奨励賞(7カ所)
美幌(北海道)
通過型観光から体験・コミュニティーを生かした滞留型観光客の創出
北海道美幌町の主要な観光資源である美幌峠の観光入込者数は、年間70万~80万人程度でここ数年推移している。ただ、夏季集中と通過型から脱却できておらず体験型・滞在型観光への転換、街なかへの誘客が課題となっていた。
幌商工会議所では、平成27年度に美幌ニューツーリズム開発委員会を設立。行政、物産協会など観光関連事業者、交通事業者などの関係者も加わり、着地型観光メニュー開発に向け、市場調査、地域資源の磨き上げに取り組んできた。
28年度に景観に恵まれた地域にある廃校を、「天体観測」「釣り」「登山」などの愛好家が集まる「部室」に見立てた美幌部活動プロジェクト構想の一環として「地域景観等を活用したアウトドアフィットネス事業」を開始した。地域の景観と「美容」と「健康」に着目し、ヨガプログラムやノルディックウオーキングなどの事業を実施。SUPヨガ&SUP体験プログラムは、1週間で定員の64人に達した。また「美容と健康の町」としてのブランディングにも取り組んでいる。
熊野(三重県)
世界遺産「熊野古道」を生かし、観光客数増と観光消費額増
平成16年に熊野古道(紀伊山地の霊場と参詣道)がユネスコの世界遺産として登録され、25年には高速道路ネットワークが熊野市に延伸されたことから、熊野市の観光入込客数は増加に転じている。
一方で熊野古道を訪れる観光客は、宿泊、飲食、土産物購入などを伴わない場合も多く、観光入込客数の増加が地域経済の活性化に結び付かないのが課題となっていた。
熊野商工会議所では、都市部の大手旅行会社と連携し、ツアー企画から商品提案(弁当、土産物など)、契約までを事業者に代行し、通年で誘客と観光消費の向上に取り組んでいる。28年からは、熊野独自の地域資源や伝統的な加工技術などを生かしたストーリー性のある特産物や加工品などを認定する「熊野ブランド認定事業」を開始。これまでに7品目を認定し、売り上げ向上の成果が出ている。
西条(愛媛県)
石鎚山を活用した事業~スターナイトツアー、秋・冬山における継続的イベント、チームビルディング事業~
西日本最高峰である石鎚山は全国的に知名度も高いが、石鎚山系を訪れる観光客や登山者は年間約30万人と、同じ愛媛県にある道後温泉の3分の1程度にとどまっている。観光客が伸びない要因としては、修験道の山=危険、疲れるといったイメージが強いことから、観光客には敬遠されていた。
西条商工会議所では、石鎚山中腹にあるピクニック園地に注目し、ロープウエーを利用すると市内から車で50分という手軽さや、そこから見える満天の星を観光資源として観光客をターゲットとする事業創生を行っている。スターナイトツアーは、平成25年度のモニターツアーから継続的に催行され、29年度には2000人の集客を目指している。さらに四国でも雪を資源とした体験型イベントや企業・団体の組織力強化を図るためのチームビルディング事業として、石鎚山の活用も検討されており、今後の誘客が期待される。
浜松(静岡県)
歴史的資源を活用した「出世」「開運」を感じる観光都市づくり
静岡県浜松市は、輸送用機器(オートバイ・自動車)、楽器、遠州織物などを中心としたものづくりのまちとして発展してきた。しかし、リーマンショックを契機に、約3兆3000億円あった製造品出荷額などが約1兆円強急減したまま、平成24年まで推移している。こうした状況から抜け出すために、第3次産業の発展が課題となっていた。
浜松商工会議所では、27年の「徳川家康公顕彰400周年」、29年放映のNHK大河ドラマ「おんな城主直虎」といった節目の年を契機に歴史的資源を活用した観光まちづくりの取り組みを行っている。25年から開始した「家康・直虎 新商品開発プロジェクト」には、71社が参加。「闘将・家康公カレー」や「龍潭寺もなか」など145品の新商品が誕生した。これらは地域内外のマスコミに多く取り上げられ、販路開拓支援のためのイベント・商談会にも出展した。また、27年には、市民向け歴史資源啓発事業として「光と音で楽しむ家康公出世歴史探訪 やらまいか七夕ウォーキング」や28年には、「家康公・井伊家ゆかりの地を巡るツアー」といった旅行商品開発にも積極的に取り組んでいる。
柳井(山口県)
瀬戸内海の多島美を生かしたスポーツ観光振興事業
山口県柳井地域は、柳井市、周防大島町、上関町、田布施町、平生町で構成されている。小さい島々が点在する瀬戸内海に面し、雨が少なく冬でも温暖で美しい自然景観を楽しめる豊かな自然と歴史に囲まれた地域である。しかし、公共交通機関によるアクセスに時間を要し、観光客数は年々減少傾向にあることが課題であった。
柳井商工会議所では、健康志向の高まりから近年注目を集めるサイクルツーリズムに着目。近隣市町や商工会、観光協会などに呼び掛けを行い、平成26年から「サザンセト・ロングライドinやまぐち」を共同で開催した。約152キロメートルのロングコースと約70キロメートルのショートコースがあり、タイムは競わず、自分のペースで自然や景観を楽しみながら走るコースの途中に設けられた休憩所では、地元産食材を使った料理が堪能できるよう工夫されている。エントリー数は、26年の724人から年々増加。29年は1503人となり、半数以上が県外から参加している。参加者へのアンケートでは、約9割が「次回も参加したい」と回答。リピーター率の高さも特徴であり、今後の大会の発展も期待される。
登別・室蘭・伊達(北海道)
室蘭・伊達・登別魅力再発見プロジェクト
平成28年の北海道新幹線開業による国内外からの観光誘客拡大を目的に、25年に「三商工会議所北海道新幹線連携会議」を設置。以降、それぞれの地域が持つ北海道独自の歴史遺産や自然環境、地域の文化から誕生した食文化などを広域的に結び付け、「エリア」としての魅力向上と活性化を目指している。
圏域内にある地域資源の発掘は、住民によるワークショップや3市の自治体・観光協会などと連携し、地域全体を巻き込みながら3商工会議所が中心となり推進している。この取り組みにより、新たなツアー(伊達家臣ゆかりの開拓地巡り)の商品化などの効果が見え始めている。
今後は近隣市町村にも連携を拡大し、地域のブランド力のさらなる向上が期待される。
桐生・太田・館林(群馬県)、足利・佐野(栃木県)
「麺の里」両毛五市の会による両毛地区粉食文化の全国発信
群馬県南東部と栃木県南西部にまたがる地域は「両毛地区」と呼ばれており、古くから良質な小麦の産地としても知られ、粉食文化が栄えている。桐生・館林のうどん、足利のそば、太田の焼きそば、佐野のラーメンといった食文化が根付き、それぞれ独自の発展を各地域で遂げ、各々で麺の振興団体が組織された。
桐生商工会議所、太田商工会議所、館林商工会議所、足利商工会議所、佐野商工会議所は、昭和61年に県境を越えた商工会議所間の連携による広域経済圏の形成のための「両毛五市商工会議所協議会」を設立。それを母体とした「麺の里」両毛五市の会が平成16年に組織され、両毛五市を全国一の「麺どころ」とするため、5商工会議所の連携によりB級グルメイベントなどへの出店や旅行会社、鉄道各社に対する旅行商品開発の働き掛けなどが行われている。
最新号を紙面で読める!