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テーマ別誌上セミナー この不調は足のせい!? 見落としていた足の健康

立ったり、歩いたり、走ったり、跳ねたり……。私たちが意のままに動けるのは、「足」のおかげである。ところが、常に体重を支え酷使されながらも、健気に働く足に対して、無頓着な人が少なくない。単に動くというだけでなく、全身のバランスや健康にも影響を及ぼす足の役割と重要性について、今回あらためて考えてみたい。

監修 桑原 靖(くわはら・やすし)

足の診療所院長

くわはら・やすし 1978年生まれ。埼玉医科大学卒業後、同大形成外科に勤務。足に対する悩みを持つ人が多いにもかかわらず、足を専門に診る医療機関がほとんどないことに疑問を持ち、2013年、東京・表参道に足の変形や痛みに特化した日本初の足専門のクリニック「足の診療所」を開設。整形外科、血管外科、皮膚科などの専門医によるチーム医療を実践し、歩き方や靴の選び方など足のケアも指導。下肢救済・足病学会評議員を務める。

約70%の人が足の骨格にゆがみあり!?

人間工学上、最大の傑作であり、そしてまた最高の芸術作品である――。かの天才、レオナルド・ダ・ヴィンチにそう言わしめた「足」。二足歩行をする人間にとって土台となる部位であり、さまざまな役割を果たしていますが、普段あまり関心を持っていない人が多いのではないでしょうか。

足とは、くるぶしから下の部分を指します。人体の骨のおよそ4分の1に当たる56個(両足)の骨で構成され、関節によって可動性を持ち、それぞれが靭帯(じんたい)や筋肉、腱などで支えられています。足の骨格の大きな特徴は、アーチ構造を形成していること。かかと、親指の付け根、小指の付け根を結ぶ3つのラインがなだらかなアーチを成し、体重を支えて全身のバランスを保つとともに、地面からの衝撃を吸収して、足首や膝、腰などへの負担をやわらげるクッションの役割を果たしています。これにより、立つ、歩く、跳ぶ、上る……といった複雑な動きが自在にこなせるわけです。

さらに足は、血液を心臓に戻すという働きも担っています。足は最も心臓から離れた場所にあるため、送り出した血液を心臓のポンプだけで回収するのは大変な作業になります。そこで足を動かし、ふくらはぎや太ももの筋肉を伸縮させることでポンプの代わりを務めているのです。これが「足は第二の心臓」と呼ばれるゆえんです。

このように足は大変機能的につくられていますが、足の骨格は遺伝要素が大きく、親が扁平(へんぺい)足や外反母趾(ぼし)だと子もそうなりやすい傾向にあります。実際、足の骨格のゆがみは日本人の約70%に見られるとされ、そこへ合わない靴、悪い姿勢、運動不足などの生活習慣が加わると、さまざまなトラブルを招くおそれがあります。

足のトラブルは自然に治らない

足のトラブルは、タコや巻き爪など形成外科領域、外反母趾やハンマートゥ(足指の変形)など整形外科領域、むくみや静脈瘤(りゅう)(血管のこぶ)など血管外科領域、水虫やうおのめなどの皮膚科領域と多岐にわたります。自分の足を見れば素人でも異変に気付くものが多いですが、日本人の場合、痛みが出なければトラブルと認識しないケースがよくあります。日常生活に大きな支障はないかもしれませんが、放っておいて自然に治るものはほとんどありません。

扁平足も立派なトラブルです。足の骨格自体がゆがんでいるため、常にそれを補正しようと足首、膝、股関節、腰など全身の関節にしわ寄せがいき、O脚やX脚、猫背、肩こりや腰痛、頭痛といった不調を引き起こしやすくなります。中でも特に支障が出やすいのは膝です。もし膝に痛みや違和感があり、整形外科を受診しても異常が見つからない場合は、扁平足など足の骨格のゆがみが原因とみてほぼ間違いありません。

また、足のトラブルのせいでポンプの働きが低下し、全身の血流が悪くなることもあります。そうなると新陳代謝が低下して疲労が蓄積したり、肌荒れや冷え性を招いたり、酸素の取り込みが減って脳や細胞の機能が衰えるなどのリスクが高くなります。

そして最も怖いのは、生活習慣病との合併症です。例えば、足のトラブルを抱える人が動脈硬化になった場合、さらに血液循環が悪くなり、重症化すると足に潰瘍(かいよう)ができて、やがて組織が壊死(えし)します。糖尿病を発症した場合は、症状が進むと合併症である末梢神経障害で感覚が鈍くなるため、靴擦れや巻き爪などで傷ができても気付かず、感染を起こしやすくなります。どちらも最悪の場合、足を切断せざるを得ない状況に陥ってしまいます。

チェック&ケアで足の耐用年数をのばそう

こうしてみると、足の健康を保つことは、心身の健康にとっても欠かせない条件といえます。そこでまずは、自分の足をよく見るクセをつけましょう。痛みがあるときはもちろん、痛みがなくても変形や変色、かゆみや不快感、むくみや疲れなど、気になる点を普段から把握しておき、症状が続くようなら一度、専門医を受診してみるといいでしょう。

日々のセルフケアも大変効果があります。真っ先に気に掛けてほしいのは、靴です。毎日履いている靴が、自分の足にフィットしているかをあらためてチェックしてみてください。サイズが合わないことはもちろん、ソール(靴底)がやわらか過ぎたり、かかとがすぐに脱げてしまうような靴はNGです。新調するときは必ず試し履きをし、少し歩いてみましょう。女性の場合、いつも高いヒールの靴ばかりを履いていると、アキレス腱が常に縮んだ状態となり、かかとの痛みを招いたり、前に重心が傾いて足指に変形をきたすおそれがあります。そこで、オフィス内や普段の生活では低いヒール靴を基本として、必要なときだけ高いヒールに履き替えることをおすすめします。

扁平足や外反母趾がある人、また靴の裏の減り方が左右非対称の人は、特に注意が必要です。すでに足の骨格がゆがみ、正しい姿勢で立てていない可能性があります。この場合はインソール(中敷き)を利用し、本来のアーチ構造をサポートしましょう。まずは市販のインソールでかかとや土踏まず部分が硬いものを使用して、症状が改善されなければ医療機関を受診するようにしましょう。

靴を脱いでいる時間は、その日の足の疲れをほぐしましょう。ストレッチをしたり、むくみがあるときは軽くマッサージすると血流が促されてスッキリします。ぬるめのお風呂にゆったりとつかって全身を温めるのも、疲労回復に役立ちます。

足は〝消耗品〟ですが、靴、姿勢、歩き方、日々のケアを心掛けることで、耐用年数をのばすことができます。これを機にもっと自分の足をいたわって、よりアクティブな人生を維持してください。

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