内閣府はこのほど、地域経済の動向をまとめた報告書「地域の経済2016」を公表した。新たな労働力として女性の活躍が期待されている中、地域によって女性の労働参加率に大きな差が出ていると指摘している。
第1章 地域別に見た経済の動向
○地域別の経済の動向を見ると、アベノミクスの取り組みの下、有効求人倍率が47都道府県全てで1倍を超えるなど、全体として労働需給は引き締まりつつある。消費は2016年前半には伸びが鈍化、生産は、2016年4月の熊本地震などの一時的な要因もあったが、総じておおむね横ばい。
○消費は、小売販売額の伸びが鈍化し、業態によっては前年割れが続いている。特に、3大都市圏の百貨店などは、衣料品の低迷に加え、インバウンド需要の伸びが一服。ただし、外国人旅行者の購買単価は下落しているが、人数は増勢が続いており、多くの地域で客室稼働率も高めで推移。サービス支出は底堅く推移。
○労働需給は全ての地域で引き締まりつつあるが、パートタイム労働者比率の上昇により、賃金上昇率は有効求人倍率の改善に見合った水準以下。また、アルバイト・パートの時給賃金は上昇しているが、フルタイムは伸び率が低い。人口減少局面に入り、需給がタイトでもある中、新たな労働供給の源は女性と高齢者。
○特に、女性の労働参加率は地域差が大きく、伸びる余地もある。都道府県レベルの分析では、女性の労働参加率は保育所定員を増やす、正規雇用率を引き上げる、男性側の長時間労働を是正することで高まる。高齢者の労働参加率には、家族の介護負担が影響。介護の支援体制の拡充により、家族の負担を減らし、継続的な労働参加を促すことで、マクロ的な成長促進が可能。
第2章 少子高齢化・人口減少と地域の経済
○少子高齢化や人口減少といった人口要因だけを勘案すると、ほとんどの道府県は他県からの移入超過となり、財政の都道府県間移転額は1・5倍に拡大。地方の所得に占める年金給付の割合も高まる。ローカル・アベノミクスは、東京一極集中の是正と地方創生でこうした状況を変革するもの。再び付加価値生産力を高めるためには、グローバルネットワークの利用、地元固有の資源の活用がポイント。
○特に、インバウンド需要の取り込みに向けて、リピーター、長期滞在の外国人観光客を呼び込むよう、地域資源のパッケージ化を図り、DMOによる情報と交通のネットワークを整備し、発着枠利用率の低い空港を活性化することが必要。
○人口減少は地域のサービス業全般にマイナスの影響を与える。持続的なサービス提供が可能になるよう、まちづくりの見直し、生活インフラの再配置を進めると同時に、新しいビジネスモデルが展開・普及するよう阻害要因を除くべき。
○特に、コンパクトシティー・ネットワーク化が進む中、住民生活の質を維持する取り組みを進めるべき。その際、弱体化し続けている公共交通インフラの整備は、高齢化を踏まえると重点課題。新機軸をもたらす企業経営の参画、新技術導入を促す規制整備、コミュニティーバスやデマンド交通といった新たな交通サービスの標準化を進めることが必要。
第3章 少子高齢化・人口減少と地方財政の課題
○人口要因だけを考えると、高齢化により医療・介護サービスへの需要は2030年頃まで急増し、社会保険料には大幅な引き上げ圧力がかかる見込み。一方、保育サービスは、少子化が進む2030年においても都市部は不足が続く可能性がある一方、地方では一層過剰となる見込み。
○人口規模が小さな地域ほど相対的な行政コスト負担が重い。人口構造の変化によって公的サービスの一人当たりの負担が増加することは避けられないため、行政効率の改善が課題。
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