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平成30年度中小企業・地域活性化施策に関する意見・要望(概要) 事業承継待ったなし 早急かつ円滑な支援を

参考1:人材不足で最も重視する取り組み(現状と今後)

日本商工会議所は7月20日、「平成30年度中小企業・地域活性化施策に関する意見・要望」を取りまとめ、内閣総理大臣、経済産業大臣をはじめ政府・政党など関係各方面に要望した。本要望では、中小企業最大の課題である人手不足対策および生産性向上に向けた「IT・IoT化の推進」や「人材確保支援」に加え、地域活性化を実現するための「創業」「事業承継」に対する支援、「地域中核企業の成長力強化」などが必要であるとしてその実現を強く求めている。特集では、本要望の概要を紹介する。

基本的考え方

わが国経済は、企業収益の拡大や雇用環境の改善などの持ち直しの動きを示しており、海外の政治状況などの影響を受けつつも、おおむね緩やかな回復基調が続いている。

平成29年版「中小企業白書」によると、近年、大企業が雇用を減らす一方で、中小企業の従業者数は増加しており、地域の中小企業は、雇用の受け皿として重要な役割を果たしている。

また、「グローバルニッチトップ企業100選」や「はばたく中小企業・小規模事業者300社」「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」に選定される企業のように、大企業にはない技術・サービスや知的財産、国際性などを有する企業、創意工夫にあふれた経営を行っている企業など、大企業と同等もしくはそれ以上の魅力を持つ中小企業は、全国に数多く存在している。

にもかかわらず、労働力人口減少や就職・転職希望者の都市部・大企業志向などにより、中小企業の人手不足は深刻化している。また、経営者の高齢化が進展していることから、早急かつ円滑な事業承継を進めていかなければ、引退を契機とした廃業により、雇用の受け皿の喪失、地域経済の衰退を招きかねない。

わが国の持続的な成長と地域活性化の実現のためには、企業数の99・7%、雇用の7割を担い、付加価値の5割を生み出す全国津々浦々の中小企業・小規模事業者に対し、「アベノミクスの効果を浸透」させることが不可欠であり、中小企業の課題解決に資する強力な対策を果断に講じる必要がある。

Ⅰ.中小企業の生産性向上と人材確保支援などの充実

[重点要望1]人手不足対策・生産性向上に向けた「IT・IoT化の推進」と「人材確保支援」

(主な要望先:経済産業省、総務省、厚生労働省、文部科学省)

〇人手不足の解消、事業効率化・経営の高度化に向け、IoTやロボット・RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、AIなどの導入・活用推進(導入など費用補助の創設、導入など事例の作成、フォーラムなどによる周知・啓発)(参考1)

〇複数ビジネスアプリ(クラウド会計やモバイルPOSレジなど)の導入・活用支援(補助金)、良質なIT事業者の認定制度の創設、ビジネスアプリ・コーディネータ(仮称)の創設、IT支援体制の構築・人材育成、情報セキュリティー対策の啓発強化

〇大企業にはない優れた技術・サービスや知的財産、国際性などを有する中小企業の顕彰事業などを通じた、国が主体となった中小企業の魅力発信事業の推進 ・インターンシップなどの活用促進、働く意欲や能力のある女性・高齢者などとのマッチング強化、ジョブカード制度の一層の活用促進

〇中小企業の実態に即した「働き方改革」関連制度の導入

[重点要望2]中小企業庁の中小企業政策における司令塔機能の発揮

(主な要望先:経済産業省、財務省)

〇司令塔機能を発揮し、「働き方改革」への対応など府省庁横断型の中小企業政策の実現

〇アベノミクスの効果を浸透させるための前例にとらわれない中小企業関連予算の拡充

1.中小企業・小規模事業者の新たなチャレンジに向けた支援の拡充

(主な要望先:経済産業省、金融庁)

・「ものづくりなど補助金」「サポイン事業」「小規模事業者持続化補助金」「中小企業技術革新(SBIR)制度」の継続

・新事業展開などを促す金融支援、セーフティーネット機能の拡充と金融仲介機能の一層の強化、マル経融資の拡充

2.高付加価値化・差別化のための知的財産の権利取得・活用・保護の支援

(主な要望先:内閣府、内閣官房、経済産業省)

・特許料などの減免制度の拡充、知的財産権の各種申請手続きの簡素化など

3.海外販路開拓の強化、中小企業のEPAなど活用支援、貿易・投資環境の整備・改善

(主な要望先:経済産業省、外務省、財務省)

・日EU・EPAの批准手続きの速やかな実施、広域経済連携や交渉中の二国間EPAの早期締結など

4.中小企業の取引適正化、官公需受注機会の確保

(主な要望先:経済産業省、金融庁、公正取引委員会)

・大企業の「働き方改革」の影響によるしわ寄せ防止、下請代金法、独占禁止法の運用強化・徹底

5.「世界で一番ビジネスのしやすい国」の実現に必要な事業環境整備や制度改革

(主な要望先:経済産業省、厚生労働省、環境省、内閣府、総務省、法務省、財務省、金融庁、国土交通省)

・社会保険料の事業主負担の軽減、社会保障改革の徹底と財政負担構造の見直し

・行政手続き簡素化の確実な実行(申告・納税手続きの電子化・ワンストップ化の推進など)

〇改正民法への対応(専門家派遣やセミナーなどの実施、指針・ガイドラインなどの整備)

