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テーマ別企業事例 緊急特集 今度は本物!? ロシアビジネス最前線

事例2 独自の物流ネットワークを構築し、安全、確実に〝日本製〟を売る

センコン物流(宮城県仙台市)

昭和34年に東北地方での本田技研工業のバイクの保管配送業務をスタートさせたセンコン物流(旧仙台梱包運搬社)が、手堅く海外進出へと乗り出している。その先は、欧米やアジアではなくロシア。平成12年から始動し、ロシアの物流会社への出資や現地法人の設立など、少しずつ地歩を固めてきた。そして26年、極東地域から首都モスクワへ、日本の食品を中心に輸出拡大に打って出た。

平成23年にハバロフスクからウラジオストクに移転したセンコンロシア。市内に倉庫やアンテナショップを有し、商品の通関、在庫管理や販売代金の回収などの委託販売、倉庫事業を展開している

先細る国内の物流市場からロシアに活路を見出す

伊達家62万石の城下町から発展した宮城県仙台市の中心部にセンコン物流の本社はある。東北エリアを中心に全国26カ所の拠点を持ち、運送・倉庫業を全国規模で展開している。昭和34年、運送業務でスタートしたが、高度経済成長期にはオートバイやトラクターなどの農機具の搬送拠点として発展し、米どころ・宮城県の企業として、米の倉庫管理や配送にも注力している。食品から半導体、精密機械まで扱う製品は幅広く、運送事業、倉庫事業は順調に業績を伸ばしていった。だが、平成9年に社長に就任した久保田晴夫さんは、当時から危機感を持っていた。

「運送は軽油を大量に消費するだけに原油価格に大きく左右される事業です。ホンダ車のディーラー業にも着手しましたが、国内市場の先細りも感じて、就任当初から国外へ目を向けていました」と振り返る。アメリカや中国にはすでに日本の大手物流企業が進出しており、それならと発想を180度変えた先がロシアだ。

「学生時代にロシア語をかじりましてね。米ソ冷戦時代で、いつ戦争が起きてもおかしくないという状況から学んだわけですが、時を経てソ連からロシアに変わり、巨大なマーケットが急に近場にできたと思ったのです」

就任から3年後の12年、ウラジオストクに合弁会社を設立し、中古車の輸出事業を開始した。

「トラックは毎年買い替える必要があり、おのずと中古車が発生します。そのトラックをロシアビジネスの足掛かりにしたんです」

15年にはモスクワに事務所を設けて化粧品の輸出業務を、17年にはハバロフスクに現地法人「センコンロシア有限責任会社」を設立し、物流、委託販売、倉庫事業を展開してきた。

ロシアの物流企業と提携して食品・日用品を輸出する

22年、外務省がロシアの市場経済改革支援の一環としてロシアの主要都市に置く日本センターから、ロシア極東部の有力企業であるブラーゼル・グループ傘下の物流会社「VLロジスティクス社」を紹介された。同センターは日ロ双方の企業に対し、情報提供やコンサルティング、ビジネスマッチング支援に積極的に取り組んでいる。そこからの紹介という信頼性、ブラーゼルが所有するロシア全土にある流通網を活用できる将来性を見据え、翌年、出資比率15%に当たる約3600万円で業務提携の契約を締結する。日本からロシアへの安定的な物流網を確保し、日本の食料品の輸出販売を本格的に始めていった。

「ブラーゼルは約70の販売ネットワークを持っていて、そのうちのウラジオストクのスーパーマーケット『VLマート』で日本の食料品や日用品、雑貨を販売することになりました。さらにウラジオストク駅に隣接したアンテナショップ『センコン』では、日本製品のサンプル展示や試食会の開催なども行い、手応えを感じました」(久保田さん)

同社の輸出ルートは、韓国経由ウラジオストクの定期便が週1回ある鳥取県の境港を基点とする。生鮮食品は空路を使い、鮮度と安定供給を図っていく。

日本の生鮮食品はモスクワでも人気を得る

ロシアビジネス拡大のためには、同社が鳥取県のロシアビジネスサポートシステム設置運営業務を受託した点も大きい。輸出手配やロシアでの国内輸送、店頭販売まで対応し、ウラジオストク市内で鳥取ブランド展を開催する。その実績から中海・宍道湖・大山圏域市長会や秋田県など各自治体のロシアビジネス支援業務のオファーが相次いだ。VLロジスティクス社との共同ビジネスで「日本食プロジェクト」を展開し、スーパー内で日本食の試食会や料理教室を開くなど、積極的に日本食をアピールし、これが功を奏する。

「当初はインスタント食品や加工品、調味料など賞味期限の長い商品が中心でしたが、現地では日本の食料品は高くても安心と評価が高く、特に富裕層に人気がありました。そうした期待に応えられるように、空輸は船の20〜30倍に輸送コストが跳ね上がりますが、鮮度が命の鮮魚や果物の場合は使っています」。そして、26年12月にモスクワへ向け、初めて日本の食料品輸出に踏み切る。野菜と果物約1・2tを成田空港からモスクワ空港着で高級百貨店などに販売し、完売する。「モスクワの人口はウラジオストクの約20倍です。富裕層も多く、日本の食品の需要も大きいと考えました」

読みは当たり、25年3月期3300万円の輸出額は翌年3月期には8000万円に増加した。

「ロシアは欧米流のビジネスマナーが通用しない、通関に時間がかかる、法律の解釈が部署や担当者によって違うことさえ多々あります。確実に商品を届けるために現地法人の設立と信頼できる販路の構築は必須です。リスクは今もありますが、やはり巨大マーケットは魅力です。今後はさらにモスクワを中心にロシア西部にウエートを置き、日本の食料品などの輸出拡大を目指します」と、センコン物流の大躍進はさらに加速する。

会社データ

社名:センコン物流株式会社

所在地:宮城県仙台市青葉区中央4丁目10番3号 仙台キャピタルタワー3階

電話:022-217-6841

HP:http://www.senkon.co.jp/

代表者:久保田晴夫 代表取締役社長

従業員:282名(連結413名)

※月刊石垣2016年12月号に掲載された記事です。

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