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スポーツライター 青島健太の注目アスリート 五輪選手選考でも攻め続けた 福士加代子選手の走りに期待

写真提供:産経新聞

オリンピックという舞台で好成績をあげるためには、ある種の野蛮さというか、戦う相手や目指す記録に突っ込んでいく攻撃性が求められるのだと思う。これまで何度もオリンピックを取材しているが、力を温存し、安全に戦って勝てるほどオリンピックは甘くない。なぜなら、そこでの戦いは、限界に挑む究極の世界だからだ。だから、どこかで野性的に勝負を仕掛けなければならない。こうしたことを踏まえると、リオデジャネイロ・オリンピック、女子マラソンの日本代表に決まった福士加代子選手などは、最も楽しみな選手の一人だと言えるだろう。

代表選考会を兼ねた1月の「大阪国際女子マラソン」。多くのランナーが勝敗を意識して牽制し合う中、ペースメーカーの速いスピードに果敢についていったのは福士さん一人だけだった。30㎞でペースメーカーが外れても、その後も勇気を持って攻め続ける。独走で走り切ったタイムは、2時間22分17秒。派遣基準の2時間22分30秒を切る文句なしの優勝だった。福士さんは「これでリオは決まりだべぇ~」とレース後のお立ち台で叫んだ。

しかし、彼女が見せた攻撃性はこれだけではなかった。この派遣基準をクリアした優勝にもかかわらず代表の内定が出なかったことを受け、何とその一カ月後に行われる「名古屋ウイメンズマラソン」も走ると言い出したのだ。

そこでライバル候補に勝てば、選考会議という審議を経ずとも、実力で代表を勝ち取れると考えたのだろう。彼女が本当に走る気だったのかどうかは分からない。これは、陸連にプレッシャーをかける福士陣営が取った揺さぶりと見るべきだろうが、それでも本人の意向なくしてとれる策ではない。いざとなれば、たった1カ月の間隔であっても名古屋を走る覚悟をしていたのだろう。ここにも福士さんの強烈な攻撃性がよく表れている。

今夏のオリンピック。果たしてどんなレース展開になるのかは誰にも分からないが、どこかでペースが上がってそこについていく勇気が試される場面が必ずあるはずだ。福士選手にはその脚力と「肝」がある。

「爆走娘」の異名も持つ福士さんは、その勝負を買って出ることだろう。最後は勇気を持って突っ込んでいく。そんな福士さんの走りにぜひとも期待したい。

青島 健太 スポーツライター&キャスター 1958年新潟市生まれ。埼玉県立春日部高校から慶応義塾大学、東芝を経てヤクルト・スワローズに入団。プロ野球初打席で初ホームランを記録。引退後は、オーストラリアで日本語教師を務め、帰国後、あらゆるメディアでスポーツの醍醐味を伝えている。

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