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第125回通常会員総会 三村会頭あいさつ

あいさつする三村会頭(右)と安倍首相(左から2人目)

本日は、日本商工会議所第125回通常会員総会を、安倍内閣総理大臣、松村経済産業副大臣、また、全国各地の商工会議所から、多数の皆さまにご出席いただき、盛大に開催することができ、誠にありがとうございます。

現在、世界にはさまざまな政治的混乱が存在し、トランプ新政権の経済政策の不透明さも加わり、変化は激しく、先行きに対する不安、不透明感が高まっています。われわれは、これらの不安、不透明な状況は一時的なものではなく、新常態になったと覚悟する必要があります。

そのような中、わが国の安倍政権の安定した基盤は、非常に貴重なものとして、国内外で存在感を増しています。世界に誇る政治的資産をぜひとも、日本の再出発に必要な諸施策の実行に振り向けていただきたいと存じます。

わが国の実体経済は、個人消費の鈍い動きや雇用のひっ迫による人件費上昇が見られるものの、全般的な景況感は、昨年の秋口を底にして、緩やかに改善しています。8日に発表された2016年10-12月期GDP2次速報値では、年率換算で実質1・2%となりました。しかしながら、設備投資が増加したことは評価できますが、消費が盛り上がらないため、内需に力強さが欠け、外的ショックによって経済が簡単に停滞あるいはマイナスになってしまう状況に変わりはありません。

アベノミクスの真の狙いである「成長する経済」の実現のためには、日本経済の成長する力、すなわち潜在成長率の引き上げが不可欠であります。

わが国の潜在成長率は基準改定などにより0・8%になりましたが、依然として低い状態であり、成長の果実を全国津々浦々にまで届けるためには、潜在成長率を引き上げるための、働き方改革、生産性の向上、設備投資増などのサプライサイド政策を実行し、強固な成長基盤を構築することが必要です。

サプライサイド政策の実行には、政府の役割は極めて大きいものがあります。と同時に、その主役はわれわれ民間であり、経営者自身がリスクテイクしながら、新たな挑戦に取り組むことが必要であります。

この後、決議する、向こう3年間を見据えた「行動計画」は、地方創生の加速と中小企業の活力強化を軸としており、商工会議所は、民間のチャレンジを後押しして、この2点を両輪とした成長経済の実現を目指していく覚悟であります。

経済の好循環生み出す

地方創生については、着実に前進している地域がある一方で、東京への人口集中の流れに歯止めがかからず、疲弊のますます進んでいる地域も多いと言わざるを得ません。人口減少により地域内の需要が縮小する中、いかに域外の需要・消費・投資を取り込みつつ、地域内で経済の好循環を生み出すかが、地方創生の鍵となります。

その第一の柱は、観光振興であります。観光は、中小企業を中心に関連業種の裾野の広さを有するとともに、地域を超えた取り組みが可能であります。同時に、旺盛なインバウンド需要を取り込むことで、地域における消費の拡大が期待できます。

各地では、魅力的な観光地域づくりを推進する組織(DMO)を設置し、商工会議所がその中核となって関係者を糾合し、地域ブランドの構築、発信に取り組んでいる事例が見受けられます。各地商工会議所におかれては、こうした観光振興への取り組みに引き続き主体的に取り組まれるよう、期待いたします。

また、地方創生への取り組みを支え、加速するのが、物流・人流を活発化する社会資本整備であります。とりわけ、整備新幹線、高規格幹線道路、クルーズ船に対応した港湾整備などは、交流人口の拡大、民間投資の誘発、雇用の創出、生産性向上などに大きく寄与します。こうしたストック効果とともに、近年、頻発・激甚化する災害への対応という観点からも、インフラ整備をしっかり進めていくことが重要と考えます。

地方創生のもう一つの柱は、商工業との連携による農林水産業の活性化です。すでに全国では農協が270カ所、また多くの林業、漁業関係者が商工会議所に加入していますが、農林水産業の現場の課題と地域のものづくり企業が持つ技術・ノウハウや、商業・サービス業の事業者が有する消費者ニーズ情報、販売ルートを結び付け、生産性向上と高付加価値化を実現することが重要であります。

そのためには、商工業者と農林水産業者の事業のマッチングの仕組みを構築することが求められます。また、成功事例やさまざまな取り組み手法などを広く横展開していくことが必要であります。日本商工会議所では、今期、「まちづくり・農林水産資源活用専門委員会」を新たに設置し、こうした課題について検討してまいります。

