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テーマ別企業事例 今こそ、新たな需要を掘り起こせ!

需要や市場の変化を受け、業績が思うように伸びずに悩んでいる企業も多い。しかし、ただ手をこまねいていては、業績の回復は望めない。そこで、独自の技術や戦略により新たな需要を掘り起こすことで、業績を回復させた企業の奮闘をリポートする。ヒントは、ここにある!

事例1 〝奈良発〟の自然派化粧品で地域の雇用と潜在市場を切り開く

クレコス(奈良県奈良市)

日本人の肌に合った安全・安心な自然派化粧品をつくりたい―。そんな熱い思いを胸にスタートしたクレコス。厳選した国産の天然素材を使って、独自のブランドを次々と創出する。リピーターを増やすと同時に、各地の農業者や福祉施設などと連携して、地域の活性化や雇用創出などにも一役買っている。

無農薬・有機農法のヘチマや米ぬかを原料とする同社のメインブランド「クレコス」

原料に不信感を抱いたことがきっかけで起業

日本に「オーガニックコスメ(自然派化粧品)」という言葉が登場したのは、平成13年ころのことである。20世紀に世界中に普及した石油由来の原料ではなく、有機農法などによる原料を使って化粧品をつくっていこうという流れから生まれたものだ。しかし、その10年以上も前から、日本の伝統的な天然素材を使用した化粧品を、世に送り出してきたのがクレコスである。その根底には、「毎日食事をするように、化粧品も毎日使い続ける。だからこそ肌に自然の恵みを真っすぐ届けたい」という強い思いがあった。柱となるブランドは「クレコス」と「QUON(クオン)」の2つ。「クレコス」は、国産の有機農法によるヘチマや米ぬかなどを原料としたもので、リッチな使用感とエイジングケアを重視したシリーズである。「QUON」は、なるべく人間の手を加えない自然農法による茶を使用し、化学成分完全フリーを実現したものだ。それらはオーガニックに対する世間の認識が広がるにつれて注目されるようになり、今では材料と品質にこだわりを持つ女性に支持され、多くのリピーターを獲得している。

同社を立ち上げたのは、社長の暮部恵子さんだ。もとは専業主婦だったが、子どもが小学生になって手が離れたころ、夫の親戚から誘われて化粧品の販売員を始めた。すると持ち前の明るさでみるみる売り上げを伸ばし、いつしかカリスマ販売員となる。ところが、次第に化粧品の品質に疑問を抱くようになった。

「当時、世界一安全な化粧品とうたっていたけれど、知り合いに原料を分析してもらったら、一般的によく使われている成分だということが分かりました。何だかガッカリしてしまって……。それなら自分の手で、娘に使わせたいと思える、安全で安心な化粧品をつくろうと思ったんです」

こうして起業を決意し、平成2年に同社の前身である「クレベコスメティックス」を創業した。

安全・安心な原料を求めて各地の農家を訪ね歩く

当初は素人だけに分からないことだらけだったが、自分たちなりに研究を重ねるうちに、日本人には国産の原料が合っていると考えるようになる。そうしていち早くヘチマや米ぬかに着目し、それらを化粧品の主原料にしようと、有機農法で作物をつくっている農家を訪ねた。

「最初はまったく相手にしてもらえませんでした。もとから付き合いや取引があったわけではないので、当然といえば当然だったんですが。それで収穫の時期に通って農作業を手伝うなどして、顔や名前を覚えてもらいました。2~3年ほど続けたころ、ようやく作物を分けてもらえるようになり、それをもとに商品開発を進めました」

めどが立った平成5年、クレコスを設立するとともに、本社を奈良市から大阪市へと移転した。

「最初に発売したのは『クレコス』の基礎化粧品です。商品には自信がありましたが、会社の知名度がありません。全国販売していくためには、『大阪市中央区』のネームバリューが必要と考えたんです」

その後も同社は新たな材料を求めて、静岡県のアロエベラや大豆の農家、奈良県の養蜂園、栃木県の酒造メーカーなど、各地の生産者と契約していく。それをもとに新商品を生み出していった。

世間でオーガニックコスメが注目されるようになると、雑誌の特集に取り上げられたり、東京の百貨店でも販売されるようになり、認知度が上がるにつれて売れ行きも伸びていった。

