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スポーツライター 青島健太の注目アスリート 城所が教えてくれた“準備”の大切さ

ヒーローインタビューで笑顔を見せる(左から)城所龍磨、和田毅、松田宣浩選手 写真提供:産経新聞

7回の裏、福岡ソフトバンクホークスの攻撃。2対1と北海道日本ハムファイターズをリードしながらも、追加点が取れず嫌な雰囲気が続いていた。1アウト2塁3塁。ゲームを決める絶好の場面で代打に送られたのは、プロ13年目の城所龍磨(きどころりょうま)選手だった。といっても、ホークスのファン以外には、なじみの薄い選手かもしれない。それもそのはず、素晴らしい守備力と肩の強さを持ちながらも、層の厚いホークス外野陣にあっては、控えに甘んじることが多いからだ。しかも去年は、オープン戦初打席で死球をもらい、左腕を骨折。夏に1軍復帰を果たしたが、今度は代走による初出場で左肩を脱臼。1軍での出場は、この1試合だけに終わった。まさに不運としか言いようのないシーズンだった。

それでも今シーズンは、ここまで代打で9打数4安打の好成績を残し、切り札的な存在となっていた。打ったボールは、2球目のカーブだった。インコース低めのボールをすくうように打った城所の打球は、右中間スタンドに飛び込む3ランホームラン。ゲームの行方を決める決定的な一撃だった。

このアーチは、なんと9年ぶり、自身2本目のホームラン。ついでにいえば、試合後のお立ち台でのインタビューも10年ぶりのことだった。

「まさか、誰も僕があそこで出てくるなんて思っていなかったと思う。緊張どころじゃなかったが、出たらやってやろうという気持ちだった。やってもうたと思った(笑)」と城所は、その喜びを語った。

しかし、代打に送り出した工藤監督は確信を持って指名していた。

「ベンチでも声が出ているし、代打あるよというと顔が初々しい。打撃の状態もいい。ひらめきみたいなもの。気持ちのこもった打席が多い」と、城所の充実ぶりをしっかり見ていたのだ。

こんな選手のことを紹介できるのは、うれしいことだ。2年前には1シーズン1軍で過ごしながらも、レギュラーではなかった。守備要員と代走に明け暮れても、気持ちを切らすことはなかった。そんな城所のために、「キドコロ待機中」というTシャツまで売り出されたほどだ。待っていればチャンスは来る。しかし、準備のない選手に結果は残せない。こんな選手がいるから、レギュラーもうかうかしていられない。そこに近年のホークスの強さがあるのだ。

青島 健太 スポーツライター&キャスター 1958年新潟市生まれ。埼玉県立春日部高校から慶応義塾大学、東芝を経てヤクルト・スワローズに入団。プロ野球初打席で初ホームランを記録。引退後は、オーストラリアで日本語教師を務め、帰国後、あらゆるメディアでスポーツの醍醐味を伝えている。

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