東日本大震災以降も、熊本・大分、鳥取など地震が相次いでおりますが、震災復興と福島再生への継続的な支援も、われわれが継続的に取り組まなければならない重要な課題です。多くの事業者は、風評被害や販路喪失に加え、原材料高騰や借入金返済など新たな問題にも直面しています。民間が活力を取り戻し、自立的な産業再生を果たすことが可能となるよう、きめ細かい対策・支援をしていかなければなりません。福島県においては、国が前面に立って、除染・汚染水処理、賠償などを着実に進めることが求められます。

日本商工会議所では、今後も被災事業者の事業再開や販路の回復・開拓を強力に支援してまいります。各地商工会議所におかれましても、引き続きのご協力をよろしくお願いいたします。

さらには、オリンピック・パラリンピックも、地域経済の成長を実現する有力な手段として捉えるべきであります。政府や組織委員会が応援のプログラム事例を提示し、より多くの主体が、さまざまな形で機運盛り上げに参加可能となるよう、早急に体制を整備する必要があります。全国各地でそうした仕組みをうまく活用し、地域経済の活性化につなげていくことを期待しています。

多様な人材の活躍促進

次に、中小企業の活力強化について申しあげます。成長の主役は民間と申し述べましたが、その民間、とりわけ中小企業の最大の課題は、人手不足への対応であります。労働力減少による経済規模の縮小を防ぐには、多様な人材の活躍推進につなげ、生産性を引き上げる「働き方改革」が不可欠です。

「働き方改革」は、少子化対策や健康経営なども含み、日本の雇用慣行の優れたものを残し、あるものは改善するという幅広い改革として扱うべきです。「働き方改革」によって新たなイノベーションが生まれ、日本の成長率を引き上げるというポジティブな面が強化されることを期待しています。そのためには、現場の実態を踏まえた丁寧な議論と合意形成が不可欠と考えます。

この点に関し、私が参画している政府の働き方改革会議では、「同一労働同一賃金」に関するガイドライン案が示されましたが、グレーゾーンが広すぎることから、現場が混乱することのないよう、内容の明確化が不可欠であります。また、「長時間労働の是正」については、時間外労働の上限規制の導入には異論ありませんが、業種・職種の特性などを踏まえた柔軟な制度にすべきであります。

もとより、長時間労働を生み出している商慣習の見直しや取引条件の適正化に向けた取り組みの加速、時間ではなく成果で評価する労働法制の成立、さらには、働きたい意思を尊重した社会保障制度改革などに取り組む必要があることは言うまでもありません。これらは短期的に成果を上げるより、じっくりと腰を据えて取り組むべき課題であると考えます。

他方、高齢者や女性の労働参加が進んでも、人手不足は構造的な問題であり、短期間での解決は困難であります。その克服には生産性向上が不可欠であり、IT・IoTやロボットなどを積極的に取り入れていくことが有用です。

IoTというと、大掛かりな設備などを想像しますが、政府においては、中小企業の身の丈にあったIoTの発掘・普及を始めています。また、民間では、安価なIoTツールなども開発されています。こうした取り組みにより、中小・小規模企業においても、IT・IoTを比較的容易に活用できる環境が整いつつありますので、経営者の気付きの促進を含め、今後、各地域での取り組みの拡大を促進してまいります。

日本商工会議所では、新たに設置した「IoT活用専門委員会」において、生産現場やサービス分野におけるIT・IoT活用方策を検討してまいります。その一環として、明後日から、ドイツで開催されるIoT・ロボットの見本市「CeBIT(セビット)2017」に視察団を派遣いたします。併せて、中小・小規模企業にとって身近な相談者である経営指導員のIT支援スキルの向上にも取り組んでまいります。

また、人手不足と同時に、後継者問題が深刻な課題となっています。今後数年の間に、「大事業承継時代」ともいえる、困難な事業承継に直面する中小企業の大幅な増加が予想されます。承継をスムーズに実行できる税制改正が必要であり、また、後継者難の中で、優れた技術やノウハウを有する企業をどう存続させるかが大きな課題です。都道府県などと連携しつつ、事業承継診断の推進をはじめ円滑な事業承継支援に取り組むことも、商工会議所が果たすべき重要な役割であります。

さらには、創業・第二創業支援や、成長するアジア諸国をはじめとする外需を取り込むための中小企業の輸出・投資の促進にも取り組んでいかなければなりません。

一歩先んじた政策提言

以上、民間主導による成長の実現に向けた商工会議所の役割を申し述べてきましたが、成長を後押しするためには、政策提言活動の一層の充実・強化が求められます。

今期も、日本商工会議所の委員会・専門委員会に各地商工会議所の役員・議員の皆さまに多数ご参加いただいています。すでに活発な議論が開始されておりますが、委員会などでの検討を通じ、企業活動の活性化を促す税制、安価で安定的なエネルギー供給、円滑な事業承継の実現、持続可能な社会保障制度の確立、知的財産の活用など、一歩先んじた政策提言とその実現を図り、地域や企業の成長を後押ししてまいります。

