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特集平成28年版通商白書(概要) 持続的成長に輸出不可欠 サービス貿易拡大が鍵

経済産業省はこのほど、平成28年版通商白書を閣議に報告した。白書では、わが国の金融や通信などのサービス輸出が他の主要国に比して低い点を指摘。サービス産業の一層の競争力向上を訴えている。また、訪日客の増加にもかかわらず旅行サービス受取額の水準が低いことも指摘しており、今後は長期滞在客の呼び込みが課題としている。特集では、白書の概要を紹介する。

第1部 世界経済の現状と課題

▼中国における設備投資主導の経済成長

○中国などの投資拡大は先進国が減速する中、世界経済危機後の世界経済をけん引したが、設備投資主導の経済成長の結果もあり、過剰債務が発生。また過剰生産能力も顕著になりつつある。

▼過剰生産能力と世界における貿易制限的措置の増加

○生産設備容量と生産実績の乖離(かいり)は鉄鋼・化学部門・液晶などで顕著であり、生産者物価・輸出価格は下落。

○世界経済の減速もあり、これらの部門では国際的に減少傾向にあった貿易制限的措置が反転増加しつつある。

▼資源価格の下落と資源国の経済減速

○資源国経済は、新興国における資源需要拡大に伴い成長が加速したが、世界的な景気減速やシェール革命などによる供給増加により資源価格が急落し、景気が減速。(図1)

▼新興国における構造改革の動き

○中国政府は投資主導型経済から消費主導型経済への構造改革や製造業の高度化を進めているほか、サウジアラビアなどの資源国も構造改革の取り組みを始めている。

▼新興国間の経済関係の拡大

○生産面では中国の存在感が上昇。各国の最終需要に対する最大の付加価値輸出国は、日米独中心であったものが、中国へ比重が移り変わりつつある。

▼世界的な総需要と潜在成長率の低下

○先進国では、世界経済危機後、総需要が潜在供給量よりも低い、GDPギャップがマイナスの状態にとどまり、経済成長は鈍化。

○潜在成長率も、投資不足や少子高齢化などにより低下傾向。

▼対外経済関係の拡大に向けて

○OECD主要国の多くが、輸出の拡大を通じて経済成長を図っているのに対し、わが国は輸出の対GDP比(輸出比率)の水準・伸びともに低い。(図2・3)

▼世界的に拡大するサービス貿易

○財貿易の拡大が世界的に鈍化するなか、サービス貿易は堅調に拡大。世界の市場規模は、旅行サービスが1・2兆ドル、コンサルティングなどの業務サービスが1・1兆ドル。(図4・5)

▼情報通信技術の発展と新たなサービス

○「通信・コンピュータ・情報サービス」は、情報通信技術の発展を背景に、全体の成長率も高く、先進国・新興国問わず新たなサービスが誕生しつつある。

▼デジタル革命に向けた通商政策上の課題

○IT企業の自動運転・金融などへの参入、ビッグデータ解析による製品関連サービスなど、産業構造に変化の兆しがある一方、自由な情報の流通など、新たな通商政策上の課題への対処が必要。

第2部 世界の新たなフロンティアに挑戦する際のわが国の課題

▼デジタル革命に向けたIT人材の確保

○情報通信技術を生かした新たなサービスには優秀なIT人材の獲得が必須であるが、わが国での就業を希望する海外のIT人材は少ない。仕事満足度・給与水準の低さが背景にある可能性。

▼特定分野への集中が高まるわが国の輸出①

○2015年の財輸出は75・6兆円と2009年以降最大となるも、輸送用機器・対米の寄与が高い状態。(図6・7)

▼特定分野への集中が高まるわが国の輸出②

○国内地域別の製造業輸出は、北海道や北陸などにおいて伸び率が高いが、わが国全体への寄与ではシェアの高い東海甲信地方に依存している状態。

▼わが国のサービス輸出拡大に向けて①

○わが国のサービス輸出は、各分野ともに、主要国と比べ低い水準。「専門業務サービス」は欧米先進国やインドなどにおいて輸出比率が高いものの、わが国は低い水準にとどまっている。(図8)

