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事例1 “まちの電気屋”として、IoT家電で地域の高齢者の生活を見守りたい

K-DIC(富山県富山市)

店内の半分を占めるIoTラボは、モデルルームをイメージして木材がふんだんに使われている

家電販売店のK-DIC(ケィ・ディック)は、“まちの電気屋さん”として、家電を販売するだけでなく、長年にわたり地元に根差したきめ細かなサービスで地域住民の生活をサポートしている。周辺には高齢者が多いことから、店舗に高齢者向けIoT家電を集めたショールームを設置し、新たな展開を始めた。高齢者とIoT、ミスマッチのようにも思えるが、そこにはどんな狙いがあるのか。

ショールームの設置でスマート家電の普及を図る

「○○○、掃除して」。AI(人工知能)スピーカーに話し掛けると、床に置かれた充電器からロボット掃除機が動き出し、床の掃除を始めた。ここは、IoT家電を集めたK-DICのショールーム「IoTラボ」で、一昨年12月に約100坪の売り場の半分をモデルルームのように改装した。このIoTラボは浴室や洗面所、トイレ、リビングルーム、シアタールーム、キッチンに分かれており、それぞれの空間に合ったIoT家電が設置されている。

「富山商工会議所の支援を受けて、中小企業庁の『ものづくり補助金(革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金)』に採択されたので思い切って改装しました。従来の商品展示方法では商品のワクワク感が伝わらない。モデルルームのようにすることで、このように使えばこんなに便利で生活が変わるんだよということをお見せしたかったんです」と、K-DIC代表取締役社長の黒田保光さんは言う。

IoT家電(スマート家電とも呼ばれる)とはインターネットにつながった家電のことで、家の電気製品を外出先から遠隔操作したり、AIスピーカーとつなげて音声で操作したりできる。さらには、稼働状況などのデータを分析し、機械自らが持ち主にとってさらに使いやすくなっていくなどの働きもある。同社ではこれらのIoT家電から、購入者が必要とする製品を組み合わせ、セッティングやインターネットへの接続、設置作業も含めたセットで販売している。

声だけの操作だからこそ高齢者に向いている

「このIoTラボのテーマは“高齢者に特化したIoT製品の体感型施設”です。私どものお客さまの中心は高齢者なので、その方たちにとって役に立つ製品、使い方をこのラボで分かりやすくご提案したいと思っています。IoT家電とかAIスピーカーとかいうと、若者向けの先端技術というイメージがありますが、実際には、IoT家電は高齢者に向いているのです」と黒田さんは言う。

家電製品の多くはリモコンで操作できるが、機器ごとにリモコンが別々で、どこに置いたか分からなくなってしまうことや、高齢者には操作が難しいこともある。しかしIoT家電ならば、掃除をするのも部屋の電気をつけるのも、テレビのチャンネルを変えるのも、すべて声だけで操作できる。「ですから、IoT家電こそ高齢者向けの製品といえるのです」と黒田さんは力説する。

同社は、明治25(1892)年ごろに金物屋として創業した。1965年には電機部を創設して電気製品の販売も始め、そのうちにそれが商売のメインとなっていった。四代目で社長の黒田さんが高齢者向けのIoT家電に注力するようになったのは、同社の理念と商売方法に理由がある。

「売るものが変わっても大事にしてきたのが地域密着です。まちの電気屋の基本は御用聞きで、お客さまの家を一軒一軒回って何が必要とされているかを聞き、それをお届けすることです。頼まれれば電球やリモコンの電池の交換だけでも訪問しますし、ときには電気以外のことも相談されます。いわば、お困りごとの解決ですね。そこで分かるのが、地域住民の高齢化だけでなく、お年寄りの一人暮らしが多いこと。私たちが頻繁に訪問できればいいのですが、人手不足で難しい。なんとかできないかと考えていたときに出てきたのがIoT家電だったんです」

お年寄りが一人でも住めるまちをつくる

「IoTをうまく使うと、一人暮らしの人をみんなで見てあげることができるようになります」と黒田さん。例えば、離れて暮らす子どもがスマホで両親の家の様子を知ることができ、離れたところから家の暖房を入れることもできる。また、便座に座ることで体重から体温、血圧、尿酸値まで測ることができるトイレもあり、そのデータをクラウドに上げ、医療機関が見られるようにすれば、問題があった場合にすぐ駆けつけられるようになるという。

「さらに、冷蔵庫の中にカメラを入れ、食材がなくなったら自動的にスーパーから配達される仕組みを提案しています。これがあれば、買い物に行けないお年寄りでも食事に困ることはありません。また、電気製品に不具合が出ると私どもにエラーコードが届くので、すぐに必要な部品を持って修理に行くことができます。つまり一人で住んでいるお年寄りを外から見守れるような仕組みが、IoTならできるんです。そのためには介護業者や病院、スーパーといった周りの協力者づくりも欠かせません」 さらに同社では、介護保険を利用すれば負担額が1割となる介護用品のレンタルや、社員の介護資格取得も進めている。「IoTは単なる手段で、その目的は高齢者が一人でも住めるまちをつくることです。地域の人たちの困りごとを解決していくのが“まちの電気屋”の仕事だと考えていますから」と、最後に黒田さんは笑顔で締めくくった。

家庭内でのIoT家電の普及はまだまだだが、高齢者向けの利便性が広く認知されれば、この分野でのIoTの大きな広がりが見込まれるだろう。

会社データ

社名:株式会社ケィ・ディック

所在地:富山県富山市西田地方町2-12-3

電話:076-425-8650

HP:http://www.k-dic.com/

代表者:黒田保光 代表取締役社長

従業員:14人(グループ合計)

※月刊石垣2019年4月号に掲載された記事です。

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