新ブランドの立ち上げを機に「奈良発」を前面に押し出す

22年、同社は経済産業省が推進する農商工連携事業に認定された。その事業の育成塾で、耕作放棄地を自然農法による大和茶で再生する活動をしている伊川健一さんと出会ったことが、同社に一つの転機をもたらす。奈良県北東部に位置する大和高原は古くから大和茶の産地として知られるが、現在では茶農家も高齢化し、耕作放棄地が増えていた。茶畑といえば、腰の高さに整然と刈られた茶の木が思い浮かぶが、耕作放棄地の茶は一切手が加わらないため、数mの高さまで成長して花や実も付ける。これは、「不耕起(耕さない)、不除草(除草しない)、不施肥(肥料を与えない)、無農薬(農薬を使わない)」を特徴とする自然農法そのものなのだ。有機物を肥料として作物に与える有機農法と違い、自然農法は自然の循環を大切にして作物の持つ力を最大限に生かす農法。伊川さんを通じてそこに可能性を感じたクレコスは、自然農法による大和茶を原材料とした新たなブランドを立ち上げようと決断した。そうして誕生したのが、天然成分100%で化学成分完全フリーの「QUON」である。QUONとは、「あることがいつまでも続くこと」という意味を持つ「久遠(くおん)」から付けられた名前だ。

23年、同ブランドの発売を機に、同社は再び奈良市に本社を移す。

「本社と工場が離れていて非効率だったこともありますが、もう『大阪市中央区』の名前に頼らずにやっていこうと決めました。これからは地方の時代。日本の文化が奈良から始まったように、日本の美しさも奈良から始まるという思いを込めて、『奈良発』を押し出していくことにしたんです。幸い奈良には大きな化粧品メーカーがないので、市や商工会議所などいろいろなところで取り上げてくれたことも、大きな助けになりました」

化粧品づくりを通じて社会貢献活動に乗り出す

同社は同シリーズの発売と並行して、「QUONプロジェクト」をスタートさせた。これは化粧品の開発・製造・販売を通じて、社会貢献活動を展開していこうというものだ。

例えば、自社化粧品に自然農法による大和茶を積極的に活用することで、耕作放棄地を再生しようとする伊川さんの活動をバックアップしている。また、障がいを持った人々に、化粧品づくりの一部を委託するという取り組みも始めた。具体的には、新潟市のNPO法人が運営している障がい者福祉作業所に、大和茶の茶葉や茶花の蒸留、茶実のオイルの圧搾などの作業を行ってもらっている。それを会社として適正な価格で仕入れることで、同所で働く人の賃金は数倍に増えている。そして、同所内におそらく日本初となる化粧品工場を設立し、新たな雇用の創出にも一役買っている。さらに日本の森林資源を守るため、奈良県内の森の木を同社の社員たちが切り倒し、その間伐材をパルプ化。それを県内の社会福祉法人に委託して、化粧品のパッケージをつくってもらう取り組みにも乗り出している。

こうした同社の農商工連携事業や農福連携事業はスムーズに機能しており、数少ない成功事例として、全国から講演の依頼が舞い込んでいる。講演は主に長男で副社長を務める暮部達夫さんが行っているが、その活動を通じて知り合った各地のメーカーからOEMの依頼が舞い込んでいるという。依頼を受けたOEMを請け負えば同社だけでなく、原材料を供給する各生産農家の売上増にもつながるという好循環に結び付いている。

「さまざまな人とつながり、支えてもらったことで、同業他社のひしめく業界で何とかやってくることができた」と語る暮部恵子さんは、今後の展望をこんな例えで話してくれた。

「『ハチドリのひとしずく』というお話があります。森が火事になって、動物たちがわれ先にと逃げ出す中、小さなハチドリが沢に行って水を口に含み、森にかけ続けるんです。動物たちは皆それを笑うんですが、ハチドリはこう言います。『私は私にできることをやっているだけ』って。クレコスもクレコスにできることをやり続けていれば、世の中の役に立つ日が来ると信じて、一歩先を行くものづくりをしていきたい」と柔和な笑顔で夢を語ってくれた。

会社データ

社名:株式会社クレコス

所在地:奈良県奈良市神殿町572-1

電話:0742-64-7272

HP:http://www.crecos.co.jp/

代表者:暮部恵子 代表取締役社長

従業員:18人(パート含む)

※月刊石垣2017年2月号に掲載された記事です。

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