▼わが国のサービス輸出拡大に向けて②

○わが国のサービス輸出は、多くの分野で主要国と比べ低い水準。わが国サービス産業の競争力向上に加え、近隣新興国における投資環境改善などが課題。

▼世界の海外旅行トレンドと訪日観光

○最近の訪日旅行の増加にもかかわらず、旅行サービス受取額の対GDP比は低い水準。タイのように各地から多くの長期滞在客を呼び込み、より多くの観光収入を獲得することが課題。(図9)

▼地域資源を生かした付加価値のある観光

○訪日回数を重ねるにつれ、観光客の期待はショッピングなどから花見・スキー・温泉・文化などにシフト。歴史的建造物でのガイドなど地域資源を生かした付加価値のある観光の充実が課題。

▼地域からの輸出が強いドイツの現状

○ドイツ各州における製造業は、わが国と比較して輸出比率が高く、より海外市場の獲得を志向。全ての州で輸出が増加しており、極端に輸出が減少した地域もない。

▼わが国における輸出を行う事業所の拡大

○わが国においても、輸出を行う事業所の比率は、近年ほぼ全ての主要業種および地方において上昇しており、中堅・中小企業を含め、輸出の裾野が拡大しつつあることが分かる。(図10)

▼輸出ポテンシャルが高い非輸出企業

○加えて中堅・中小企業を中心に、いまだ輸出ポテンシャルが高い非輸出企業は数多く、地域輸出の裾野をさらに拡大する余地は大きい。新輸出大国コンソーシアムの活用などが課題。

▼中小・零細企業の海外販路開拓

○商社やオンラインプラットフォームの活用、デザイナーとの連携などは、中小・零細企業の海外販路開拓に有効であるが、自社に適したパートナーが見つからない事業者も多い。(図11)

▼自治体による販路開拓支援

○輸出拡大を続けている自治体やドイツでは、販路確保に加え、研究開発協力などの国際展開に向けた支援が行われている。

▼新興国ニューフロンティアへの挑戦

○生産年齢人口の減少に直面するアジア新興国からインド・アフリカなどへ成長の軸が移る可能性が大きい。

○都市化などに際し、建設・維持補修ともにインフラ需要が拡大。

○「質の高いインフラ」の展開を通じた経済・社会の発展への一層の貢献、わが国企業の一層の海外展開の支援が課題。

第3部 政策編

▼TPP協定による新たなルール形成

○2016年2月、TPPに署名。世界のGDPの4割、日本の輸出の3割を占める市場で、関税撤廃のみならず、幅広い分野で新しいルールを構築。

○関税撤廃のみならず、原産地規則における「累積ルール」の導入、投資・サービスの自由化、模倣品対策の強化、電子商取引など新しい分野でのルール整備など、幅広い分野で中堅・中小企業にとってメリットがある内容を盛り込み。

▼経済連携協定の推進とWTOの活用

○日EU・EPA、RCEP、日中韓FTAなど、包括的かつ高いレベルの経済連携協定の締結に向けたスピード感のある取り組みが重要。

○WTOにおいて、電子商取引をはじめとする新しい課題に取り組む必要がある。また、ITA拡大交渉妥結の成功をバネに、「環境物品交渉」や「新たなサービス貿易交渉」などの早期妥結も図っていくことが必要。

▼投資関連協定の締結促進など投資環境整備

○本年5月11日、「投資関連協定の締結促進等投資環境整備に向けたアクションプラン」を策定。

○アクションプランにおいては、①2020年までに、100の国・地域を対象とする投資関連協定の署名・発効を目指すこと、②投資関連協定に、サービスや電子商取引などの分野を含めることも検討することなどが盛り込まれた。