Q 2015(平成27)年の改正労働安全衛生法(安衛法)により義務化されたストレスチェックですが、当社も従業員の健康を考え実施したいと考えています。実施にあたっての留意点を教えてください。また実施にかかる費用の助成などはありますか。
A 「ストレスチェック制度」の実施にあたっては、従業員などへの周知や実施体制の整備、チェックを受けなかった従業員への不利益な取り扱いの防止などに留意しなければなりません。費用の助成については、ストレスチェックの実施だけでなく産業医の活動、職場環境の改善、メンタルヘルス対策など幅広く受けられますので、これらを活用して従業員のメンタルヘルス不調の予防に取り組んでください。
実施にあたっての留意点
①従業員などへの周知
事業者は、まず、ストレスチェックの必要性と実施方針を表明し、人事関係者や衛生推進者などを交えて実施規程や実施方法などを定めた後、従業員などに説明します。衛生委員会などが設置済みの事業場では、ストレスチェック制度の実施方法や実施状況およびその実施方法の改善などの調査・審議を行った上で、規程を定めます。
②実施体制の整備
実施計画の策定、実施者の決定、外部に委託する場合の外部機関との調整など、実施体制に関する準備は事業者の責任において整備しなければなりません。特に実施者については、医師または保健師のほか、厚生労働大臣が定める一定の研修を修了した看護師または精神保健福祉士という定めがありますので注意が必要です。
③不利益な取り扱いの防止
従業員の中には、ストレスチェックを受けない、検査結果の提供を同意しない、面接指導を受けても申し出を行わない者がでてくるかもしれません。しかし、勧奨はしても無理に行わせることはできません。また、拒否したことを理由に不利益な取り扱いが行われないよう十分留意しなければなりません。
④検査結果などに関する秘密保持
ストレスチェックの結果は個人情報に相当します。実施者から本人に結果を通知させる際は、封書や電子メールなどで直接通知させるなど、結果が本人以外に漏れないようにしなければなりません。知り得た内容を第三者に伝えたり、実施者から結果を不正入手した場合、秘密保持の義務を怠ったとして罰則適用の対象となります(安衛法104条)。
⑤外部委託の活用
小規模事業者など、検査をはじめ一連の対応を自社だけで進めるには負担が大きい場合は、ストレスチェック検査や面接指導を外部機関に委託することもできます。この場合、委託先がストレスチェックまたは面接指導を適切に実施できる体制にあること、情報管理が適切に行われる体制を整備していることなどが条件となります。
⑥その他
従業員数が50人未満でも派遣労働者を含めて50人以上になる場合は、ストレスチェックの実施対象になります。派遣元から委託を受けて派遣労働者を含めた実施など、派遣元とその扱いについて取り決め、協力して実施します。また、小規模の事業場で、必要な産業保健スタッフが確保できない場合には、産業保健総合支援センターの訪問を受けたり、地域産業保健センターなどが提供する各種の支援を受けることができます。
助成金制度の活用
小規模事業者であれば、①ストレスチェック助成金(従業員一人につき500円、産業医の活動1回につき2万1500円(3回まで))を限度に実費分を負担してもらえます。2017(平成29)年度からは、②小規模事業場産業医活動助成金、③職場環境改善計画助成金、④心の健康づくり計画助成金が追加され、産業医による職場巡視や保健指導などの活動、集団分析結果を踏まえた職場環境の改善など、計画的なメンタルヘルス対策への助成の範囲も広がりました。こうした制度を上手に利用して労働者のメンタルヘルス不調の予防に取り組まれることをお勧めします。 (中小企業診断士・竹内 敏則)
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