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スポーツライター 青島健太の注目アスリート 日本の快進撃を支えた 五郎丸選手のキックの秘密

写真提供:産経新聞

ラグビー日本代表、五郎丸歩選手の例のポーズは、今や日本だけでなく世界中で真似されているらしい。日本ではあまりにも有名なので、宴会や飲み会で披露しても、もうすでにウケなくなっている。まだやっている人は、次のネタを考えた方が良いかもしれない(笑)。

第8回ラグビーW杯は、日本の存在感が際立った大会だった。初戦で強豪・南アフリカを破り世界中を驚かせた。しかし、快進撃はそこで終わらなかった。スコットランドには跳ね返されたもののサモアとアメリカを撃破し、3勝1敗という輝かしい成績を収めた。そしてその原動力になったのが、正確無比なキックを蹴り続けた五郎丸選手だった。

キックの場面を再現してみよう。

ボールをセットする前に軽く数回投げ上げて、その重みを感じる。ボールを置くと、後ろに3歩下がって左横に2歩動く。右手を振って蹴るイメージを確かめる。そして、ここからが、みんなが真似する「五郎丸ポーズ」である。膝を揃え中腰の姿勢になって両手を合わせる。人差し指と中指の先端を寄せて、祈るような例のポーズである。集中力が高まったところで蹴る五郎丸選手のボールは、見事にゴールポストの間を通って得点となる。

いつも同じルーティン(所作)で蹴ることの意味を、彼はこう解説する。「毎回グラウンドも風も角度も違う。そうした環境の中で、自分まで変わってしまったら正確に蹴ることが、より難しくなってしまう。だから自分だけは変えずに、いつも同じ動作で蹴ることが大事なんです」

五郎丸選手だけでなく、キッカーにはそれぞれのルーティンがある。

かつて日本代表でも活躍した名選手に、キックの前に必ずグラウンドの芝生をちぎって食べる人がいた。蹴る前に芝生の味を確かめると冷静になれるというのだ。余談だが、かつての国立競技場の芝生が一番おいしいと言っていた。ビッグゲームが開催される場所だから、芝生の味も格別……ということだろう。

いうまでもなく「五郎丸ポーズ」や「芝生を食べる」ことに大きな意味があるわけではない。全ては、普段通りの自分を取り戻すための儀式だ。ならば、私たちにだって、何かポーズがあってもいいのかもしれない。大切なことは、自分のポーズができるほど純粋に仕事と向き合うということだろう。

青島 健太 スポーツライター&キャスター 1958年新潟市生まれ。埼玉県立春日部高校から慶応義塾大学、東芝を経てヤクルト・スワローズに入団。プロ野球初打席で初ホームランを記録。引退後は、オーストラリアで日本語教師を務め、帰国後、あらゆるメディアでスポーツの醍醐味を伝えている。

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