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テーマ別企業事例 地域の食材を生かせ 農業・水産業との連携戦略

事例2 地域の隠れた食品を発掘し独自ルートで域外に届ける

佐藤食品株式会社(福岡県行橋市)

平成5年に完成した本社と定温物流センター。定温物流というのは、商品に合わせた温度を維持し、そのままで輸送できる仕組みのこと

創業以来、一貫して食品卸売業を営む佐藤食品は自社の物流システムを生かしてメーカーや生産者に代わって営業代行もしている。その一つがインターネット通販の「九州グルメアドベンチャー」だ。

地元メーカーと西日本全域をつなぐ

「もともとは、私の父親が昭和28年に、かまぼこなどの魚肉練製品、海産物の卸売業を手掛けたのが始まりです。以来、60年余にわたって、ここ行橋(ゆくはし)を本拠に食品卸売業を営んでいます。九州の地場企業として、より優れた流通、物流体制を切り開いてきたという自負はあります」

そう胸を張るのは、社長の佐藤政治さん。扱う商品は、チルド製品を主体とした生鮮品、塩干(えんかん)物、米穀炊飯品、地域特産品などが主だ。九州を中心に、西日本エリアのスーパーマーケットや百貨店を取引先に持ち、365日、鮮度の高い商品を販売・配送する総合食品流通業者である。グループ全体としての売上は、平成25年度が270億円、26年度が予測で282億円と順調な伸びを見せているが、ここまでの道のりは順風満帆だったわけではない。

「平成5年、現在の地に本社と流通センターを竣工したんですが、その年に、自社で配送センターを持つからと、大手のスーパーさんから取引の削減を告げられました。今迄の取引に感謝して頑張ろうということを社員ともども共有したおかげで、翌月から全社員が一丸となって頑張ってくれ、対前月比で逆に106%と伸びを見せました。危機感が社をまとめてくれたのでしょう。一人ひとりの力の大きさに感動させられたときでした」

チルドに特化した佐藤食品は、チルドの温度帯で商品を運び、チルドの温度帯の倉庫で管理。家庭の食卓へ新鮮な食品を届けることをモットーとしている。

「九州全域の地産素材を使用し、地域で支持されている小規模のメーカーさんと通じ、行政とのつながりも持つのがうちの強みです。そうした人と商品が、私どもの資産です」と佐藤さんは言い切る。現在の取り扱いアイテム数は5万5000点を超え、取引メーカーは2300社にのぼっている。

地域の魅力ある商品を発掘

そんな佐藤食品が新たにインターネットを使った通信販売事業として「九州グルメアドベンチャー」を開設したのは、19年8月1日のこと。「インターネットの通信販売が盛んに行われ始めており、中でも食品に関しては今後の成長率が高いと判断し、開設に至りました」。

佐藤食品ならではのネットワークが、ここでも強みを発揮する。長年、九州の食材を幅広く取り扱っている佐藤食品は、独自のアンテナで魅力ある商品をそろえることができた。しかも、九州は、農産物をはじめとして、畜産、水産などでそれぞれの強みを持っている。しかし、中小メーカーでは、販路を確保することが難しく、地元以外では知られていないものも多い。

「せっかくいい商品があっても、機会ロスのために知られていない。『光と水と緑に育まれた商品を食卓に……!』という思いで各地域の素材や商品を九州全域へと販売することに、力を入れてきました。いってみれば、地産域消を目指しているのです。また、京都・大阪にも毎日6便のトラックを走らせていますから、大消費圏の近畿地域へも、九州の特産品を運んでいます」

しかし、ネットショップとしては後発だ。そのデメリットを解消するためにどんな工夫を凝らしているのだろうか。

「基本として、他社のショップで取り扱いのない商品を掲載するようにしています。そのため、メーカーに依頼して当社オリジナルのセット内容にしてもらったり、当社の在庫を詰め合わせて発送したりといったことをしています。しかしながら、各地の商品をより深く探していけば、その可能性はもっと広がると確信しています。もちろん安全・安心が第一で、それを担保するのは当然ですけど」

社全体から見れば、同事業はまだ中核となるまでには至っていない。しかし、九州の特産品を広く知ってもらい、各メーカーを元気づけるためにも、もっともっと売り出していきたいと佐藤さんは力を込める。「九州には、まだまだ知られていない食品がたくさんあります。商品はあっても、販路がないというメーカーが多いのが実情です。そんなメーカーの商品を一つでも多く掲載して、地域活性化の一助になればと思っています。同時に現在では、ネットとは別に広域に出荷できていないメーカーさんを大小さまざまな取引先へ紹介しています。これも地域を活性化させる助けになると信じています」。

福岡・行橋から全国へ

ネットショップを始めたことで、佐藤食品の業態に、これまでのBtoB(企業間取引)に、BtoC(企業対消費者間取引)という新しい側面が加わった。これを契機に佐藤食品では地元食品メーカーとの共同製品開発で自社のプライベートブランド(PB)商品も扱うようになった。

消費者は何を求めているのか、時代は今、どんな流れにあるのか、地元で評判の商品はどのようなものなのか……といった蓄積したさまざまなデータを生かした地域産品の製品化は、佐藤食品の戦略テーマとして位置付けられている。

「展示会では、通常、食品流通業は、単に取り扱い商品を並べて紹介して終わりというケースが多いのです。しかし、うちでは生産者に代わって営業代行もしていますし、取引先への売り場展開なども提案しています。まさに、展示会はビジネスのスタート地点となっているのです。地場の卸問屋として、よりよいものを目指すとともに、創業以来ずっと九州という地域に根ざして培ってきた独自のルートを武器に、九州産にこだわった商品をセレクトして消費者に届けられるような新しい事業も創造していきたいと考えています」

周防灘に面した人口7万人強の福岡県行橋市は、東九州の京築地域の一部。周囲を合わせても商圏人口は約15万人しかない。しかし、京築地域は米のほかに、みそやしょうゆなど魅力あふれる里山商品の宝庫でもある。この地域の商品を「地消」するだけでなく、九州一円、さらに全国で「消費」してもらう。これも佐藤食品の役目だという自負もある。

東九州から、九州全域の特産品を発信し続ける同社の試みは、まだ始まったばかりだ。

会社データ

社名:佐藤食品株式会社

住所:福岡県行橋市東大橋4-1570-1

電話:0930-23-0865

代表者:代表取締役社長 佐藤 政治

従業員:450人

※月刊石垣2015年5月号に掲載された記事です。

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