〇中小企業の「フィンテック社会」への対応の推進(低費用負担で利用できる金融インフラ整備〈キャッシュレス決済、ネットバンキング、オープンAPI、電子記録債権、XML電文など〉)

〇電力コストの削減(安全が確認された原発の運転再開、FITに依存しない再エネ導入)・中小会計要領の官民一体での普及・推進

Ⅱ.地域活性化を実現するための地域潜在力の強化

[重点要望1]地域経済を支える企業の創出と存続に向けた創業・事業承継に対する支援の充実

(主な要望先:経済産業省、総務省、金融庁、文部科学省)

〇事業承継ネットワーク構築事業の推進

〇中小企業の経営者への早期の気付き促進や後継者への啓発事業(後継者塾など)の実施 (参考2・3・4)

・事業引継ぎ支援センター・中小企業再生支援協議会の機能強化(予算の拡充、金融機関・支援機関との連携強化)、「事業承継補助金」の継続および予算の拡充

・事業承継計画策定支援にかかる専門家費用などに対する補助の創設

〇「創業支援事業者補助金」「創業補助金」の継続・拡充、「創業スクール事業」への再予算措置

〇創業や設備投資、事業再編、事業再生などを支援する産業競争力強化法の延長

〇地域における経営者の資質向上を図る高度な教育プログラム(地域大学版MBAなど)の促進

[重点要望2]地域経済の活力の源泉となる地域中核企業の成長力強化

(主な要望先:経済産業省、総務省、内閣府、農林水産省、国土交通省)

〇地域未来投資促進法の認定事業者への支援(補助金、税制、金融、規制緩和など)の拡充

〇ローカル10000プロジェクトの支援要件の緩和(国と地方自治体の公費負担割合の緩和など)

・中堅企業に対する研究開発などの支援(中堅企業向けSBIR制度の創設など)

〇企業情報などに関するRESASの拡充、「規制のサンドボックス」制度創設の環境整備

1.地域潜在力の引き上げ強化

⑴東京2020オリンピックなどの国際的イベントを契機とした経済効果の全国的な波及

(主な要望先:内閣官房、文部科学省、経済産業省、農林水産省、国土交通省)

・東京2020オリンピックなどの事前キャンプ誘致、2025年国際博覧会(万博)の誘致など

⑵地域資源などを活用した事業の創出・育成への支援

(主な要望先:経済産業省、農林水産省)

・「地域力活用新事業∞全国展開プロジェクト」「JAPANブランド育成支援事業」の継続など

⑶農林水産業の生産性向上・高付加価値化に向けた連携の促進など

(主な要望先:内閣官房、経済産業省、農林水産省)

⑷インバウンドの誘客力強化および国内観光の促進

(主な要望先:国土交通省、法務省、経済産業省、文部科学省、外務省)

2.地域経済の基盤であるまちづくり・社会資本整備の推進

⑴民間の創意に基づくコンパクトシティー形成の推進

(主な要望先:内閣府、国土交通省、経済産業省、法務省、総務省、農林水産省、財務省)

・空き地・空き店舗などの利活用促進のための助成と制度見直し、PPP/PFIによる取り組みの促進支援など

⑵ストック効果を重視した社会資本整備の加速、地域公共交通の維持・再生

(主な要望先:国土交通省、内閣府、観光庁)

・地方創生や防災・減災に資する高規格幹線道路のミッシングリンクの早期解消や整備新幹線などの早期完成など

3.地域の中小企業・小規模事業者を支える「支援体制」の強化

(主な要望先:経済産業省、環境省)

〇各種支援機関が連携しやすく、事業者がどこに相談しても一定以上の支援が受けられるための一次対応マニュアルの整備、ローカルベンチマークの活用推進 ・事業者の身近な相談窓口(地域プラットフォームなど)での専門家相談体制の整備

〇「伴走型補助金」および「スーパーバイザー制度」「消費税軽減税率対策窓口相談など事業」の拡充

〇ビッグデータやAIを活用した経営支援サポートシステムの整備

Ⅲ.東日本大震災の本格復興と福島への支援継続、熊本地震と平成29年7月5日からの大雨に係る災害からの復旧・復興

1.東日本大震災の本格復興と福島の早期復旧・復興に向けた不断の支援・震災復興・地方創生の基盤、災害発生時のライフラインの機能を果たすインフラの着実な整備、労働力の確保、人材育成支援

(主な要望先:内閣府、復興庁、経済産業省、国土交通省、厚生労働省、農林水産省、文部科学省、財務省、環境省)

・被災企業の販路回復支援、観光振興による交流人口拡大、産業復興・なりわいの再生、農林水産品輸出を妨げる隘路(あいろ)の除去、国主導による福島の復旧・復興の加速

2.熊本地震と平成29年7月5日からの大雨に係る災害からの復旧・復興

(主な要望先:内閣府、総務省、経済産業省、国土交通省、厚生労働省、財務省)

・生活・産業インフラの早期復旧・復興、被災中小事業者に対する支援の継続および拡充、熊本城をはじめとする観光資源の早期復旧、観光振興など交流人口の拡大に向けた支援など

・ライフラインの確保

・安定化と生活基盤の再建、鉄道・道路など輸送および産業インフラの早期復旧、被災事業者の事業再開、観光産業への復興支援

(記事中の〇印は、新規要望内容を含む事項を表わす)