Q 私の店では今、年末年始の大々的なバーゲンを計画しています。お得感を出すための仕掛けとして、正規価格とセール価格を両方表示して比較できるようにさせるなど工夫を凝らすつもりです。この場合、何か気を付けておくべきことはありますか?
A 価格を二重表示する場合は、「比較対象価格」を明確にすることが大切になります。具体的には、「過去の販売価格を表示する場合には『最近相当価格』を表示すること」、また「『メーカー希望小売価格』や『市価』は、根拠のある金額を表示すること」という点などに注意が必要です。
表示には合理的な根拠が必要
セールの季節は、売り場も活気づき、消費者が心弾ませながら楽しく買物ができる、本当に楽しい季節ですよね。そんなセールには、消費者に魅力的な二重価格表示が並びますが、どのような点に気を付けていくべきでしょうか。
不当表示には、内容そのものについて実際のものよりも著しく優良であるとする優良誤認表示だけでなく、価格その他の取引条件を有利に表示した有利誤認表示もあります。例えば、価格の二重表示や、アフターサービスなどの取引に付随するサービスに関する表示などです。実際よりも著しく有利であったり、競合他社のものよりも著しく有利であると誤認されるケースは、不当表示となります。
たしかに、商売である以上、多少の誇張はつきものかもしれません。しかし、その表示に合理的根拠があるかどうかが重要です。
例えば、「5000円のところ3980円!」という表示は魅力的です。4000円より20円安いだけなのに、消費者は大きな割安感で、思わず手を伸ばします。ですが「5000円」は架空の価格で、もともと実売価格が3980円だった場合はどうでしょうか? せっかくのお得感が、実はしてやられただけということになります。このように、比較対象価格として示された価格が適正でない場合は、不当表示となるのです。
本当にその価格で売っていたかが重要
比較対象価格というのは耳慣れない言葉かもしれません。これは、実際の売買価格が安いことを示すための比較として表示する価格のことです。これには一定のルールがあり、販売価格と比較する場合には、それが「最近相当価格」であることが必要です。つまり、最近まで本当にその価格で売っていたという意味です。「大丈夫、1日だけ5000円で売ったから!」と言う人もいるかもしれませんが、それは不当表示となる可能性があります。
最近相当価格として認められるためには、①二重価格の表示を行う最近時において、②比較対象価格に用いようとする価格で販売されていた期間が、③当該商品の販売期間の過半数を占めている、という3つの原則を満たす必要があります。そして、二重価格の表示を行う最近時とは、セール開始時点からさかのぼること8週間について検討する、とされています。8週間未満の場合にも比較対象価格として表示できる場合もありますが、8週間を一つの目安として捉えておくと良いと思います。
また、メーカー希望小売価格が出ている場合には、それとの比較も可能ですが、希望小売価格がなくなっていることもあるので、確認してから表示しましょう。二重価格は、お得感を演出できますが、消費者の合理的判断を奪わないように注意することが大切です。 (弁護士 森山 裕紀子)
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