぜ、このようになっているのかを疑問に思ったことから始まりました。追求すると、その看板の設置者が主に学校のPTAであること、PTAの役員任期が1年で、引き継ぎができていないことが原因であると分かりました。さらに設置は道路占用者に無許可で行われていることが多いことも判明しました。
➁のきっかけは、息子が小学校に入学したときに放課後児童クラブ(学童保育)はなぜ、こんなに条件が悪いのか?と愕然とさせられたからです。津市では、9割の学童保育が保護者会により運営されています。先生の給与計算や行政への補助金申請など、保護者が全て行っている現状に驚き、働く親のための学童保育なのになぜ?と疑問に感じました。
私と同じ苦労をさせたくない
息子が3歳の時に離婚し、たくさんの苦労をしました。息子を出産する前に就いていた介護の仕事に就きたかったのですが、働く時間を平日の昼間に限定すると、介護の世界では正社員にはなれませんでした。私は、子どもがいると就きたい仕事に就けず、限られた条件で仕事を決めないといけない現状に納得がいかず、また、同じ思いをしている人がたくさんいるのではないかと思い、何とかしたい一心で起業する決意をしました。
私が掲げたビジョンは、子育てしながら働く全ての親のために働きづらい環境を解決し、安心して生き生き働き続けられる社会です。そのために、まず、土日祝日、夜間も預けられる学童保育を立ち上げました。しかし、市では一学校区で一学童にしか補助金が出ず、資金計画が上手くできませんでした。そこで、①の事業を思い付いたのです。➀の事業で得た収益で、➁の事業での赤字を補填するという仕組みです。そして企業の従業員へ還元することで、企業にもメリットがあり、地域、学校、子どもたち、働く親、みんなが良くなることができる、そんな仕組みが出来上がりました。
しかし当初は、企業スポンサーも、学童保育の利用者も集まらない状況に焦りました。看板のスポンサー集めは、諦めずに常に営業の日々でした。営業の仕方を工夫すると、次第にたくさんの企業の協力を得ることができました。また学童保育の利用希望者には、体験イベントを行い、とにかく募集広告をたくさん掲載しました。結果、今では定員を超す申し込みをいただき盛況です。
この3年間、休まず働いて頑張ってこられたのは、利用してくださる保護者から、「本当に助かっています」との感謝の声を貰えることと、子どもたちが「楽しい!」と言って通ってくれるからです。今後は子育てをトータルにサポートできる事業を展開する予定です。子育てのために仕事を諦める、仕事のために子どもを諦めることのない社会づくりを目指します。
法人データ
法人名:特定非営利活動法人 どんぐりの会
所在地:三重県津市
創業:平成25年
事業概要:飛び出し注意喚起看板設置維持管理事業 広域対応型学童保育どんぐりの家事業
HP:http://npo-dongurinokai.org/
※月刊石垣2016年9月号に掲載された記事です。
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