また、規制改革や行政手続きの簡素化については、その効果が全国に及び、わが国全体の生産性向上に大きく寄与するものであります。日本商工会議所では、引き続き会員企業の声を取りまとめ、各種の規制・制度改革の実現を強力に働き掛けてまいります。

政府においては、こうした民間の力が最大限に引き出されるよう、ビジネス環境の一層の整備に取り組んでいただきたいと思います。特に、米国の内向き志向・保護主義ともいえる動きに対し、あらゆる機会を通じて、自由貿易の価値を各国に粘り強く訴え続けることが必要であります。

また、安定政権ゆえの責務として、例えば、高齢者に偏った社会保障給付を見直し、恒久財源を少子化対策に大きく振り向けるなど、たとえ痛みを伴う政策でも、国民・各界に丁寧に説明し、コンセンサスを得て改革を断行していただきたいと思います。

以上、所信の一端を申し述べました。

昨年11月の改選に伴い、新たな役員・議員を迎えられた商工会議所も多いと思います。商工会議所は、地方創生と中小企業の活力強化を担う中核的な組織として、「成長する経済」の実現に自ら主体的に取り組み、明るい未来を切り開いていかなければなりません。

そのために、日本商工会議所は、現場主義、双方向主義の徹底による各地商工会議所との連携の一層の緊密化、多様な主体とのネットワークの構築、商工会議所の情報発信力の強化を通じ、商工会議所全体の機能の最大化を図ってまいります。

間もなくスタートする平成29年度においても、私は、先頭に立って皆さまと共に力を合わせ、頑張ってまいります。多大なるご支援、ご協力をお願いして、私のあいさつとします。(3月16日)

松村祥史経済産業副大臣あいさつ要旨

未来への投資加速

経済に目を向けると、現在、中小・小規模事業者の倒産は26年ぶりの低水準になるなど、日本経済全体としては、緩やかな回復基調が続いております。こうした中、成長と分配の好循環を確固たるものにするためにも、アベノミクスによる未来への投資を加速化してまいります。

その主役こそ「地方」です。全国津々浦々の魅力を最大限に伸ばすために、今国会に「地域未来投資促進法案」を提出いたしました。将来、成長が期待されるIoT、ロボットといった第4次産業革命関連分野や観光、農林水産品、先端ものづくりなどの分野で、地域の特性を生かして高い付加価値を創出し、地域経済を牽引(けんいん)する取り組みを強力に支援するものです。予算・税制・金融支援・規制改革などのあらゆる政策ツールを総動員し、地域における未来投資を促進してまいります。

また、そもそも中小企業・小規模事業者の生産性を向上させる、すなわち、筋肉質な身体づくりをすることが、わが国の生命線と思っております。今後、わが国も先進国の例に漏れず、生産年齢人口は減少していきます。そうした中で中小企業が体質改善に成功するように、「中小企業等経営強化法」によって、IoT導入の取り組みなどを後押ししています。また、計画認定を受けた企業におかれましては補助事業について、優先的に採択いたします。また、固定資産税の軽減措置などの支援メニューも活用できます。

下請等中小企業の取引条件改善にも全力で取り組んでまいります。昨年末には、下請け代金の支払いに関する通達を50年ぶりに見直し、現金での支払いを要請しました。産業界には年度内に「自主行動計画」を策定していただく予定です。さらに、中小企業の賃上げのための環境整備をお願いしています。下請け取引のさらなる改善など、十分な環境整備を推し進めます。

同様に、「働き方改革」にも全力を注いでまいります。深刻な人手不足に直面している中小企業において、生産性向上は喫緊の課題です。「長時間労働の是正」も、「同一労働同一賃金」も、生産性向上とセットでなければなりません。生産性向上の鍵は「人材育成」です。個人個人のニーズに合った形で、「働く」ことと「学ぶ」ことが一体として可能となる、柔軟な仕組みを実現していくことが必要です。

海外に目を向ければ、英国のEU離脱や米国の新政権発足など、世界経済は不透明感を増しております。また、国内においては、少子高齢化の波が押し寄せ、新たな社会システムの創造が求められつつあります。こうした転換期において、日本の経済の中心を担う中小企業・小規模事業者に対する期待は、一層高まりつつあります。われわれとしても、皆さまのお力を拝借しながら、アベノミクスのさらなる飛躍に向け、あらゆる政策を総動員して貢献してまいりたいと思います。(3月16日)