Q 当社は、派遣労働者を受け入れる予定の事業部で、労働者に業務の事前説明の機会を設けました。すると、事業部から身だしなみや言葉遣いが好ましくないため別の人材を派遣するよう求めてくれないか、と依頼がありました。そのまま派遣会社に要請してもいいでしょうか。
A 派遣先は、受け入れ予定の労働者に、面接や履歴書を送付させたり、若年者に限るなどの行為を行ったりしてはいけませんが、派遣労働者になる者が、自らの判断で契約前に派遣先の訪問や、履歴書を送付することなどは認められており、事前説明の機会を設けることも本人が了解している限り許されます。しかし事前説明の後で、別の人材を派遣するように求める場合は、特定行為として派遣法違反と認められる可能性が高いので止めるべきでしょう。
派遣労働者を特定する行為の禁止について
派遣労働者の選定は、派遣元が決定するものであり、派遣先は、紹介予定派遣を除き、派遣労働者を特定する行為を行ってはなりません(派遣法26条6項)。これは努力義務ですが、厚生労働省の指針では義務規定となっています(派遣先が講ずべき措置に関する指針2、3)。
特定行為の禁止は、労働者供給事業の禁止(職業安定法44条)の潜脱を防止する趣旨から定められていますが、派遣先として業務に必要な技術・技能レベルや、派遣労働者の派遣就業後の業務の円滑化を図る必要もあり、次に述べるように柔軟な考え方が示されています。
特定行為について
特定行為としては、例えば派遣先が派遣元に対し、上記Q&Aに挙げたように(派遣先が)面接した上で合格した者の派遣を要請したり、〇〇歳未満など年齢による制限を求めたりする場合や従前派遣されていた具体的な「者」を求め、履歴書の事前送付を依頼して内容を吟味し、派遣の可否(採否)を行うことを求めたりする場合などがあります。これらは特定行為であると定められており、派遣法違反と認められる可能性が高いので止めるべきでしょう。
他方で、派遣労働者において、派遣先が自分に適するか否かを判断するため、あるいは派遣就業後の業務などを確認するために、自ら派遣先の事業所を訪問することや、履歴書を送付すること、業務に関連する技術・技能のレベルや技術・技能の経験年数などを記載したスキルシートを送付することなどは認められています。
会社説明会など
実務においては、会社説明会など派遣労働者に対する説明の機会が設けられることがあり、事前に前述の技術・技能レベルなどを記載した書面などが送付されることがあります。
しかし、この場合においても、特定行為とならないような配慮が必要となります。派遣業務に関わる業務経験や知識などについて確認する趣旨の質問はできますが、同書面に基づき業務と関係しない個人的な経歴など、プロフィールに関する質問を行ったりすることは避けるべきです。
特定行為禁止違反について
特定行為と認定され、派遣法に触れると認められた場合、あるいは法に触れる可能性があると認定された場合、各労働局など労働行政庁からの指導・助言が実施され、文書注意を受けることがあります(派遣法48条1項)。
また、派遣先への報告徴求や立ち入りもあり得るため(同法50条、51条)、特定行為の禁止は、努力義務ではありますが、法令遵守の観点からも十分な留意が必要だといえます。
なお地裁レベルですが、派遣先が特定行為をしないという努力義務に違反したとしても、不法行為に該当するとはいえないと判示した判例もあります(東京地裁平成17年7月20日判決)。
しかし、派遣労働者を受け入れる際に特定行為と認められるような行為をしないよう配慮
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