「SEKIモデル」を活用して規模拡大 200%UPを成し遂げる
地域の人口オーナスや地域経済の活力低下が問題視される中、YEGは創意と工夫、勇気と情熱でメンバーの増加に取り組んでいる。ナレッジマネジメントを活用し、5年間でメンバー数200%UPに成功した好事例を紹介する。
岐阜県中央部に位置する関市。人口は約9万人(平成28年4月現在)だが、ここ5年で約8000人減少した。そんな中、関YEGのメンバー数は5年間で200%UPに成功。今年度は160人のメンバーで活動する。この爆発的増加の秘密は、「SEKIモデル」にあった。
SEKIモデル」とは
24年度につくられた「SEKIモデル」の構築者は、同YEGメンバー塚田浩生氏。名前の由来は、ナレッジマネジメントで重視する「SECIモデル」だ。メンバー増加に必要なポイントを要約し、実行するシステムのことで、そのポイントとは、「危機感の共有と情報の共有」「合わなかったら1年で辞めてもいい」「日々の活動に真摯に取り組むこと」の3点。また、これに付随してメンバー増加に取り組む専門の委員会がある。新たに入会したメンバーは必ず所属し、YEGの組織や活動に慣れてもらうことに注力している。
危機感の共同化
塚田氏は、はじめにやらなくてはならないのは「メンバーを増やすという意識づくり」だと言う。
「仮に誰も入会しない場合のシミュレーションをしたら、100人のメンバーが10年後には50人になるという結果でした。これにはメンバー全員が衝撃を受けました」
危機感を持ったメンバーは、YEG公式のグループウェア「エンジェルタッチ」を活用した。
「エンジェルタッチの会議室に、誰々の息子さんが帰ってきたらしいとか、中学校の同級生が会社をやっているとか積極的に書き込みしてもらいました。それを一つのリストにして、誰でも見ることができるようにしました。新メンバー候補者情報を洗い出す表出化と、リストの共有で、結合化を図りました」
1年で辞めてもいい
「その後、実際に勧誘するときには情報提供したメンバーも同席します。口説き文句は、『合わなかったら1年で辞めてもいい』。逆に、絶対に言ってはいけないのは、『とにかく入れ、いいから入れ、YEGの良さは入ったら分かる』。だから、お試しで入会して、合わなかったら1年で辞めてもいいですよ、というお気軽感を前面に出して話をすると、ほとんどの人が『じゃあ入ります』ってなります」
次代につなげる今後の展開
関YEGは、「SEKIモデル」の導入により、毎年順調に20人以上の新規メンバーが入会をしている。今後の展開はどうするのだろうか。
「今後も継続して、魅力ある事業を実施していくことが大事です。入会理由のひとつとして経営の勉強をしたいという人も多ので、今年度から誰でも参加できる経営の基本をメンバーから学ぶ『経営セミナー』を開催しています。姉妹提携している高岡YEG(富山県)が手本です。高岡YEGの会員数は250人。関YEGも250人が目標です」
もしものハナシ
27年9月に関市は「もしものハナシ」という動画を公開したところ、再生数は23万回を記録。テレビをはじめ多くのメディアに取り上げられた。制作を担当した関市役所の三輪博樹氏はこう話す。
「関市の地場産業である刃物は、工場出荷額ベースでいうと、包丁は約50%、理美容ハサミでいうと70%近くのシェアを誇っています。しかし、シェア率に見合うだけの認知度はありません。そこで、YEGの皆さんの考え方をヒントに、インターネットによる動画配信を決めました。関市職員とYEGの皆さんとは『故郷の風会議』などを通じて交流を図っています。YEGの皆さんの事業は、型にはまらず、柔軟で、活力があり、非常に参考になります」
YEGがまちを動かす
YEGについて関商工会議所の坂井勇平副会頭は、こう語る。
「商工会議所はYEGの若いエネルギーを借りて、事業を推進している。いわばYEGが中心となってまちを動かしている。YEGの若い人たちが今の時代を改善・改革をしていく。もっともっと時代の変化の先端にいてほしい。失敗してもいい。だから何でもやってほしい。頭で考えるだけでなくまず前に出てきてほしい。今後もYEGとの信頼関係を強化し、将来はYEGから常議員や会頭を輩出し、一体となって関市の将来のためにご尽力いただきたい」
メンバーは、経営・地域貢献・交流など活動の多様性を基に、商工会議所との信頼関係、地域との信頼関係を築くことでさらに増えていくのではないだろうか。
最新号を紙面で読める!