Q 私の会社は、レジャー用品の製造・販売をしており、最近、海辺の街道沿いに小売店をオープンしました。店内の壁面画をデザイン会社に依頼し、海の中を魚が泳ぎ、海上の船から親子が釣り糸を垂れるデザイン画を設置しました。ところが、釣具などを販売する大手企業から、「当社の特徴的なデザイン画と似ているので、変更してほしい」と要求されました。この要求に応じる必要がありますか?
A 大手企業のデザイン画が、消費者の間に広く認識されている(周知という)場合、不正競争防止法にいう周知表示混同惹起(じゃっき)行為に該当して、差し止め、損害賠償が認められる可能性があります。周知性、類似性がある場合には、「デザイン会社に依頼したもので自分は知らなかった」との弁解は通用しません。
過去の判例では使用禁止や損害賠償も
本件では、不正競争防止法(不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を規定)の周知表示混同惹起(じゃっき)行為(法2条1項1号)が問題となります。この行為は、他人の商品・営業の表示として消費者の間に広く認識されているものと同一または類似の表示を使用し、他人の商品・営業と混同を生じさせる行為をいいます(図1)。
過去の判例は、大阪の有名なカニ料理屋の名物「動くカニ看板」と類似した「カニ看板」を使用した同業者に対し、看板の使用禁止と損害賠償を命じました。
判断の基準は?
周知性、類似性、混同の意義は図2のとおりです。周知性があるかどうかの判断は商品などの表示の独創性、販売数量、販売期間、広告宣伝費、取引形態などを総合的に考慮してなされるのが通常で、意図的かどうかは問われません。類似性の有無も、実際の取引で、取引者または消費者が両表示を類似のものと受け取るおそれがあるかどうかを基準としています。すなわち、行為者が「デザイン会社任せにしており、周知性・類似性があるとは知らなかった」と弁解しても認められません。
もし法的手続きをとられたら
最近の広告媒体は、テレビ、新聞雑誌、チラシ、インターネットなど多様化しています。大手企業の中には、自社のブランドを守るため、あらゆる広告宣伝媒体に目を光らせ、チェックしているところもあります。周知表示混同惹起行為を発見すると、使用の禁止や変更要請の通知を出し、効果がないと、調停・訴訟などの法的手段に訴えるケースもあります。
周知性、類似性の有無に関する判断は非常に難しいものです。しかし、全面的に争う場合の調停・訴訟などの費用・時間を考えると、デザイン画にこだわりがないのであれば、変更に応じる方が得策かもしれません。ただし、変更の費用は行為者負担となるのが通常ですので、ご注意ください。 (弁護士 野嶋 慎一郎)
※参考・経済産業省庁HP https://www.meti.go.jp/index.html
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