Q 当社は、融資を受けているA信用金庫の担当者から、「会計参与の設置を検討されてはどうですか」と勧められました。「会計参与」がどのようなものか、詳しく教えてください。
A 会計参与とは、取締役と同じく株式会社の機関(役員)です。会計の専門家(税理士・公認会計士)である点において会計監査人と似ていますが、外部から会社をチェックする役割を担う会計監査人とは異なり、取締役と共同して計算書類などを作成する業務執行機関です。
導入は、原則として任意ですが、非公開会社が取締役会を設置し、監査役を設置しない場合は、監査役の代わりに会計参与を設置することが義務付けられます。
会計参与設置の目的・機関設置
会計参与設置の目的は、中小企業の計算書類などの信頼性を高め、資金調達の円滑化を実現することにあります。監査義務がなく、会計参与も設置しない中小企業の計算書類などは判断材料として信頼に足るものではなく、金融機関の融資姿勢は消極的にならざるを得ないと指摘されています。
従って、貴社のように、金融機関が融資先の株式会社に対して、「会計参与を置いたらどうですか」と勧めてくることもあり、会計参与を置けば、金利などの融資条件を優遇するというケースも考えられます。金融機関からみれば、会計参与を設置する会社であれば、計算書類などの信頼性がより高まると考えるからです。
会社法(以下「法」という)では、取締役や監査役のような機関をどう設置するかといった、機関設計の自由度がかなり増しました。この中で会計参与は、会社がどのような機関設計をしたとしても、定款の定めにより、任意に設置することができます。もっとも、会計参与の設置の必要性が高いのは、大企業ではなく中小企業で、非公開会社においては監査役の代わりに会計参与を設置することができます(法327条2項ただし書)。
会計参与の資格・選任・任期、職務権限・義務
会計参与の資格は、公認会計士もしくは監査法人または税理士もしくは税理士法人という会計の専門家に限られ(法333条1項)、監査法人または税理士法人が選任された場合、その社員の中から会計参与の職務を行うべき者を選任します(同条2項)。また、会計参与は顧問税理士などとの兼任が認められますが、株式会社またはその子会社の取締役、監査役もしくは執行役または支配人その他の使用人と兼務することはできません(同条3項1号)。
会計参与の選任・解任は株主総会で行われます(法329条1項)。任期は、取締役と同じく原則2年ですが、定款または株主総会の決議により、その任期を短縮することができ、公開会社でない株式会社は定款によって、その任期を10年まで伸長できます(法334条1項、332条)。
会計参与は、取締役と共同して会社の計算書類など及びその附属明細書、臨時計算書類、連結計算書類を作成し、かつ計算書類などの作成の経過などにつき「会計参与報告」を作成しなければなりません(法374条1項)。また、取締役会を設置する会社の会計参与は、計算書類などの承認にかかる取締役会に出席しなければなりません(法376条1項)。
会計参与が、その職務を行うに際し、取締役の不正の行為または法令・定款に違反する重大な事実を発見したときには、遅滞なく、これを株主または監査役に報告する義務があります(法375条1項)。
会計参与が任務を怠ったことにより会社に損害を与えた場合には、損害賠償責任を負うことになります(法423条1項)。
また、会計参与が計算書類などに記載し、または記録すべき事項に、虚偽の記載または記録をしたというような悪意または重大な過失があったときには、第三者に対して損害賠償責任を負うことになります(会社法429条2項2号)。 (弁護士・片山 智裕)
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